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元山岳部部長の登山講座

ザックが臭い!ザックを洗濯して快適登山

ザックの手入れ。洗濯方法とは

下山後のザックは泥と汗をたっぷり吸って、ニオイを放ちます。だから洗濯がしたい。

その昔、山の先輩達から「型崩れするからザックは洗っちゃいかん!」と教えられたせいで、洗濯することに躊躇していました。

しかし、化繊でできた現在のザックはたっぷりと汗を吸うと異臭を放ち、とっても不快です。

ニオイに耐えかね、ある時、恐る恐るザックを洗ってみました。すると、ザックはきれいになり、ニオイもなく、型崩れもしていません。

今回はザックの手入れや洗濯方法について考察します。




ザックは洗うな?

約60年洗濯していないザック

60年前のキスリング。一度も洗濯はしていない

キスリング(木綿でできた昔の大型ザック)時代、ザックは洗わないものでした。

キスリングは現在のザックのように、パットもフレームも入っていない、ただの巨大な布袋でした。

なので、新品の時のバリっとした生地の腰が失われると、ザックがヘナヘナになり、パッキングが難しくなってしまいます。

キスリングの場合、綿100%ですから、経年使用でほこりやカビのにおいはしてきますが、化繊のザックのようなきつい異臭は放ちませんでしたので、洗濯しなくてもそれほど気にならなかったのです。

現在のザックはキスリングと違い、部分的に厚いパッドや金属のフレームが入っているので、たとえ洗濯で生地の腰が弱くなったとしてもパッキングが難しくなるほど型崩れはしません。

洗濯方法についてはザックにより、丸洗いが出来るものや、丸洗い禁止(部分洗い可能)などがあります。

以下に丸洗いの方法について紹介します。

 

ザックの洗濯の仕方

一般的な洗濯方法

以下はモンベルのHPによる丸洗い方法の抜粋ですが、ザックメーカーが推奨する一般的な洗濯方法(丸洗い)は、どのメーカーもほとんど変わらず、特別難しいものではありません。

各メーカーに共通する要点は、「分解できるパーツは外す」「中性洗剤を使用する」「たらいなどで手洗いし、よくすすぐ」「陰干しする」の4点です。

1,外せるパーツは洗濯前に外し(フレーム、レインカバー、ショルダーハーネスやウエストベルトのアダプタなど)、ジッパー類は開けておく。
2,目立つ汚れがあれば、水で濡らしたあと中性洗剤をつけて、スポンジやブラシでこする。
3,洗いおけや浴槽にザックがちょうど漬かるぐらいの水を入れ、中性洗剤を加える。ザック全体を浸して、押し洗いする。汚れがひどい時にはぬるま湯を使用する。
4,押し洗いが済んだら、すすぎに入る。水が濁らなくなるまで十分にすすぎを繰り返す。
5,ザックを逆さまにし、水気を切る。背面パッドは水を含みやすいので手で押しながら水を押し出す。
6,陰干しする。紫外線は生地にダメージを与えるので、直射日光を避け、風通しの良いところで十分乾燥させる。

洗濯機を使用した洗濯方法

ザックの洗濯は、上記のような手洗いによる洗濯方法が推奨されますが、筆者が独自で行っている洗濯方法は、下記のとおり洗濯機を使用します

  • 1 ウエストベルト、フレームなど、ザックの分解できる部分をはずし、ファスナーは開放します。バックル類は暴れますので連結しておきます。※ザックによってはフレームがないものや分解できないものがあります。
  • 2 洗濯機に普通の洗濯洗剤を少なめに入れるか、中性洗剤を適量入れます。
  • 3 大きな洗濯ネットに入れ、おしゃれ着モードなどの弱水流か、標準モードで時間は短め(5分程度)に設定し、よくすすぎます。
  • 4 脱水はしないか、1分程度にし、陰干しします。よく乾燥してから組み立てます。

当然ですが、洗濯機に入らない大型ザックは、浴槽で手洗いします。

また、洗濯前に外したパーツで、洗濯が可能なもの(ウエストベルトなど)は、別途、洗濯をします。(フレームは洗いません。)

洗濯機によるザックの丸洗いを可としているメーカーはありませんが、筆者の場合、上記のような洗濯方法で、今までに問題が起きたことはありません。

洗濯機を使用して実際にザックを洗濯した様子については、「ザックを洗濯してみる。」で詳しく紹介していますので読んでみて下さい。

 

丸洗い禁止のザックは絶対に丸洗いできないのか?

購入17年目のザック

筆者の大型ザック(セロトーレ社製)は、取説では丸洗い禁止となっていますが、丸洗いをしています。

購入から17年経ちますが、異常は出ておりません。

このほかに、ミレーとセロトーレの小型ザックもあり、こちらも丸洗い禁止となっていますが丸洗いしています。

筆者の場合、ザックの洗濯はシーズンの終わりに1回程度と、すごく汚れた時にだけ行っており、必要最小限しか洗濯をしていませんので、この方法でも良いのかも知れません。

経験上、丸洗い禁止の場合でも、やさしく洗濯すれば大丈夫な場合が多いと思いますが、心配な場合は、部分洗いなど取扱説明書に従った洗濯方法が無難だと思います。

 

普段のメンテナンス

普段のメンテナンスといっても、さほど大した事はしていません。

下山したら、大きな汚れは水で濡らしたウエスなどで拭き取るか、汚れがひどい箇所は部分洗いしても良いでしょう。

汗を吸った背中部分、ウエストベルト、ショルダーベルトはファブリーズか、台所用アルコールをたくさん振りかけ、ザックをよく乾燥させます。

アルコール除菌スプレーだけでも異臭は少なくなる

乾燥したら、残った泥をさらにブラシやウエスなどで落とし、ザックを裏返して中に入った細かいゴミを落として終了です。

後は湿度が高くない部屋に保管します。(湿度が高い場所に保管すると裏地のポリウレタンの劣化が早まります→「ザックの裏地が劣化!ポリウレタンを剥がす」)

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ザックがそんなに汚れていなければ、アルコールやファブリーズだけでも、けっこうニオイはなくなりますので、丸洗いは、シーズンに1~2回しか行っていません。



洗剤について

水で落ちる汚れは水でじゃぶじゃぶ洗うのが良いのですが、洗剤を使用するのならザックに限らず登山用品の多くは「中性洗剤使用」という言葉がよく出てきます。

中性洗剤を使用する理由は生地に使用されている素材や接着剤などの材質を痛めないということです。

中性洗剤の例(エマール)

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ほとんどの洗濯洗剤は「弱アルカリ性」ですから、洗剤の成分が洗濯物に残ると材質の劣化を招くということです。

洗剤は中性より、弱アルカリ性のもののほうが汚れはよく落ちます。

しかし、洗剤の濃度が濃すぎると生地を傷めることがあるので、おしゃれ着や大切なものは中性洗剤を使用するということなのです。

言ってしまえば、洗濯はなんでも中性洗剤で洗うべきだと思いますが、弱アルカリ性の洗剤を使用する場合でも、洗剤の量は規定量より少なめにし、洗濯や脱水の時間は短めにして、洗剤の成分が残らないよう、よくすすぐように心がけましょう。

ザックをはじめ、登山用品を洗濯する場合、どのような場合でも洗剤は多過ぎず、成分が生地に残らないようすすぎを多めに行うというのが基本となります。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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