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シュラフ(寝袋)の洗濯方法とは?

シュラフ(寝袋)の洗濯方法とは?

シュラフを洗濯しない人は意外に多いものです。

使い込んだシュラフはにおいや汚れが付いていますし、中綿の材質にも皮脂の油分が浸透し、弾力性がなくなって保温力も低下してきます。

きれいに使用していても、30泊~50泊使用したらシュラフを洗濯しましょう。

今回はシュラフの洗濯方法について説明します。




メーカーの説明による洗濯方法は?

有名メーカーの、モンベル、イスカ、ナンガの公式HPにはシュラフの洗濯方法が掲載されています。

各社とも、洗濯方法に相違がありますので、各社の共通点を抽出して安全な洗濯方法を探ります。

以下に各社が説明している洗濯方法の要点のみ確認します。

モンベル

  • クリーニング店に出しても良い。その場合化繊綿か羽毛かを明示する。

ダウン製シュラフの場合

  • 洗剤は家庭用洗剤は使用しない、ダウン専用洗剤を使用する。
  • 汚れのひどい部分は洗濯の前にダウン専用洗剤で部分洗いをする。
  • 破れやキズがあれば、洗濯前にリペアシートなどで修理する。
  • 浴槽や大きな洗いおけにぬるま湯と洗剤を入れシュラフのファスナー を閉め、軽くたたんで空気を押し出してから洗濯水に浸し、足で優しく踏み洗いをする。
  • 洗濯水が濁ってきたら排水し、寝袋内部の水が自然に抜けるのを待つ。寝袋を軽く巻き上げて、残りの水分を押し出す。
  • きれいな水に浸し、同じ要領で水が濁らなくなるまで十分にすすぎを繰り返す。
  • 絞って脱水すると羽毛にダメージを与えるので、上から押さえるようにして水分を押し出す。ある程度水分が出たら、バスタオルに挟んで押し出し、水分を吸い取る。
  • ファスナーを開けた状態にし、低温に設定した乾燥機で乾燥させる。 内側の首周りなど、ダウンが乾きにくい場合は、表裏をひっくり返して乾燥さる。
  • 乾燥後にモンベルSRスプレー(フッ素系撥水スプレー)を塗布しても良い。
  • 乾燥機のかけ過ぎに注意し、途中で何度か乾き具合を確かめる。その時、寝袋を両手で軽くたたくと内部のダウンがほぐれ、片寄りを防ぐことができる。
  • 表面が乾いていても内側が湿っている場合があるので、一週間ほど、風通しのよい日陰で乾燥させる
    乾燥後、全体を優しくたたくようにしてダウンの片寄りをほぐす
  • 保管は、通気性のよい大きめの袋にに入れ、湿度の少ない場所で保管する。

化繊綿シュラフの場合

  • 家庭用中性洗剤を使用する。
  • 汚れのひどい部分は洗濯の前に中性洗剤で部分洗いをする。
  • 破れやキズがあれば、洗濯前にリペアシートなどで修理する。
  • 浴槽や大きな洗いおけにぬるま湯と洗剤を入れ、シュラフのファスナー を閉め、軽くたたんで空気を押し出してから洗濯水に浸し、足で優しく踏み洗いをする。
  • 洗濯水が濁ってきたら排水し、寝袋内部の水が自然に抜けるのを待つ。寝袋を軽く巻き上げて、残りの水分を押し出す。
  • きれいな水に浸し、同じ要領で水が濁らなくなるまで十分にすすぎを繰り返す。
  • 絞って脱水すると中綿にダメージを与えるので、上から押さえるようにして水分を押し出す。ある程度水分が出たら、バスタオルに挟んで押し出し、水分を吸い取る。
  • 風通しの良い日陰でゆっくりと時間をかけて完全に乾燥させる。スノコなどの風通しのよい平らなものの上に乗せて平干しするか、形を整えて吊るして干す。
  • 乾燥後、全体を優しくたたくようにして中綿の片寄りをほぐす。
  • 中の化繊綿にダメージを与える恐れがあるため、乾燥機は使用しない。
  • 乾燥後にモンベルSRスプレー(フッ素系撥水スプレー)を塗布しても良い。
  • 保管は、通気性のよい大きめの袋にに入れ、湿度の少ない場所で保管する。

イスカ

ダウン製シュラフの場合

  • 洗濯は一般的に30泊から50泊程度が洗濯の目安といわれているが、目立った汚れが無いのに、頻繁に洗濯するとダウンの劣化につながる。
  • 汚れが目立ってきたら、部分洗いをまず検討する。
  • 全体を洗う場合は、中性洗剤などを使用して家庭でも洗濯可能だが、しっかりすすいで、乾燥に十分時間をかける
  • ダウンに湿気が残っていたり、すすぎが不十分だと、湿気を持ったときに洗剤の臭いを感じることがある。
  • クリーニング業者に依頼する場合は、ダウンジャケットなどの十分な実績がある業者に相談する。石油系ドライか水洗いを指定する。

化繊綿シュラフの場合

  • 小さな汚れのは濡れたタオルなどで拭き取る。丸洗いを行う場合には、浴槽などでたっぷりの水かぬるま湯に中性洗剤を薄く溶かし、押し洗いの後に充分なすすぎ洗いを行う。
  • 絞ったり、脱水機の使用は避ける

ナンガ(説明は動画で化繊綿シュラフの説明はない)

ダウン製シュラフの場合

  • シュラフをロール巻きにして洗濯ネットに入れる。(動画ではシュラフのファスナーは締めている
  • 洗濯機に入れ中性洗剤かダウン専用洗剤を投入し、毛布洗い・(手洗い)コースを選ぶ。(動画ではドラム式洗濯機を使用し、毛布洗いを選択している)
  • 洗濯機で脱水までしない場合は、すすぎ後水気がなくなるまで手で絞る。(動画では2人がかりでシュラフをねじっている)
  • 乾燥器を使用する場合は中温以下にする。
  • 脱水後は風通しの良い場所で陰干しし、完全に乾燥させる
  • シュラフが重ならないようコの字型に吊るすと良い(動画では2本の竿にかけて干している)
  • 乾燥したら、両手で左右からたたき、羽毛をほぐす
  • 羽毛の飛び出しを取り除く(動画ではシュラフの内側にころころローラーをかけている)
  • 縫い目を中心に防水スプレーをかける(市販のもので良い)
  • 長期間保管する場合は大きめの袋に入れ、通気性の良い場所に保管する。

※各社の洗濯方法で、おおむね共通するところは青字で、明らかに異なるところは赤字にしました。



シュラフの洗濯方法

ダウン製シュラフの洗濯

メーカー各社が言っている洗濯方法を読むと異なることもありますが、方向性がわかってきます。

自分が持っているシュラフのメーカーが言っているとおりの方法で洗濯するのが一番無難な方法ですが、各社が言っていることをまとめてみます。

1 クリーニングに出すことについて

洗濯屋さんに出すことについては、モンベルとイスカは良いと言っていますが、ナンガは良いとも悪いとも言っていません。

すなわち、自分で洗う自信がない人はクリーニングに出しても良いということになると思います。

その場合は、ただ安いだけの洗濯屋に出すのではなく、イスカが言っているように実績のある信頼できる洗濯屋さんに依頼すべきでしょう。

2 洗剤について

自分で洗濯する場合に使用する洗剤ですが、モンベルはダウン専用洗剤、イスカは中性洗剤など、ナンガは中性洗剤かダウン専用洗剤と言っています。

中性洗剤であれば、おおむね良しと読み取れますが、安全を考えれば、モンベルの言うようにダウン専用洗剤を使用するのがベストでしょう。

ダウン専用洗剤には以下のものがあります。

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どの洗剤を使っても良いと思いますが、洗濯単価が安いのはモンベルで、高いのはニクワックスです。

グランジャーズの説明では、洗濯水20Lに対し、洗剤50ml使用となっています。

シュラフ1本の洗濯に70Lの洗濯水を使用するとしたら、洗剤は175ml必要になりますので、シュラフは300mlボトル1本で約1.7回洗濯できることになります。

300mlボトルのネット価格は約1800円ですので、1回分の洗濯単価は約1059円/回になります。

リバイベックスの説明ではシュラフ1本の洗濯に70Lの洗濯水を使用するとして、洗剤120ml使用とあります。

シュラフはボトル1本(296ml)で約2.47回分洗濯できることになります。

1本のネット価格は約1400円ですので、1回分の洗濯単価は約567円/回になります。

モンベルODメンテナンスダウンクリーナーの説明ではシュラフ1本の洗濯に72Lの洗濯水を使用するとして、洗剤75ml使用とあります。

シュラフはボトル1本(200ml)で約2.67回分洗濯できることになります。

1本の定価は610円ですので1回分の洗濯単価は約228円/回になります。

ニクワックスの説明では、手洗いの場合、洗濯水18Lに対し、洗剤100ml使用となっています。

洗濯水70Lに換算すると、洗剤は約388ml必要になりますので、シュラフは1Lボトル1本で約2.57回洗濯できることになります。

1Lボトルのネット価格は約2700円ですので、1回分の洗濯単価は約1050円/回になります。

ランニングコストはモンベルがかなり安くなります。(※定価で購入できた場合)

なお、ナンガUDDシリーズなどの、撥水ダウンを使用したシュラフには、ニクワックスダウンウオッシュダイレクトが撥水ダウンに対応しております。

ちなみに一般の中性洗剤を使用するなら、撥水性が損ないづらいもの(柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っていないもの)がベストです。

そうなると、「花王エマール」や「トップ スーパーナノックス」が代表選手です。

一般の中性洗剤を使用した場合のシュラフ1回分の洗濯単価は、ダウン専用洗剤よりかなり安くなります。(エマール約43円/回、スーパーナノックス約15円/回)

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※中性?弱アルカリ性?ニクワックスダウンウオッシュダイレクトの謎

ところで、ニクワックスダウンウオッシュダイレクトの成分ですが、

  • 弱アルカリ性
  • 界面活性剤(アルキルグルコシド、純石けん分(脂肪酸ナトリウム))、水軟化剤(炭酸塩)

となっています。これ、ダウン専用洗剤なのに中性じゃないんですね。しかもゴアテックス用洗剤として知られている「ニクワックステックウオッシュ」と入っている成分が同じです。界面活性剤はテックウオッシュよりダウンウオッシュの方が若干多めの比率になっています。洗剤の分量を少なめにすることで中性に近くなりますし、すすぎをよくすれば生地へのダメージはないということなのでしょうが、ユーザーとしては意外に感じます。ダウン専用洗剤としては実績のある商品なので良しとしておきます。

3 乾燥器について

モンベルでは乾燥器を使用するように言っています。

ナンガでは「乾燥器を使用する場合は・・」と言っていますので、乾燥器を使用しても、自然乾燥でもどちらでも良いととれます。

イスカは乾燥器の使用が良いとも、悪いとも言っていません。

従って、乾燥器を使用しても自然乾燥でもどちらでも良いと読み取れます。

乾燥器の設定温度ですが、モンベルでは「低温」、ナンガでは「中温以下」と言っています。

高温にしないというのがポイントですが、中温と低温どちらにするのかと言えば、安全を考えれば「低温」に設定するのが妥当でしょう。

4 洗濯機の使用について

洗濯機の使用については、モンベルとナンガで割れています。

モンベルでは手洗い、ナンガでは洗濯機で良いと言っています。

手洗いの方が当然品質をいためづらいはずですが、洗濯機の使用OKと言っているナンガは羽毛シュラフの修理が「永久保証」になっています。

実際の洗濯の話ですが、シュラフはぷかぷかと水に浮きやすいので、手で押して水をよくしみ込ませなければなりません。

一生懸命水をしみ込ませても、洗濯中にまた浮いてきますので、また手で押し込みます。

羽毛量の多いシュラフなら更に水はしみ込みにくく、浮きやすくなります。

ですので、洗濯機で洗うならドラム式じゃないときちんと洗えません。

ドラム式洗濯機を持っていない家もあると思いますし、コインランドリーのドラム式洗濯機は持ち込みの洗剤が使用できない場合がほとんどです。

モンベルの言うように、浴槽か大きな桶で手洗いする方がよく洗えますし、シュラフに優しい洗い方だと言えます。

5 洗濯方法

洗濯方法についてまとめます。

①浴槽に30L程度(5~10cm程度)ぬるま湯をはり、ダウン専用洗剤を適量入れます。

洗剤が多すぎると中綿に成分が残ったり、洗浄力が強すぎると、ダウンが持っている天然の油分が失われ、ふわふわ感がなくなってしまいます。

一般の中性洗剤を使用する場合はボトルに表示されている分量より少なくし、薄めにします。

②シュラフのファスナーやベルクロを締め、顔や肩部分のコードをゆるめて浴槽に入れ、手でシュラフのエアーを根気よく抜き、洗濯水をしみ込ませます。

シュラフに洗濯水が完全にしみ込むとシュラフが沈み出します。

洗濯水にシュラフを投入。足で押し洗い。

 

③手で押し洗いしても良いですが、疲れます。足で丁寧に押し洗いをします。

④洗濯水が濁ったらすすぎに入ります。風呂の栓を抜き、手や足で押しながら脱水します。

いいとこまで脱水したら、ぬるま湯を入れすすぎます。ぷかぷか浮きますので、また手でエアーを抜き、水をしみ込ませ、足で押しながらすすぎます。

シュラフに洗剤の成分が残らないよう、水が透明になるまで、同じ要領で何度も脱水とすすぎを繰り返します。(けっこう疲れます)

何度もすすぎ、水が透明になる。

 

⑤手や足で押して脱水できるところまで脱水します。

手足で押して脱水。

 

⑥手足で押して脱水しても、なかなか脱水しきれません。そのまま干すとぼたぼたと水がたくさんたれてきます。

始めは、風呂場など、下に水がたれても良い場所に形を整えてつるします。

しばらくすると、吊るしたシュラフの下部に水がたまってきますので、手で絞ります。

バスタオルを押し当てて水を吸わせるのも良い方法ですが、根気がいります。

浴室に吊るす。水が落ちる。

 

⑦水のしたたりがおさまったら、形を整えて物干し竿に吊るして十分に陰干しするか、低温に設定した乾燥器で乾燥させます。

乾燥器を使用した場合でも、生乾きかも知れないので、乾燥器使用後は物干し竿に吊るして十分に陰干しします。(襟口付近は乾きが遅いです)

外で陰干しするのも良い方法ですが、湿度が高い日や夜間は室内に吊るして、エアコンや除湿器の風を当てると乾きが早いです。

⑧乾燥後、シュラフを軽くたたいて、羽毛をほぐしたり偏りを直します。撥水性を高めたいときは「フッ素系防水スプレー」をかけます。(シリコン系防水スプレーは通気性を損ないます)

⑨ゆるく巻いて、ストリージバックなど、通気性の良い大きめの袋に入れ、湿度の高くない部屋で保管します。

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化繊綿シュラフの洗濯

化繊綿とは、ポリエステルなどの化学繊維の断面に空洞を作って、保温性を高めた人口綿のことです。デュポン社の「ダクロン」などが有名です。

洗剤が一般の中性洗剤を使用する点と、乾燥器を使用してはいけない点以外はダウン製シュラフの洗濯方法と同じです。

モンベルもイスカも絞ったり、脱水機を使用してはいけないと言っていますので、洗濯機は使わず、浴槽で押し洗いをします。

使用する中性洗剤は柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っているものは、撥水性を損なう恐れがあるので、エマールやスーパーナノックスなど、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っていないものを使用したほうが安全です。

具体的な洗濯方法については、前述のダウン製シュラフの洗濯方法を見て下さい。

「ダウン専用洗剤」を「一般の中性洗剤」に読み変え、乾燥器は使用せず、自然乾燥にすれば、あとはまったく一緒です。

ちなみに、ダウン製より化繊綿シュラフの方が、乾きは早いです。




プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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