14Feb
ゴアテックスの手入れ~正しい洗濯方法でバッチリ撥水!
ゴアテックス製品(防水透湿ウエア)を使っているうちに、表面が撥水せず水分が生地にしみ込むようになっていませんか?
ゴアテックス製の雨具、アウターなどの防水透湿ウエアは、普通の洗濯洗剤を使用して、他の衣類同様の洗濯方法を長く続けた場合、撥水性を失い、ゴアテックス本来の性能が発揮できなくなってしまいます。
今回は、ゴアテックスに代表される、防水透湿ウエアの正しい洗濯方法と、撥水しなくなったウエアを復活させる方法について説明します。
間違った洗濯方法を続けると透湿しなくなる
ゴアテックスは雨は通さない、汗(水蒸気)は外に出る、だから内側が蒸れないというのが売りです。
ゴアテックスの生地は2層または3層になっていて、一番外側の生地(ナイロンなど)は撥水加工されていますが、防水ではありません。
通常、内側の生地の層が防水、透湿性のある特殊素材(ゴアテックスメンブレン)を使用しています。
ゴアテックスは生地表面が撥水していないと透湿性を発揮できません。
何度も着用していれば、表面が汚れてきますので、段々と撥水しなくなり、生地の表面に水がしみ込むようになります。
また、洗濯する場合、洗剤の分量が多かったり、すすぎが悪いような洗い方を長く続けると、やはり生地の表面は撥水しなくなります。
水がしみ込んでも、ウエアの内側まで浸水することはありませんが、生地表面にしみ込んだ水は通気性を遮断しますので、ゴアテックスの透湿効果が十分に発揮できなくなってしまいます。
撥水性を蘇らせる方法としては、まずは防水スプレーの使用などが考えられますが、根本的な解決方法としては、正しい洗濯方法で撥水性を阻害している成分を取り除いたり、洗濯後に漬け置きタイプなどの撥水剤を使用する方法などがあります。
防水スプレー
防水スプレーにはフッ素樹脂を主成分とする「フッ素系防水スプレー」と、シリコン樹脂を主成分とする「シリコン系防水スプレー」がありますが、シリコン系防水スプレーの多くは、生地表面を皮膜で覆って撥水しますので、ゴアテックスウエアーに使用すれば透湿性を損ねてしまいます。(モンベルO.Dはっ水スプレーなど、一部の商品にはシリコン系でも透湿性を損なわないものもあります。)
一方、フッ素系防水スプレーは、繊維の1本、1本が撥水加工されることにより、生地の通気性を保つとされています。
防水スプレーを使用するならフッ素系防水スプレー(スリーエムスコッチガードなど)を使用します。
フッ素系防水スプレーか、シリコン系防水スプレーかの見極め方は、スプレー缶の成分表示を見るとわかります。
シリコン系防水スプレーは、成分に「シリコン樹脂」の表示はありますが、「フッ素系」の文字が見当たりません。
これに対し、フッ素系防水スプレーには、成分に「フッ素系」の表示があります。
なお、「スリーエムスコッチガード」の成分には、フッ素系樹脂とシリコン樹脂の両方が入っています。
これは、撥水性を高めるために、フッ素系樹脂にシリコン樹脂を混ぜているというもので、通気性は損なわないとされています。
※近年、PFCフリー(フッ素系化合物を使用しない)を掲げるメーカーが増えつつあり、フッ素系を使用しない撥水材の開発が進んでいます。今後、フッ素系が入っていなくても、ゴアテックスに使用できる防水スプレーが増えてくるものと思われますので、購入の際は、説明をよく確認する必要があるでしょう。
アマゾン 3M 防水スプレー 345ml スコッチガード SG-P345iS
楽天 3M 防水スプレー 345ml スコッチガード SG-P345iS
Yahoo 3M 防水スプレー 345ml スコッチガード SG-P345iS
正しい洗濯方法とは
洗濯洗剤について
洗濯洗剤について、ゴアテックスの公式HPによると、市販の液体洗剤が使用可能で、分量は少なめにすること、洗濯方法については、ぬるま湯を使用し、よくすすぎをするよう説明しています。
つまり、洗剤の成分や汚れが生地に残ってしまうと、親水性を高めてしまい(撥水しなくなる)、透湿性を失うので、洗剤の成分や汚れが残らないような洗濯方法をして下さいという趣旨の事を言っています。
また、ファイントラックやパタゴニアなどの防水透湿ウエアを扱っているメーカーでは、ゴアテックス専用洗剤(洗浄以外の不要な成分が極端に少なく作られているものが多い)の使用を推奨していますが、市販の液体洗剤を使用する場合は、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤などの不要な成分が入っていないものを使用すること、ぬるま湯でよくすすぎをするよう説明しています。
これについては、市販の洗剤は、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤などの洗浄成分以外の成分が多く含まれており、このような洗剤は成分が生地に残りやすく、撥水性を失う原因になるので、これらの成分が入っていないものを使用して下さいという趣旨の事を言っています。
いずれも場合も、なるべく洗剤の成分を生地に残さないというのが共通点です。
本家のゴアテックスが、液体洗剤で分量が少なめなら何でも良いと言っていますが、極力、洗剤の成分を生地に残したくなければ、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤などの成分が入っていない洗剤の方がベターであると思います。
ゴアテックスなどの防水透湿ウエアの洗濯には、ゴアテックス専用洗剤か、市販の洗剤を使用する場合は、なるべく柔軟剤、漂白剤、蛍光剤の入っていない液体洗剤が適しています。
(ゴアテックスの洗剤について詳しくは「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(専用洗剤編)」「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(市販洗剤編)」を読んでみて下さい。)
洗濯方法
次に、ゴアテックスの正しい洗濯方法のひとつを紹介します。
この方法で洗濯をすれば、ウエアの撥水性は長持ちしますし、洗剤の成分が付着して撥水しなくなったウエアーを蘇えらせることもできます。
今回は、登山用品店やスポーツ量販店などでよく目にする、ゴア専用洗剤「ニクワックス テックウオッシュ」を使用した洗濯例を紹介します。
1 洗濯したいウエアーのファスナー、ベルクロをすべて閉じます。裾やフードなど、ゴムで絞ってあるところがあれば伸ばします。
2 衣類の洗濯表示に従い洗濯します。テックウオッシュをぬるま湯に適量投入しタライで手洗い、または洗濯機の弱水流や手洗いモード、おしゃれぎモードなどで洗濯し、洗剤の成分が残らないよう、よくすすぎます。(洗濯機の場合はすすぎの回数を増やす。洗剤が多すぎたり、すすぎが悪いと接着剤の劣化が早まり、ウエア裏側のシームテープや接着部分の剥がれの原因になりますので注意して下さい。)洗濯機を使用する場合、心配な場合は洗濯ネットに入れたほうが無難です。
3 洗濯表示に従って乾燥します。脱水はしないか、1分程度なら脱水しても大丈夫な場合が多いと思います。撥水処理を行う場合は脱水せずに次の行程に移ります。
アマゾン NIKWAX(ニクワックス) LOFTテックウォッシュ 【洗剤】
楽天 NIKWAX(ニクワックス) LOFTテックウォッシュ 【洗剤】
Yahoo NIKWAX(ニクワックス) LOFTテックウォッシュ 【洗剤】
撥水処理
テックウオッシュで洗濯しただけでも、生地に付着していた洗剤のカスが取れて生地が持つ撥水性がある程度復活します。
しかし、更に新品の時の撥水性を蘇らせるためには「ニクワックス TXダイレクトウオッシュイン」を使用し撥水処理を行います。
1 洗濯が終わったら、ぬるま湯にダイレクトウオッシュインを適量投入し、まんべんなく成分が行き渡るようにして約10分つけ置き、すすぎます。
2 乾燥は洗濯表示に従います。脱水はしないか、1分程度なら大丈夫な場合が多いと思います。
乾燥ですが、陰干ししても十分撥水効果が出ますが、洗濯表示により、乾燥器やアイロンがけが可能なウエアーなら、陰干しよりも撥水効果が高まります。手間はかかりますが、陰干しのあとにアイロンで仕上げる(やや生乾き状態でも大丈夫です)と乾燥器よりも撥水効果が高くなります。
ダイレクトウオッシュインで一度撥水処理を行えば数回洗濯しても撥水効果は落ちませんので、毎回撥水処理をしなくも大丈夫です。
アマゾン ニクワックス TX.ダイレクトWASH-IN【撥水剤】
楽天 ニクワックス TX.ダイレクトWASH-IN【撥水剤】
Yahoo ニクワックス TX.ダイレクトWASH-IN【撥水剤】
なお、冬山用のアウターなど、裏地にメッシュなどの吸水素材がついているウエアーの場合、ダイレクトウオッシュインを使用すると裏側の吸水素材まで撥水してしまい、良くありません。
このようなウエアーを撥水する場合は、ダイレクトウオッシュインで漬け置くのではなく、スプレータイプの撥水剤を使用し、洗濯後にアウターの表側だけスプレーして撥水処理をします。
スプレータイプの撥水剤には「ニクワックス TXダイレクトスプレー」があります。
アマゾン ニクワックス TXダイレクトスプレー【撥水剤】
楽天 ニクワックス TXダイレクトスプレー【撥水剤】
Yahoo ニクワックス TXダイレクトスプレー【撥水剤】
ゴアの洗濯に適した市販の洗濯洗剤とは?
ゴア専用洗剤の性能に匹敵する「無添加洗剤」
ニクワックス テックウオッシュは、ウエアーの上着1枚洗濯(水20L)するのに、150mlほど使いますので、300mlボトル(1000円程度)で2回、1Lボトル(2500円程度)で6~7回分しか洗えません。
洗濯単価は1Lボトルでも約375円/回ということになります。
これを高いと見るか、安いと見るかなんですが、ポイントはテックウオッシュが純石けんをベースにしたシンプルな成分で出来ているということです。
だったら、天然成分だけの無添加洗剤ならOKなのではないかということです。
さっそく調べてみましたが、無添加の市販液体洗剤は普通に売っています。
例えば、サラヤから出ている「arau」は1.2Lでネット価格1000円程度です。
アマゾン arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
楽天 arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
Yahoo arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
「arau」の成分は無添加で「弱アルカリ性 純せっけん分30%」と表示されています。
「テックウオッシュ」の成分は「弱アルカリ性 純せっけん5.7% アルキルグルコシド6.4% 水軟化剤(炭酸塩)」と表示されています。
「テックウオッシュ」も「arau」も弱アルカリ性の純石けんベースの洗剤であるところは同じで、「arau」の方は添加物が入っていません。
「arau」には洗濯30Lで洗剤50mlと表示があります。ウエアー1着に洗濯水20L使用したとすると、洗剤は約33ml使うので、1本で36回洗濯できます。
洗濯単価は約28円/回となり、テックウオッシュより、10倍以上お得ということになってしまいます。
筆者は、実際にarauでゴアテックスを洗濯していますが、今のところ撥水性が損なわれることもなく、何の問題も起きていません。
参考までに筆者が行っている、arauを使用した洗濯方法を紹介します。
手順は先に紹介した、テックウオッシュを使用した洗濯方法と同じです。
だたし、洗剤の量は規定量では多すぎますので、半分~3分の1程度にしています。(arauは洗浄力が強いのでこの程度でも汚れは落ちます)
1 洗濯したいウエアーのファスナー、ベルクロをすべて閉じます。裾やフードなど、ゴムで絞ってあるところがあれば伸ばします。
2 衣類の洗濯表示に従い洗濯します。arauをぬるま湯に規定量の半分~3分の1程度投入(洗濯水20Lで16ml程度)し、タライで手洗い、または洗濯機の弱水流や手洗いモード、おしゃれぎモードなどで洗濯し、洗剤の成分が残らないよう、よくすすぎます。(洗濯機の場合はすすぎの回数を増やす。洗剤が多すぎたり、すすぎが悪いと接着剤の劣化が早まり、ウエア裏側のシームテープや接着部分の剥がれの原因になりますので注意して下さい。)洗濯機を使用する場合、心配な場合は洗濯ネットに入れたほうが無難です。
3 洗濯表示に従って乾燥します。脱水はしないか、1分程度脱水します。撥水処理を行う場合は脱水せずに次の行程に移ります。
ポイントは規定量より少なめ(半分~3分の1程度)にすることなのですが、ゴアテックスウエアーの洗濯表示には「中性洗剤」と書いてあるものもあるので、洗濯水を中性に近づけるために洗剤の量は規定より少なめにするということです。
テックウオッシュやファイントラックオールウオッシュなどの洗剤も、ゴア専用洗剤と言いながら、弱アルカリ性です。
なので、中性に強くこだわることもないとは思いますが、arauは洗浄力が強いので、規定量で使用した場合、洗剤の量が多すぎて、ウエアの裏側のシームテープや接着部分の剥がれが早まる原因になりかねませんので、注意する必要があると思います。
ちなみに、ゴア専用洗剤で「中性」のものもあり、「グランジャーズ パフォーマンスウオッシュ」という専用洗剤は中性です。
(ゴア専用洗剤について詳しくは、「ゴアテックスに使用できる洗剤は(専用洗剤編)」を読んでみて下さい)
アマゾン グランジャーズ パフォーマンスウォッシュ300ML
楽天 グランジャーズ パフォーマンスウォッシュ300ML
Yahoo グランジャーズ パフォーマンスウォッシュ300ML
おしゃれ着用市販洗剤
おしゃれ着用の中性洗剤は、ゴアの洗濯に適しているというイメージがありますが、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っているものと、入っていないものがありますので、よく確認する必要があります。
参考までに、花王の「エマール」は柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っていない中性洗剤ですので、ゴアテックスの洗濯に適した洗剤のひとつです。(ゴアに適した市販洗剤について詳しくは「ゴアテックスに使用できる洗剤は(市販洗剤編)」を読んでみて下さい。)
何を使用するにしても、洗剤の量は多過ぎず、すすぎは多めに行い、洗剤の成分が残らないようにするのがポイントです。
ごく軽い汚れであれば、洗剤を使わず、きれいな水でじゃぶじゃぶ洗うのがベストでしょう。
アマゾン エマール 洗濯洗剤 リフレッシュグリーンの香り460ml
楽天 エマール 洗濯洗剤 リフレッシュグリーンの香り460ml
Yahoo エマール 洗濯洗剤 リフレッシュグリーンの香り460ml
アマゾン arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
楽天 arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
Yahoo arau.(アラウ) 洗濯用 せっけん 本体 1.2L
- ゴアテックスやメンテナンスに関連する記事
- ゴアテックスに使用できる洗剤は?(専用洗剤編)
- ゴアテックスに使用できる洗剤は?(市販洗剤編)
- 登山にゴアテックスの帽子は必要か?
- 作業用透湿レインウエア「ブリザテック」は登山に使えるのか?
- ゴアじゃない安い作業用透湿性カッパを着てみた
- カッパ(レインウエア)の耐水性・透湿性・強度とは?
- 登山用レインウエア(カッパ)の選び方~透湿性だけで選ぶと失敗する
- 登山靴の手入れ(革製登山靴)
- 登山靴の手入れ(軽登山靴、トレッキングシューズ)
- 登山靴のソール(靴底)の張り替え
- シュラフ(寝袋)の洗濯方法とは?
- ザックが臭い!ザックを洗濯して快適登山 ザックを洗濯してみる。
- ザックの裏地が劣化!ポリウレタンを剥がす