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元山岳部部長の登山講座

ザックのチェストベルトは必要か?

登山のザックの各部名称

ザックのチェストベルトは必要か?

ほとんどのザックにはチェストベルトが付いています。

また、ほとんどの登山者はチェストベルトを使用して登山をしています。

しかし、パッキングのバランスが良い場合や、荷物が少ない場合はチェストベルトの効果がほとんど感じられない場合が多くあります。

チェストベルトがついているから常時締めなければならないと思っている登山者が多いように思います。

今回は実際の登山におけるチェストベルトの役割や効果について考えてみます。




ひと昔前のザック

一昔前のザックと現在のザックは形状もパッキング技術もまったく違い、ザックの重心は背中上部にするのが基本だったので、現在とは比較にならないほど体が振られたり、ザックの重みでショルダーベルトが肩に食い込んだり、両外側に広がることもありました。

チェストベルトは付いていませんでしたが、肩から外れることもなく、特に不自由は感じたことはありませんでした。

現在ではほとんどのザックにチェストベルトが付いていますが、中には付いていないモデルもあります。

チェストベルトが必要と感じた場合には、別売りのチェストベルトを後付けすることもできます。


mont-bell(モンベル) 後付け用チェストストラップ BK 1124712

チェストベルトの役割

チェストベルトの役割はショルダーベルトが肩から外れないようにするためや、ショルダーベルトの肩への食い込みを軽減したり、また、藪こぎ、岩場、トレランなどで、ザックの振れをより軽減したい時などに使用するとされています。

平均的な装着位置は鎖骨下約5cm(または脇の下くらい)とされ、ザックによってはチェスベルトが上下に可動するものもあります。

 

実際の登山では・・

チェストベルトは締めなくても歩行に影響がない場合がほとんどです。

好き嫌いはありますが、締めると胸が窮屈になり息が苦しくなりますのでチェストベルトを使用しない登山者は多くいます。

筆者もチェストベルトは息苦しくなるので、ほぼ使用しません。

日帰り登山ならザックは軽いのでショルダーベルトが肩から外れそうになるとか、ザックが振られることもほぼありません。

縦走などで、重たい大型ザックを背負った時はどうかというと、重たくてもザックが振られないようパッキングには相当気をつけますので、チェストベルトのお世話になることはほとんどありません。

ザックがかなり重たいと、藪こぎなどでは確かに振られますし、ショルダーベルトが肩に食い込みますので、チェストベルトをすることもありますが、ザックが非常に重たい場合、チェストベルトをしたからといってザックの振れや肩への食い込みが画期的に軽減されるわけではなく、いくらかマシになるという程度です。

むしろ、ザックが重たいと体力を消耗しますので、チェストベルトをぜずに胸をフリーにした方が楽になるということもありますので、チェストベルトの使用はケースバイケースです。

 

まとめ

チェストベルトの役割や実際の使用感についてまとめましたが、荷物が軽かったり、パッキングが良く、ザックが振られにくい状況ではチェストベルトの出番はほとんどないのではないかと思います。

パッキングが悪く、ザックが振られるから、チェストベルトをするというのは順序が逆で、まずはパッキングをきちんと行った上で、各ベルトの調整を正しく行い、ザックが振られにくい状況を作るというのが基本です。

(パッキングのコツについては「図解パッキングのコツ~ザックの詰め方」を、ザックの正しいベルト調整については「ザックの背負い方~ベルト類の調整で快適に」を読んでみて下さい)

チェストベルトが必ずしもザックのフィット感や疲労軽減に大きく貢献しているとは思えないのに、何故か小さなデイパックから大型ザックまで、ほとんどの登山用ザックには標準的にチェストベルトが付いています。

チェストベルトを使うか使わないかは登山者の自由ですが、特に必要とも思われない場面で、呼吸が苦しくなっても、律儀にチェストベルトを使用しなければならない理由はないでしょう。

人の体型やベルト調整の具合によっては、ショルダーベルトが外れやすい場合もありますので、そのような時にはチェストベルトが必要だとは思いますが、ほとんどの場合は、正しいパッキングと正しいザックのベルト調整で、ザックのフィット感は格段に向上します。

ザックのパッキングやベルト類の調整は、漫然と行わず、場面に見合った適切な調整を行うことが大切です。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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