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ゴアテックスに使用できる洗剤は?(専用洗剤編)

ゴアテックスに使用できる洗剤は?(専用洗剤編)

ゴアテックスに代表される防水透湿ウエアを洗濯する時には、撥水性を損なうような成分の入った洗剤はなるべく使用しないようにします。

ゴアテックスなどの防水透湿ウエアの洗濯に使える洗剤には、ゴアテックスに使用できると公言している「専用洗剤」や、「市販の洗濯洗剤」でも使用できるものがあります。

一般的には前者の方が価格は高くなります。

今回は、アウトドアメーカーが勧める、ゴアテックス(防水透湿ウエア)専用洗剤や洗濯方法などについて調べていきます。

(ゴアテックスが洗える市販の洗濯洗剤について詳しくは「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(市販洗剤編)」を読んでみて下さい。)




ウエアのメーカーがすすめている洗剤って?

防水透湿ウエアのメーカーでは、洗剤や洗濯方法についてどのように説明しているのでしょうか。

ゴアテックス(米国)、ファイントラック(日本)、パタゴニア(米国)の3社を例にあげてみます。

ゴアテックス

ゴアテックスの公式サイトではこう説明しています。

洗濯手順~ぬるま湯(40°C)で、液体洗剤を少なめに入れ、洗濯機で洗ってください。すすぎは2回以上行ってください。粉末洗剤や柔軟剤、漂白剤、染みぬき剤は使用しないでください。泥汚れのひどい服とは一緒に洗わないようにしてください。以下省略

(引用元:GORE-TEX公式HP お手入れの仕方)

ポイントは液体洗剤は少なめ、ぬるま湯を使用すること、粉末洗剤、柔軟剤、漂白剤、染み抜き剤は使用しないこと、よくすすぐことです。

洗剤は少なめであれば、どのような液体洗剤でも良いと読み取れます。

また、「中性洗剤」で洗えとは一言も書いていません。

ゴアテックスの洗濯といえば、中性洗剤というイメージがあると思いますが、公式に書いていないのは何かありそうです。

ちなみに、筆者が使っているゴアテックスの冬山用のアウターのタグには「洗剤は中性洗剤を使用して下さい」と書いてあります。

このように、同じゴアテックス製品でも、ウエアによって中性洗剤を指定している場合もありますので、注意が必要です。

ファイントラック

次にファイントラックの場合です。

ファイントラックでは、エバーブレスという透湿性アウターを出していますが、公式サイトでは洗濯方法についてどのように説明しているのでしょうか?

洗濯洗剤の選び方~製品の機能を長く維持するためには、柔軟剤や漂白剤などの不要な成分をすべて取り除いたfinetrackの高機能ウエア専用ケアブランド「Carefine」の洗剤(オールウォッシュ)でのお手入れをおすすめいたします。市販の洗剤をお使いいただく場合は、中性で液体の洗濯洗剤でできるかぎり柔軟成分などの入っていないものを成分表示を参考にお選びください。比較的安価な洗濯洗剤は柔軟成分などが少ない傾向があります。なおふっくら仕上げ・柔らか仕上げ等の機能性をうたっているものは成分表示に記載がなくても柔軟成分などが入っていますのでお避けください。漂白剤、台所用合成洗剤、ウェットスーツ用洗剤など目的の異なる洗剤は機能低下の原因となりますので使用しないでください。

洗濯方法~(前段省略)洗剤や柔軟成分などが残留すると機能低下の原因となります。洗剤や柔軟成分の残留を防ぐため、すすぎを1回プラスすることをおすすめします。すすぎは40°C程度のぬるま湯が効果的です。(以下省略)

(引用元:fine track公式HP アウターシェル/パンツ お手入れ方法・取扱い説明書)

ファイントラックでは、市販の洗剤を使用する場合は、中性の液体洗剤で、柔軟成分、漂白剤はNG、そして、ぬるま湯でよくすすぐように説明しています。

なお、「中性の液体洗剤」と説明していますが、ファイトラックが推奨しているオールウオッシュは弱アルカリ性です。

パタゴニア

次はパタゴニアの場合です。

パタゴニアでもゴアテックスやH2NOという透湿素材のアウターを出していますが、メンテナンスについて公式HPではこのように説明しています。

通常の洗剤をお使いいただけます。ただし漂白剤や柔軟剤、蛍光増白剤、またこれらを含む洗剤はご使用にならないようお願いしています。せっけん洗剤をご使用になる場合は、せっけんカスが残らないよう、ぬるま湯でしっかりすすぎを行ってください。ダウン製品を洗濯する際は必要な油分を残すため、中性洗剤もしくは弱アルカリ性の洗剤をご使用ください。(以下省略)

(引用元:patagonia公式HP 製品のお手入れなど 洗剤について)

パタゴニアでは、柔軟剤、漂白剤、蛍光増白剤はNGで、ぬるま湯でよくすすぐこと、また、中性洗剤の使用については明記していません。

 

上記3社の洗剤に関する見解をまとめてみます。

本家のゴアテックスでは、液体洗剤であれば何でも良しとしていますが、分量は少なめとしています。

ファイントラックとパタゴニアでは、柔軟成分・漂白成分などの余計な成分が入っていない洗剤の使用をすすめています。

また、3社の共通事項は、ぬるま湯でよくすすぐこととしています。

中性と弱アルカリ性の使用の可否については、少々もやもやするところですが、洗剤は多すぎないことと、よくすすぐことで弱アルカリ性でもいいのではないか?ということが推測されます。

中性洗剤の使用をすすめる場合の多くの理由は、弱アルカリ性は洗浄力は高いが、中性に比べ生地を傷めやすいこと、アウターの内側などにある、縫い目の目止めしているシームテープの接着剤が劣化し、シームテープが剥がれやすくなるなどがあります。

防水透湿ウエアを洗濯する場合、中性洗剤を使用するにこしたことはないのですが、洗剤を多量に入れないことと、よくすすぐことで、アルカリ成分を残留させなければ、弱アルカリ性でも良いのではないかと思われます。

以上をまとめますと、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアを洗濯する場合、洗剤の成分が極力生地に残らないような、洗剤と洗濯方法が要求されると解釈でき、使用する洗剤は以下のような条件を満たすものがベストであると言えそうです。

  • 液体洗剤であること
  • 柔軟成分、漂白成分、蛍光成分が入っていないこと
  • 弱アルカリ性でも良いが、中性の方が好ましいこと



ゴアテックス(=防水透湿ウエア)に使用可能と公言している専用洗剤とその成分は?

次に、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアが洗えると公言している、専用洗剤の種類や成分などについて見ていきます。

(※洗濯単価はジャケット1着を洗うための平均的な水量を20Lとし、一般的な縦型洗濯機で洗濯した場合で計算しました。)

ファイントラック ケアファイン オールウオッシュ

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こちらは、ファイントラック社(日本)が販売しているアウトドア用の洗濯洗剤で、ドライレイヤーからアウターまですべての自社製品、他社製品やゴアテックスも洗濯OKと説明しています。(ただし、ダウン製品はNG)

  • 弱アルカリ性
  • 界面活性剤(36%:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、純石けん分)、水軟化剤、安定化剤、アルカリ剤、酵素
  • 内容量 420g(約420ml)
  • 価格 1375円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度、1回20L(洗剤20ml)の洗濯で21回 65円/回(詰め替え用330gは990円60円/回)

 

グランジャーズ パフォーマンスウオッシュ コンセントレート


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こちらはイギリス製で、日本の老舗アウトドアメーカーのキャラバンが輸入販売しているアウトドア用洗濯洗剤です。

キャラバンの公式HPでは「防水透湿素材の透湿機能や表地の撥水性を損なわずに洗浄します。GORE-TEX素材にも使用可能です。」と説明しています。

ウエア1着に25ml使用となっていますが、水20リットルに対して洗剤50mlでウエア2着と説明しています。

ということは、ウエア1着に水10リットルで洗濯するということになりますが、他社製品ではウエア1着に対して水は20リットル程度の場合が多いのですし、洗濯機を使用する場合、水10リットルではやや少ないように思います。

ですので、ここでは、水20リットルに洗剤50mlでウエア1着を洗濯するものとして単価を計算しました。

  • 中性
  • 界面活性剤(2%:ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
  • 内容量 300ml
  • 価格 1600円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度、1回20L(洗剤50ml)の洗濯で6回分 266円/回

 

モンベル O.D.メンテナンス マルチクリーナー

楽天  O.D.メンテナンス マルチクリーナー
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こちらは、モンベル社(日本)が販売しているアウトドア用の洗濯洗剤で、公式HPで「防水透湿性素材やはっ水加工を施したウエアやギアなどの繊維製品の洗濯に適した洗剤です。」と説明していますので、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアに使用可能と読み取れます。

中性で洗濯単価が安いのが魅力です。

説明では、ウエア1着に対して、水15L、洗剤15mlとなっていますが、ここでは、ウエア1着に対して、水20L、洗剤20mlで洗濯するものとして単価を計算します。

  • 中性
  • 界面活性剤(24% :ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム)、水軟化剤
  • 容量量 300ml
  • 価格 1320円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度、1回20L(洗剤20ml)の洗濯で15回分 88円/回

 

ニクワックス テックウオッシュ

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こちらはイギリス製で、日本の老舗アウトドアメーカーのエバニューが輸入販売しているアウトドア用洗濯洗剤です。

メーカーのHPでは「通気性と耐久性を確保しながらすぐれた撥水効果をもたらします」という微妙な表現をしていますが、リーフレットには「汚れや洗剤の残留物を除去し、撥水性を回復させ、透湿性を再生する石けんベースの洗剤です」と書いてありますので、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアに使用可能と読み取れます。

説明ではウエア1、2着に水20L前後、洗剤は150ml使用となっていますが、大手登山用品店の動画ではウエア1着に水18L、洗剤100mlを使用している例もありました。ここでは、水20リットルに洗剤150mlでウエア1着を洗濯するものとして単価を計算します。

ニクワックスは、登山用品店やスポーツ量販店でもゴアテックスに使える洗剤ということで販売されているのをよく見かけますが、他社製品より洗濯単価が高いのが弱点です。

  • 弱アルカリ性
  • 界面活性剤(7%アルキルグルコシド、5.4%純石けん分(脂肪酸ナトリウム))、水軟化剤(炭酸塩)
  • 内容量 300ml
  • 価格 1000円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度、1回20L(洗剤150ml)の洗濯で2回分 500円/回(1L用 2500円程度 375円/回、5L用 9000円程度 270円/回)

 

ストーム アパレルウォッシュ


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こちらはイギリス製で、アウトドア用品の販売業者モチヅキが輸入販売しているアウトドア用の洗濯洗剤です。

この洗剤はパタゴニアが公式に推奨しており、「あらゆるアウトドアウエアに使用できる洗剤」と、ざっくりした表現ですが、ボトルには

「撥水性の回復、透湿性の回復」などの記載がありますので、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアに使用可能と読み取れます。

この洗剤は、同じくストームから出ている撥水剤、「ストーム アパレル プルーファー」との同時使用で、洗濯と撥水処理が同時に行えるという事ですので、クリーナーとプルーファーがセット販売されている場合もあります。

洗剤の使用量は「ドラム式洗濯機の場合、洗剤75ml(縦型洗濯機は1.5倍)使用で大人用衣類が2枚」と、アバウトな表現で、1回の洗濯に水が何リットル必要なのかは不明ですが、ジャケット1枚の洗濯につき、洗剤を56ml使用するものとして計算しました。

  • 中性
  • 1-5%の非界面活性剤(脂肪酸、ジエタノールアミンを含む1-5%のココ化合物)
  • 内容量 225ml
  • 価格 880円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度(洗剤約56ml)の洗濯で4回分 220円/回

 

ギヤエイド リバイベックス プロクリーナー


アマゾン リバイベックス アウトドア プロクリーナー
楽天   リバイベックス アウトドア プロクリーナー
Yahoo  リバイベックス アウトドア プロクリーナー

こちらは、アメリカ製のアウトドア用洗濯洗剤で、裏書に「防水透湿素材、ソフトシェル、フリース等あらゆるタイプの高機能ウエアに最適」と記載がありますので、ゴアテックスなどの防水透湿ウエアに使用可能と読み取れます。

以前に「リバイベックス シンセティックファブリッククリーナー」というものが販売されていて、ボトルに「ゴアテックス、ソフトシェル、イーベントを含むすべてのレインウエア、スキーウエアが洗えます」と記載があり、成分は中性で非イオン界面活性剤とのことでしたが、現在は製造されていない様子で、「リバイベックス プロクリーナー」に変わったようです。

10年以上前に筆者もリバイベックスの洗濯洗剤(中性)をゴアの洗濯に使用していたことがあり、当時のものは汚れ落ちはあまり良くなかったと記憶していますが、そのほかに気になる点はありませんでした

現行のものは、ジャケットが20枚洗えるとされていますが、裏書には洗濯水15Lに対して洗剤15mlとなっていますので、洗濯水20Lで計算すると、ジャケットの洗濯枚数は14.8枚となります。

  • 中性
  • 界面活性剤(17% :ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール)、水軟化剤
  • 内容量 296ml
  • 価格 1500円程度
  • 洗濯単価 ウエア1着程度、1回20L(洗剤20ml)の洗濯で14.8回分 101円/回

ゴアテックス専用洗剤の成分について

純石けん分や、非イオン系界面活性剤を主成分に作られており、一般的な市販の洗濯洗剤のように、柔軟成分、漂白成分、蛍光成分などは含んでおらず、含まれている成分の種類が少なめという共通点があるようです。

中性か弱アルカリ性かについては、各社バラつきがあるようです。

 

まとめ

中性洗剤にこだわるのなら、グランジャーズ、モンベル、ストーム、リバイベックスでしょうし、洗濯単価にこだわるのなら、モンベル、ファイントラック、リバイベックスになるでしょう。

ニクワックスやグランジャーズは、スポーツ量販店などでも比較的よく見かけるので、店頭で手に入りやすいのは、この二つになると思います。

次回の「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(市販洗剤編)」では、今回調査したゴアテックス用専用洗剤の成分などを考えながら、市販の洗濯洗剤でゴアテックスの洗濯に適した市販の洗濯洗剤について調査していきます。




プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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