山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

menu

元山岳部部長の登山講座

夏山装備(日帰り編)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

北海道の山の2000m級は本州の山の3000m級と同じ気象条件といわれています。

北海道の山で、ある程度手軽に日帰り登山ができる山は基本的に1000m~1500m級が多く、2000m級でも途中までロープウエイがある表大雪、旭岳(2291m)など気軽に行けていまう山もあれば、トムラウシ山(2141m)の長大コースなど、様々な山があります。

必要な装備

基本的にどんな山でも、どんなに天気が良くても、ひと通りの装備を持っていくのが基本です。

遭難事故には、標高が低い、登山客が多い、標高が高くても短時間で登れてしまうなどの理由から、軽装やほとんど丸腰で山に入り、帰って来れなくなるケースが後を絶ちません。

特に、標高が高いのに日帰り出来てしまう山ほど危険です。

気持ちに油断が生じれば、

「重たいし、こんなの持って行く必要はない」

「買ったけど一度も使ったことないから持って行かない」

とか、そもそも必要な装備とは何なのかを理解していない登山者もたくさんいます。

冒頭でも言ったとおり、北海道では2000m級の山でもそこは本州の3000m級と変わりません。

天気が悪ければ真夏でも気温はひと桁になり、吐く息が白くなります。

運悪く、雨や強風が吹けば体感温度はマイナスになります。

そんな時にハイキング程度の軽装だったらどうなるかは言わなくてもわかると思います。

まず、考え方として日帰りであっても、アクシデントがあった場合、最低でも山中で1泊程度はビバーク(緊急露営)できるような準備が必要です。

転んで足をくじいた、携帯が圏外、自分以外に登山者がいない、日没までに下山できない。

こういったことは、誰にでも起こり得ることです。

そうなってしまったら、ビバークして、翌日ゆっくり下山するか、携帯圏内の場所まで登り110番するか、アマチュア無線を持っていれば誰かが応答してくれるかも知れません。

危機管理とは最悪の事態を想定することです。

これは登山にまったく当てはまる言葉です。

それから、必要なものは必要な個数だけ必ず持って行く、多すぎるとザックが重たくなり体力を消耗しますし、忘れ物をするとそれが致命傷となります。

装備は多すぎても少なすぎてもいけないというのが、とても難しいこところなのです。

 

個人装備と共同装備

2名以上で登山をする場合、つまりパーティーを構成する場合には装備は専ら個人が使用する「個人装備」とパーティー全員で共用する「共同装備」に分ける必要があります。

例えば、雨具は全員が持って行かなければいけないので、「個人装備」になりますが、救急用品はパーティーに1セットあれば良いので、全員が持つ必要はなく「共同装備」になります。

何を持って行くか決定したあとは、共同装備の振り分けをします。

例えば全員体力も技術も変わらないならザックの重さが全員均等になるように共同装備を振り分けたりします。

パーティーの中に体力の弱い人や初心者がいれば負担を軽減するために共同装備を分担させなかったりすることもあります。

誰に何をどのくらい分担させるかはメンバーの力量などを見てリーダーが総合的に判断します。

単独行の場合は当然、個人装備と共同装備の区分けはありません。

また日帰り登山の場合は、山中での宿泊を伴う登山に比べ、個人装備と共同装備の区分けはそれほど発生しません。

日帰り登山は荷物自体が少ないので共同装備として分担できるものも全員がダブって持って行く場合もあると思います。

地形図なんかもリーダー1人が持っていれば良いので共同装備になりますが、練習のために全員が地形図を持って行くこともあるでしょう。

では日帰り登山で考えられるすべての装備の具体例を上げていきます。

(場合によっては不必要なものもあります)

 

個人装備

水筒1.5~3リットル(気温とコースの長さによる)

・昼食(お握りなど炭水化物系とソーセージなどタンパク系、好みによって果物やキュウリもいい、お弁当はかさばるし、悪天強風下では食べづらいので不向き)

・行動食(飴などの糖分、塩飴、飲むゼリー、カロリーメイト系、ソーセージ系、その他甘い系のお菓子など)

・非常食(カロリーメイト系、ソーセージ、飲むゼリーなど)

・雨具上下(上着だけの100円カッパは宜しくない)

・ヤッケ(ウインドブレーカーなど防風性のウエア、ゴアテックスの雨具があれば兼用できる)

・セーター(フリースなどの防寒ウエア)

・手ぬぐい(汗ふき、三角巾、止血にも)

・軍手

・携帯電話(非常通信手段、使用しない時は電源を切る)

・ヘッドランプ

・筆記用具

・登山計画書またはメモ帳

・小型ナイフ(スプーン、フォークがついたキャンプ用ナイフやスイスアーミーなど)

・ポケットティッシュ(大便に対応できる個数以上)

・ホイッスル(クマよけ、遭難信号など)

・クマよけ鈴

・靴ひも予備

・ザックの防水カバー

以下、必要に応じて

・持病薬

・登山用ストック(体力のあるなし、登山道の状態によっては適さない場合もある)

・サプリメント(アミノ系~疲労回復に効果、ミネラル系~熱中症防止)

・携帯トイレ(義務化されている山があります)

共同装備

・1/25000地形図(マップケースに入れるなど防水措置)

・コンパス

・火器(マッチまたはライター、ジップロックなどに入れ防水措置)

・予備電池(携帯充電、ヘッドランプ、GPS用など)

・でかすぎないガムテープ(登山靴が壊れた時や、その他応急用)

・ツエルト(ビバーク用簡易テント)

・救急用品(胃腸薬、痛み止め、きつけ薬(救心など)、虫よけグッズ、バンソーコ、テーピングテープ、目薬など)

・赤いビニールテープ(装備の応急修理やマーキングテープとしても使える)

・小型ビニール袋(ゴミ袋用)

以下必要に応じて、

・ハンディGPS

・修理工具(ペンチ、適宜の長さの針金、ミニドライバー)

・ラジオ

・マーキングテープ(道しるべ、ピンクや水色がある)

・クマよけスプレー

・細引き(5mmくらいの細い雑用ロープ4~5m)

・アマチュア無線ハンディ機(免許があれば)

・毒吸いポンプ(ポイズンリムーバー)

・山ナタまたは登山ナイフ

・高度計

・ミニ裁縫セット

上記は単独行ですべて持って行っても30リットル程度のサブザックで収まると思います。

重量は10kg強になります。

これは参考例ですので、複数登山ならリーダーの判断で、単独行なら自分で判断し、工夫して下さい。

私は、天候が安定していて地形を知りつくした地元の低山を登る時には装備を端折ることもあります。

しかし最低1泊は露営ができ、行動不能に陥らない程度に留めています。

持っていく装備の基本的な考え方

何回山行を繰り返しても下山後、小さな反省点は必ずあるものです。

登る山の難易度や気象状況、体調などによっても変わりますし、登山者によっては体力、技術、考え方の違いによって、もっと良いものを装備していることも考えられます。

何度も山に登り、反省と研究を繰り返しながら、段々と自分に合った形ができあがると思います。

パーティーを構成し共同装備を分担するのは効率のいい登山方法です。

当たり前ですが、共同装備を分担していますので、誰かが勝手に先に行ってしまった、最後尾の人が見当たらないなどはあり得ません。

お友達同士の登山で自称経験者が初心者には目もくれずさっさと先に行ってしまい、初心者が置いてけぼりになったなどの話をよく聞きます。

そのような集団では共同装備の分担という発想すらないでしょう。

登山初心者は持って行く装備はもちろん、パーティーの安全を確保できないような「自称経験者」には気を付けましょう。

装備は日々進歩していますし、絶対にこれだというような答えはありません。

繰り返しですが、装備は必要なものは必要な量だけ必ず持って行き、多すぎても少なすぎてもいけないという原則と、アクシデントがあった場合、最低でも山中で1泊程度はビバーク(緊急露営)できることを念頭に、自己完結の登山ができるような装備を持って行くというのが正解です。

次回は全荷(宿泊を伴うフル装備)の場合の装備について書きたいと思います。

看板(下)

平成28年8月



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



カテゴリー