12Jul

夏山用シュラフ(寝袋)の選び方
夏山シーズン到来です。
初めて泊を伴う登山を計画している人もたくさんいることでしょう。
テント泊にしても、山小屋泊にしても必要になるのが「寝袋(シュラフ)」です。
今回は夏山用シュラフの選び方について説明していきます。
(冬山用シュラフについては「冬山用シュラフの選び方」を読んでみて下さい。)
3シーズン用シュラフを選べば間違いなし
夏山用のシュラフには、対応する温度によって、夏用と3シーズン用があります。
夏しか泊を伴う登山はしないという人であれば、夏用の薄いシュラフでも良いと思います。
夏用のシュラフは重量も軽いですし、値段も手ごろです。
しかし、3シーズン用シュラフを買えば、真夏を含む、春から秋にかけての無積雪期の登山に対応できます。
3シーズン用だからといって、真夏に暑くて眠れないということはありません。
暑ければ、シュラフのファスナーを開ける、薄着になる、シュラフを掛け布団のように体に乗せる、などいくらでも温度調整ができます。
泊を伴う登山をしたいと考えるような人は、間違いなく活動の幅が広がり、夏だけではなく春や秋にもシュラフを使用する機会が出てくると思います。
それを見越して、最初から3シーズン用シュラフを用意しておいた方が、後から買い直しをしなくても済みます。
あくまでも、夏しかシュラフは使用しないという人以外は3シーズン用がおすすめです。
夏用、3シーズン用の違いとは
シュラフには夏用、3シーズン用、冬用、厳冬期用などがあります。
とは言っても、シュラフに夏用、冬用などど書いてあるわけではありません。
そこで、チェックするのが、シュラフの使用温度表示にある、「下限温度(リミット)」です。
下限温度とは、簡単に言うと、外気温がその温度のときに、なんとか眠れますよという温度で、シュラフの耐寒性能を表します。
快適に眠るためには、一般的に外気温がシュラフの下限温度より5℃程度高い状態とされています。
ですので、シュラフを選ぶ場合は、下限温度が、予想される最低気温より5℃程度低いものを選ぶのが安全です。
体格や性別、衣服の保温性などによって、寒い、暑いは人それぞれなので、絶対にそうというわけではなく、あくまでも目安にします。
宿泊する標高や地域にもよりますが、
夏山でしか使用しない人なら、下限温度がおおむね0℃程度のモデルが、
春から秋(3シーズン)にかけて使用したい人なら、下限温度がおおむねー5℃程度のモデルが妥当だと思います。
真夏用のシュラフに下限温度0℃というのはオーバースペックに聞こえるかも知れませんが、3000m級や北海道の2000m級の幕営地では真夏でも気温が5℃程度になる場合が普通にありますので、寒い時でも快適に眠るためには、真夏であっても下限温度0℃程度のシュラフが良いと思います。
3シーズン用のシュラフについては、メーカーでは、おおむね下限温度0℃~-5℃程度のシュラフを3シーズン用としているようですが、6月や9月の3000m級、北海道の2000m級の山では、外気温が0℃前後になりますので、下限温度―5℃程度のモデルが3シーズン用としては適しています。
このように、シュラフ選びは下限温度(リミット)と、出かける山の最低温度によって決定されます。
各メーカーで統一されていない使用温度表示。どうしたらいいの?
下限温度を目安にするという説明をしましたが、シュラフの各メーカーでは、メーカー独自の基準で表示しているところもあれば、ヨーロッパの統一規格(EN13537)で表示しているところもあります。
有名メーカーでいうと、モンベルとナンガはEN規格の表示がありますが、イスカはメーカー独自の基準です。
EN13537って?
これは、シュラフに関するヨーロッパの規格で、「コンフォート」(快適温度)、「リミット」(下限温度)、「エクストリーム」(極限温度)の3つの温度が表示されます。
簡単に説明すると、コンフォートは快適に睡眠できる外気温、リミットはシュラフの中で丸まって睡眠できる外気温、エクストリームはシュラフの中で丸まって6時間耐えれる外気温で、低体温症の危険があるとされています。
シュラフを選ぶ場合、まずは「リミット」(下限温度)を見るようにします。
コンフォートはリミットより5℃程度高くなっているので、コンフォートを見て選んでも良いでしょう。
エクストリームは低体温症が起こるかも知れない温度なので、参考程度に見るだけにします。
イスカの最低使用温度は概ねリミット(下限温度)に相当する
上記のように、モンベルとナンガはEN規格の表示があるので比較ができますが、イスカは「最低使用温度」というイスカ独自の基準で表示してあるので、モンベルやナンガの対抗商品と比較することができません。
そこで、寝袋の中綿の重量や性能を比較してみたのですが、イスカでいう「最低使用温度」とはEN規格の「リミット」に近いことがわかりました。
ですので、モンベルとナンガは「リミット」、イスカは「最低使用温度」を見ることで、対抗商品の比較がおおむね可能です。
(3社の詳しい比較の結果は、「冬山用シュラフの選び方ー使用温度表示のバラつきをどう読み解くか」で説明しています。興味のある方は読んでみて下さい)
夏用シュラフ、3シーズン用シュラフ。羽毛と化繊綿、どちらがおすすめ?
夏用、3シーズン用ともに、羽毛シュラフと化繊綿シュラフがあります。
化繊綿とは、ポリエステルの繊維の断面に中空を作り、保温性を高めた人工綿です。
使用温度が同じシュラフの場合、化繊綿と羽毛を比べると、羽毛シュラフの方が、数百グラム軽くなり、収納もコンパクトになりますが、値段は高くなります。
また、シュラフは30泊~50泊程度使用したら洗濯することになりますが(自宅で洗濯できます)、羽毛シュラフより化繊綿シュラフの方が洗濯しやすいと言えます。
(寝袋の洗濯方法について興味のある方は、「シュラフの洗濯方法とは」を読んでみて下さい)
予算に余裕があり、少しでもザックの重量を軽くしたい人には断然、羽毛シュラフがおすすめです。
化繊綿シュラフは多少重たくて、かさばりますが、安いというのは魅力です。
どちらがおすすめといえば、羽毛シュラフということになりますが、個人的には多少重たくなりますが、化繊綿シュラフで十分ではないかと思います。(冬山登山をする人なら、夏山用シュラフにはお金をかけず、その分冬山用シュラフは良いものを買いたいところです)
夏用シュラフと3シーズン用シュラフのラインナップ
以下に各社の夏用、3シーズン用モデル紹介します。
価格帯ですが、夏用(リミット温度が0℃前後)は化繊綿シュラフで15000円前後、羽毛シュラフで30000円台、3シーズン用(リミット温度がー5℃前後)は化繊綿シュラフで16000円~20000円程度、羽毛シュラフで40000円程度になっています。
なお、ここで紹介しているシュラフで「ナンガ オーロラライト」の値段が他社より突出している理由は、シュラフの外側の生地にゴアテックスのような、防水・透湿性生地を使用しているためです。
夏用シュラフ(化繊綿)
モンベルバロウバック♯3(化繊綿)
- リミット温度1℃
- 重量1050g
- 価格15500円程度
モンベル(mont-bell) 寝袋 バロウバッグ 3 バルサム 右ジップ [最低使用温度1度]
イスカ アルファライト 500X(化繊綿)
- 最低使用温度0℃
- 重量1000g
- 価格14000円程度
イスカ(ISUKA) アルファライ500X イエロー [最低使用温度0度] 111618
夏用シュラフ(羽毛)
モンベル シームレスダウンハガー800♯3(羽毛)
- リミット温度ー1℃
- 重量555g
- 価格33000円程度
モンベルmont-bell シームレスダウンハガー800#3(-1度〜4度)SURD赤1121401
ナンガ オーロラライト 350DX(羽毛)
- リミット温度0℃
- 重量750g
- 価格37000円程度
[NANGA(ナンガ)] オーロラライト 350 DX TQS レギュラー N13XTQ11
イスカ エア 300SL(羽毛)
- 最低使用温度2℃
- 重量570g
- 価格32000円程度
イスカ(ISUKA) 寝袋 エア 300SL グリーン[最低使用温度2度]
3シーズン用シュラフ(化繊綿)
モンベルバロウバック♯2(化繊綿)
- リミット温度ー4℃
- 重量1460g
- 価格19800円程度
モンベル(mont-bell) 寝袋 バロウバッグ 2 サンフラワー 右ジップ [最低使用温度-4度]
イスカ アルファライト700X(化繊綿)
- 最低使用温度―6℃
- 重量1300g
- 価格16000円程度
イスカ(ISUKA) アルファライト700X インディゴ [最低使用温度-6度] 111809
3シーズン用シュラフ(羽毛)
モンベル シームレスダウンハガー800♯2(羽毛)
- リミット温度―5℃
- 重量703g
- 価格41800円程度
【モンベル】シームレスダウンハガー800#2 R/ZIP サンフラワー(SUF)#1121400
ナンガ オーロラライト450DX(羽毛)
- リミット温度-5℃
- 重量865g
- 価格39700円程度
[NANGA(ナンガ)] オーロラライト 450 DX ブラック レギュラー
イスカ エア プラス450(羽毛)
- 最低使用温度ー6℃
- 重量840g
- 価格47000円程度
まとめ
夏山に使用するシュラフは、春から秋まで幅広く使える、3シーズン用(リミット温度が―5℃程度)のシュラフがおすすめです。
軽さとコンパクトさなら羽毛シュラフ、コスパなら化繊綿シュラフということになります。
予算事情と登山スタイルに合わせて選ぶと良いでしょう。
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