山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

menu

元山岳部部長の登山講座

ゴアテックスの手入れ~正しい洗濯方法でバッチリ撥水!

ゴアテックスの手入れ~正しい洗濯方法でバッチリ撥水!

ゴアテックス製品を使っているうちに、表面が撥水せず水分が生地にしみ込むようになっていませんか?

ゴアテックス製の雨具、アウター、帽子などの衣類は普通の洗濯洗剤で洗うと撥水性を失い、ゴアテックス本来の性能が発揮できなくなってしまいます。

今回は、ゴアテックス製ウエアーの正しい洗濯方法で撥水しなくなったウエアーを復活させる方法を説明します。



間違った防水方法と洗濯方法

ゴアテックスは雨は通さない、汗(水蒸気)は外に出る、だから内側が蒸れないというのが売りです。

ゴアテックスの生地は2層または3層になっていて、一番外側の生地(ナイロンなど)は撥水加工されていますが、防水ではありません。

通常、内側の生地の層が防水、透湿性のある特殊素材(ゴアテックスメンブレン)を使用しています。

出典:モンベルHPレインウエア

ゴアテックスは生地表面が撥水していないと透湿性を発揮できません。

何度も着用していれば、表面が汚れてきますので、段々と撥水しなくなり、生地の表面に水がしみ込むようになります。

水がしみ込んでも、ウエアの内側まで浸水することはありませんが、生地表面にしみ込んだ水は通気性を遮断しますので、ゴアテックスの透湿効果が十分に発揮できなくなってしまいます。

そこで、考えるのが防水スプレーをすることと、洗濯をして撥水性を蘇えらせることなのですがどちらも注意が必要です。

防水スプレー

防水スプレーにはフッ素樹脂を主成分とする「フッ素系防水スプレー」と、シリコン樹脂を主成分とする「シリコン系防水スプレー」がありますが、シリコン系防水スプレーは生地表面を皮膜で覆って防水しますので、ゴアテックスウエアーに使用すれば透湿性がなくなってしまいます。

防水スプレーを使用するならフッ素系防水スプレー(モンベルSRスプレー、スリーエムスコッチガードなど)を使用します。

フッ素系防水スプレーか、シリコン系防水スプレーかの見極め方は、スプレー缶の成分表示を見るとわかります。

フッ素系防水スプレーには、成分に「フッ素系樹脂」の表示があります。

なお、モンベルSRスプレーやスリーエムスコッチガードは、ゴアテックスなどの透湿性素材に使用できるとしていますが、成分を見ると、フッ素樹脂とシリコン樹脂の両方が入っています。

両者ともに、成分比率は不明ですが、フッ素樹脂を主成分にしているのだと思われます。

フッ素系防水スプレー

シリコン系防水スプレー

これに対し、シリコン系防水スプレーの成分表示には「シリコン樹脂」とだけ書いてあり、「フッ素樹脂」の文字はありません。

 

洗濯洗剤

家庭で使用している洗濯洗剤はおしゃれ着用の中性洗剤を含めてほとんどの洗剤が「合成洗剤」です。

この合成洗剤には界面活性剤、安定化剤、ph調整剤、着色剤など様々な成分が入っています。

中でも、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っているものはゴアテックスの洗濯には良くないとされています。

合成洗剤に含まれるこれらの成分が洗濯後の衣類に残ってしまうと、生地の親水性を高めてしまい、撥水性が落ちてしまうということが起こります。結果的に透湿性が損なわれることになります。

ゴアテックスウエアーの洗濯には柔軟剤、漂白剤、蛍光剤の入っている合成洗剤を使ってはいけません。

一部で、「合成界面活性剤」がゴアテックスに良くないので、「合成界面活性剤」の入っていないゴアテックス専用洗剤を使いましょうという説明をしている例もありますが、これは誤解で、ゴアテックスが洗える専用洗剤はすべて「合成界面活性剤」が入った「合成洗剤」です。

正しくいうと、ゴアテックス専用洗剤は合成界面活性剤が入っていますが、市販の合成洗剤にくらべ、含まれる成分の種類が極端に少ないということです。

ゴアテックスの洗濯には、ゴア専用洗剤か無添加洗剤、または柔軟剤・漂白剤・蛍光剤が入っていない合成洗剤などを使用します。



正しい洗濯方法とは

左からニクワックスTXダイレクトウオッシュイン、モンベルSRスプレー、サラヤarau

ゴアテックスの正しい洗濯方法として、よく知られてる方法を紹介します。

この方法で洗濯をすれば、ウエアの撥水性が長持ちしますし、洗剤の成分が付着して撥水しなくなったウエアーを蘇えらせることもできます。

洗濯方法

ゴア専用洗剤は何種類かありますが、今回は「ニクワックス テックウオッシュ」という洗剤を紹介します。

このテックウオッシュは、ゴアテックス用の洗剤としては複数の大きな登山用品店で売り込んでいるせいか、知名度はあるようです。

  • 1 洗濯したいウエアーのファスナー、ベルクロをすべて閉じます。裾やフードなど、ゴムで絞ってあるところがあれば伸ばします。
  • ファスナー、ベルクロは閉じ、ゴム類は緩める

  • 2 衣類の洗濯表示に従い洗濯します。テックウオッシュをぬるま湯に適量投入しタライで手洗い、または洗濯機の弱水流や手洗いモード、おしゃれぎモードなどで洗濯し、洗剤の成分が残らないよう、よくすすぎます。(洗濯機の場合はすすぎの回数を増やす。洗剤が多すぎたり、すすぎが悪いと接着剤の劣化が早まり、ウエア裏側のシームテープや接着部分の剥がれの原因になりますので注意して下さい。)
  • 洗濯機を使用する場合、心配な場合は洗濯ネットに入れたほうが無難です。

    手洗い

  • しっかりすすぐ

  • 3 洗濯表示に従って乾燥します。脱水はしないか、1分程度なら脱水しても大丈夫な場合が多いと思います。撥水処理を行う場合は脱水せずに次の行程に移ります。
  • 乾燥

撥水処理

テックウオッシュで洗濯しただけでも、生地に付着していた洗剤のカスが取れて生地が持つ撥水性がある程度復活します。

しかし、更に新品の時の撥水性を蘇らせるためには「ニクワックス TXダイレクトウオッシュイン」を使用し撥水処理を行います。

  • 1 洗濯が終わったら、ぬるま湯にダイレクトウオッシュインを適量投入し、まんべんなく成分が行き渡るようにして約10分つけ置き、すすぎます。
  • 撥水剤を投入、かき混ぜ、10分つけ置き、すすぎ

  • 2 乾燥は洗濯表示に従います。脱水はしないか、1分程度なら大丈夫な場合が多いと思います。
  • 乾燥

乾燥ですが、陰干ししても十分撥水効果が出ますが、洗濯表示により、乾燥器やアイロンがけが可能なウエアーなら、陰干しよりも撥水効果が高まります。手間はかかりますが、陰干しのあとにアイロンで仕上げる(やや生乾き状態でも大丈夫です)と乾燥器よりも撥水効果が高くなります。

ダイレクトウオッシュインで一度撥水処理を行えば数回洗濯しても撥水効果は落ちませんので、毎回撥水処理をしなくも大丈夫です。

なお、冬山用のアウターなど、裏地にメッシュなどの吸水素材がついているウエアーの場合、ダイレクトウオッシュインを使用すると裏側の吸水素材まで撥水してしまい、良くありません。

冬山用アウター。裏側が吸水素材になっている。

このようなウエアーを撥水する場合は、ダイレクトウオッシュインで漬け置くのではなく、スプレータイプの撥水剤を使用し、洗濯後にアウターの表側だけスプレーして撥水処理をします。

スプレータイプの撥水剤には「ニクワックス TXダイレクトスプレー」があります。

 

ほかに使える洗濯洗剤はないのか?

無添加洗剤

ニクワックス テックウオッシュは1L2000円程度で、ウエアーの上着1枚洗濯(水18L)するのに、100ccほど使います。

つまり、テックウオッシュ1Lでウエアー10回しか洗えません。洗濯単価は200円/回ということになります。

これを高いと見るか、安いと見るかなんですが、ポイントはテックウオッシュが純石けんをベースにしたシンプルな成分でできているということです。

だったら、天然成分だけの無添加洗剤ならOKなのではないかということです。

さっそく調べてみましたが、無添加の液体洗剤は普通に売っています。

例えば、サラヤから出ている「arau」は1.2Lでネット価格600円程度です。

「arau」の成分は無添加で「弱アルカリ性 純せっけん分30%」と表示されています。

「テックウオッシュ」の成分は「弱アルカリ性 純せっけん5.7% アルキルグルコシド6.4% 水軟化剤(炭酸塩)」と表示されています。

「テックウオッシュ」も「arau」も弱アルカリ性の純石けんベースの洗剤であるところは同じで、「arau」の方は添加物が入っていません。

「arau」には洗濯30Lで50ccと表示があります。ウエアー1着に洗濯水18L使用したとすると、洗剤は約30cc使うので、1本で40回洗濯できますので、洗濯単価は15円/回となり、テックウオッシュより、10倍以上お得ということになってしまいます。

筆者は、実際にarauでゴアテックスを洗濯していますが、今のところ撥水性が損なわれることもなく、なんの問題も起きていません。

参考までに筆者がやっている、arauを使用した洗濯方法を紹介します。

手順は先に紹介した、テックウオッシュを使用した洗濯方法と同じです。

だたし、洗剤の量は規定量では多すぎますので、半分程度にしています。(arauは洗浄力が強いので半分程度でも汚れは落ちます)

  • 1 洗濯したいウエアーのファスナー、ベルクロをすべて閉じます。裾やフードなど、ゴムで絞ってあるところがあれば伸ばします。
  • 2 衣類の洗濯表示に従い洗濯します。arauをぬるま湯に規定量の半分程度投入(洗濯水30Lで25cc程度)し、タライで手洗い、または洗濯機の弱水流や手洗いモード、おしゃれぎモードなどで洗濯し、洗剤の成分が残らないよう、よくすすぎます。(洗濯機の場合はすすぎの回数を増やす。洗剤が多すぎたり、すすぎが悪いと接着剤の劣化が早まり、ウエア裏側のシームテープや接着部分の剥がれの原因になりますので注意して下さい。)
  • 洗濯機を使用する場合、心配な場合は洗濯ネットに入れたほうが無難です。
  • 3 洗濯表示に従って乾燥します。脱水はしないか、1分程度脱水します。撥水処理を行う場合は脱水せずに次の行程に移ります。

ポイントは規定量より少なめ(半分程度)にすることなのですが、ゴアテックスウエアーの洗濯表示には「中性洗剤」と書いてあるものが多いので、洗濯水を中性に近づけるために洗剤の量は規定より少なめにするということです。

テックウオッシュもゴア専用洗剤と言いながら、弱アルカリ性です。

なので、中性に強くこだわることもないとは思いますが、arauは洗浄力が強いので、規定量で使用した場合、洗剤に量が多すぎて、ウエアの裏側のシームテープや接着部分の剥がれが早まる原因になりかねませんので、注意する必要があると思います。

ちなみに、ゴア専用洗剤で「中性」のものもあり、「モンベルO.D.メンテナンスベースクリーナー」という洗剤は中性です。

(ゴア専用洗剤について詳しくは、「ゴアテックスに使用できる洗剤は(専用洗剤編)」を読んでみて下さい)

おしゃれ着用洗剤

では、おしゃれ着用の中性洗剤はどうかというと、「中性」という点では生地にやさしいはずですが、柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っていないかよく確認する必要があります。

参考までに、花王の「エマール」は柔軟剤、漂白剤、蛍光剤が入っていない中性洗剤ですので、ゴアテックスの洗濯に使用している人もいるようです。(ゴアに使用できる市販洗剤について詳しくは「ゴアテックスに使用できる洗剤は(市販洗剤編)」を読んでみて下さい)

何を使用するにしても、洗剤の量は多過ぎず、すすぎは多めに行い、洗剤の成分が残らないようにするのがポイントです。

ごく軽い汚れで、真水で落ちるのなら、真水でじゃぶじゃぶ洗うのがベストでしょう。



プロフィール

フリーライター。元船員。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け30年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。



カテゴリー