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登山の「非常食」は何がいいか!?

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登山の非常食は何がいいか?

登山では、日常食(朝昼晩の食事)以外に、登山中に食べる「行動食」、登山日程が遅れた場合に食べる「予備食」、遭難などの緊急事態の時に食べる「非常食」があります。

たとえ、日帰り登山であっても「非常食」を携行するのが基本です。

今回は登山の非常食について説明します。

 

どんなものが非常食に適しているか?

非常食はアクシデント発生時に、救助が来るまでの間、あるいは自力下山するまでの間に食いつなぐため食糧です。

非常食に要求されるものは、火を使わなくても食べられる、軽くてかさばらない、保存がきく、栄養価・カロリーが高い、などの特徴です。

具体例をあげると、昔からある乾パンや缶詰類をはじめとし、カロリーメイトに代表されるバランス栄養食品、ビスケット類、ナッツ類、軍隊や船舶で使用するレーションなどがあります。

今回は、「救難食糧ER9」、「ソイジョイ」、「カロリーメイト」、「バランスパワー」、「乾パン」、「尾西アルファ米 」の6種類について注目し、軽さ、おいしさ、パッキングのしやすさ、価格などを比較してみます。



携行しやすさの「ER9」、軽さの「カロリーメイト」と「バランスパワー」、コスパの「乾パン」、食べやすさの「ソイジョイ」、おいしさの「尾西」

まず、非常食は何食必要で、1食あたりどのくらいのカロリーが適当なのかを決めなければ比較できません。

何食必要かについては、決まりはありませんが、多すぎるとザックが重くなりますし、少ないと心細くなります。

アクシデント発生から救助が到着するまで、あるいは自力下山するまでの時間を考えると、1日分(3食)~3日分(9食)程度になるのではないかと思います。

参考までに筆者の場合、日帰り登山では1日分(3食)の非常食を携行するようにしています。

1食あたりのカロリーですが、多いにこしたことはありませんが、非常事態の時に細々と食いつなぐことを考え、最低限のカロリーを決めなければなりません。

そこで、船舶の救命ボートに備えてある非常用のレーション「救難食糧」のカロリー、1食274kcalを基準にそれぞれ比較することにします。

本物の救難食糧とは

救命ボート用の救難食糧

写真のものは、法定備品として、実際に船の救命ボートに備えられていた「救難食糧」です。

救難食糧は小麦粉とナッツと脂肪で作られたレーション(=戦闘用食糧)で、カロリーメイトのようなものです。

赤い容器には9個のレーションが入っています。

レーションは1個1食で、56g、約274kcalです。

味はカロリーメイトよりおいしくないですが、1つ食べるとお腹がふくれますので、満腹感があります。

レーションは噛むとバラバラと粉が落ちます。

そんなに硬くはありませんが、厚みがあるので少々の衝撃でも砕けづらくなっています。

こんな面白いメモが入っている

 

「望みを捨てずにがんばろう!!」「漂流開始後24時間は何も食べなくても体力は維持できます」などが書いてある面白いメモが封入されています。

写真のものは法定備品として使用されていた「救難食糧」ですが、これの市販品で「救難食糧ER9」というものが売られています。

「救難食糧ER9」は法定備品の「救難食糧」とまったく同じもので、1個56g、約274Kcalです。

 

救難食糧ER9

救難食糧 イーアール9(ER9) SOLAS条約準拠

  • 1箱9個入り、504g、2465kcal
  • 価格2000円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~56g(1個)、約222円

既に説明しましたが、救命ボート用の救難食糧の市販品です。

1食あたりの重量は56gと軽く、大きさもコンパクトで、比較的割れづらいので、パッキングしやすいと言えます。

味は美味しいとは言えませんが、満腹感を得るにはこれが一番です。

価格は割高ですが、コンパクトなので、携行のしやすさではおすすめです。

難点としては、賞味期限切れ前に行動食として消費するには、あまり美味しくないということと、噛むとばらばらと粉が落ちるのでやや食べづらいということです。

カロリーメイト ブロックタイプ

大塚製薬 カロリーメイト ブロック チョコレート 4本×10個

  • 1箱4本入り、80g、400kcal
  • 価格160円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~54.8g(約3本)、約110円

バランス栄養食品の元祖、カロリーメイトです。

カロリーメイトは1食あたりの重量が54.8gと軽さでは一番です。

ザックを軽くしたければ、カロリーメイトがおすすめです。

また、スーパーでもコンビニでも、どこでも置いてあるので手に入れやすいのも特徴です。

価格も手ごろです。

難点は、味によってはあまり美味しくないことと、衝撃で割れやすいのでパッキングは工夫する必要があることです。

バランスパワー ビッグ

ハマダコンフェクト バランスパワー ビッグ 北海道バター 2袋(4本)入×8個

  • 1箱4本入り、63.2g~72.8g、320~360kcal
  • 価格130円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~バター味の場合、55.4g(約3本)、約99円

こちらもバランス栄養食品です。

味付けはバター、ココア、ブルーベリー、ブラックカカオ、ピーナッツ、抹茶などが選べますが、種類によって、重量とカロリーが若干違い、バター味が一番高カロリーです。

カロリーメイトに比べ、1食あたりの重量はやや重くなりますが、価格は安くなります。

また、全体的にカロリーメイトより食べやすい味付けになっていますので、カロリーメイトが苦手な人でも、美味しく食べられると思います。

美味しい=行動食としても適していますので、非常食として賞味期限が切れそうなものは、行動食として消費することもできます。

難点はカロリーメイトと同じく、衝撃で割れやすいのでパッキングは工夫する必要があることです。

乾パン

三立製菓 カンパン 200g×10個

  • 1袋200g、412kcal
  • 価格200円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~66.5g(約1/3袋)、約67円

【株式会社 カニヤ】 ネービー乾パン

  • 1袋5枚入り、100g、400kcal
  • 価格100円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~68.5g(約3.4枚)、約69円

旧日本軍の携行食糧として利用されていたことで知られる、お馴染の乾パンです。

乾パンには、陸軍向けのものと海軍向けのものがあり、三立のひと口サイズの乾パンが陸軍、カニヤの大きい乾パンが海軍のものです。

どちらも、カロリー、重量、価格ともにほとんど変わりませんが、戦前からカニヤ(海軍)の乾パンの方が、風味があって美味しいと言われています。

1食あたりの重量は、三立66.5g、カニヤ68.5gとほかの非常食よりやや重くなりますが、乾パンはおやつとしても美味しいですし、栄養価の高さでは定評があります。

非常食として、携行するならカニヤの乾パンの方がコンパクトにパッキングできます。

難点はやはり割れやすいということでしょう。

 

ソイジョイ

大塚製薬 ソイジョイ 2種のアップル 30g×12個

  • 1本入り、30g、127~146kcal
  • 価格110円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~アーモンド&チョコレートの場合、56.3g(約2本)、約206円

ソイジョイもバランス栄養食品ですが、カロリーメイトやバランスパワーとは一線を画します。

味はアップル、バナナ、黒糖&サンザシ、アーモンド&チョコレート、レーズン、ブルーベリー、ストロベリーなどがあります。

種類によってカロリーが違い、アーモンド&チョコレートが一番高カロリーです。

1食あたりの重量はアーモンド&チョコレートで56.3gと軽く、救難食糧とほぼ同じです。

特徴としては、おいしくて食べやすいということと、やや粘り気があり、割れないので携行しやすいところです。

粘りのある歯ごたえは、適度に満腹感を刺激します。

食べやすいので、非常食として賞味期限が切れそうなものは、行動食として消費すると便利です。

難点は価格がやや高いことですが、重量、携行のしやすさ、おいしさなど、非常食としてはバランスがとれていると言えます。

尾西アルファ米シリーズ

尾西食品 アルファ米10種類セット(各味1食×10種類)

  • 1袋、100g、355~377kcal
  • 価格300円程度
  • 1食(274kcal)あたりの重量と価格~五目ごはんの場合、72.7g(約2/3袋)、約218円

こちらは、水を注がなければ食べれませんので、非常食の定義からずれてしまいますが、お湯がなくても水さえあればできる(加熱がいらない)という点と、ご飯ですので、おいしさ、栄養、満腹感ともに優れていますので参考までに紹介します。

尾西のアルファ米シリーズは、登山中の日常食、予備食として、また災害時の非常食としても知られています。

作り方は、コップ1杯程度のお湯を注ぎ、15分で出来上がりますが、水を注いでも1時間で出来ます。

1食あたりの重量は一番カロリーの高い「五目ごはん」で72.7gとやや重く、価格も割高ですが、おいしさと満足感では文句なしに一番でしょう。

袋の口には、ジップロックがついていますので、作ったあとも何回かに分けて食べることができます。

袋はある程度丈夫ですので、パッキングはしやすいです。

遭難した場合、水と食糧の問題が発生しますが、食糧以前に水分を取らなければ生命維持に支障が出ます。

つまり、非常食を食べなければならない状況下では、食糧よりも先に水の確保を考えなければなりませんので、非常食を食べる時には水があることが前提になっているという考え方もできます。

この考え方でいくと、水を注ぐだけで食べられるアルファ米も、非常食のメニューの一部として検討してみてもよいのではないかと思います。

 

まとめ

以上、6種類の食糧についてそれぞれの特徴をまとめました。

筆者としては、軽くコンパクトで携行しやすい「救難食糧ER9」は非常食として理にかなっていると思いますし、食べやすさを含めた、トータルバランスでは「ソイジョイ」が適していると思います。

何を選ぶかについては登山者の考え方によるところが大きく、飴玉やお菓子を多めに持って行くことで対処している人もいます。

いずれにしても、登山をする限り、緊急事態に備える=自己完結できる、という考え方を持つことが大切です。

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プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



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