31Mar

雪崩対策!~雪崩ビーコンの選び方
雪崩に巻き込まれた人は一刻も早く救出しなければなりません。
雪崩遭難の生存率は埋没後15分後で92%、45分後で26%と時間が経過すると急激に生存率が下がります。
遭難者は迅速に発見し、迅速に掘り起こさなければいけません。
そこで、必要になるのは、雪崩ビーコンとスコップです。
条件にもよりますが、遭難者も救助者も雪崩ビーコンを持っていれば、数分で埋没位置を特定することができます。
また、スコップをもっていれば、硬いデブリ(雪崩れて堆積した雪)を約1m掘るのに10分とかかりませんが、スキー板や手で掘ると約40分かかると言われています。
埋没位置がわかっても、スコップを持っていなければ仲間の命を救うことはできません。
今回は、雪崩ビーコンの種類や選び方について説明します。
雪崩ビーコンの種類
雪崩ビーコンにはアナログ式、デジタル式、アナログ、デジタル切り替え式の3つがあります。
雪崩ビーコンが登場したころはアナログ式ばかりでしたが、現在ではデジタル式やアナログ、デジタル切り替え式が主流となり、アナログ式はほとんど出回っていません。
・アナログ式
アナログ式はアンテナが1本内蔵されています。
受信感度はデジタルより良く、広範囲まで受信可能です。
電波は基本的に距離が近ければ近いほど強くなりますが、アンテナから発信する電波には独特の曲線があるので、時には電波の強い方向が2か所出ることもあります。
このような、ビーコンで捜索をするには、電波の特性をよく理解し、捜索のやり方を習熟する必要があります。
・デジタル式
デジタル式には、内蔵アンテナが1本~3本のタイプがあります。アンテナの本数が多いほど上位機種になっています。
受信感度はアナログ式より劣ります。カタログスペックによる受信範囲はだいたい50m前後のものが多いようです。
アンテナが1本ですと、アナログ式のビーコンと捜索方法はほとんど変わりませんが、2本、3本とアンテナの数が多くなると、それぞれのアンテナで受信した電波の強度を計算して遭難位置を示してくれますので、ビーコンの捜索に不慣れな人でも比較的簡単に正しい遭難位置にたどりつくことができます。
・アナログ、デジタル切り替え式
このタイプは、遭難位置まで遠い時には感度の良いアナログで受信し、近くなったらデジタルに切り替えて捜索するようになっています。
アナログとデジタル、両者のいいところを搭載したビーコンといえます。
どんな機種を選ぶのか?
雪崩ビーコンは価格が20000円~60000円代と決して安い買い物ではありません。
値段の違いですが、最近は3本アンテナの商品が主流のようですが、安いものほどアンテナの本数が少なく、また、送受信の感度も悪くなる傾向があるようです。
高価なものほど送受信感度がよく、初心者でも精度の高い捜索が可能です。
しかし、アンテナが1本の安い機種でも訓練を積むことで迅速に捜索することも十分可能です。
つまり、選ぶときのポイントは、送受信の感度が良いのかどうか(捜索範囲が広いかどうか)、アンテナの本数、電池の持ち、価格で選ぶことになります。
ピープスから出ているフリーライドは20000円弱で買える一番手ごろなビーコンです。
値段が安いので、いざというときのお守りには手ごろですが、アンテナが1本なので、初心者がピープスフリーライドで遭難者を捜索するには、アンテナ3本のタイプにくらべ、倍の時間がかかるでしょう。
とりあえず、ビーコンが欲しい人には安くて良いと思いますが、ビーコンを持ち歩くということは、パーティーの仲間がいることが前提です。(単独行ならビーコンを持っていてもあまり意味がありませんので・・)
雪崩に遭ったとき、誰が遭難者で誰が救助者になるのかわかりません。
また、実際の雪山で遭難者を捜索するときは、気温や埋没の状況によって、スペックで表示してある捜索範囲より狭くなってしまうことも十分あります。
初めて雪崩ビーコンを買う人でも、ある程度の受信感度があって、操作に不慣れな人でも比較的精度の高い捜索ができる3本アンテナの機種(中級機種以上)が良いと思います。
上位機種は、アナログとデジタルの切り替え機能がついていたり、一度に複数の遭難者を捜索できる機能が付加されていたりします。
参考までに有名メーカーの雪崩ビーコンを紹介します。
ピープス フリーライド
デジタル式、アンテナ1本、受信範囲約40m、重量110g(電池含む)、バッテリー寿命(発信時)200時間、単3アルカリ電池1本使用、約20000円
bca トラッカーDTS
デジタル式、アンテナ2本、受信範囲約50m、重量298g(電池含む)、バッテリー寿命(発信時)250時間、単4アルカリ電池3本使用、約30000円
オルトボックス3+
デジタル式、アンテナ3本、受信範囲約40m、複数捜索可能、重量210g(電池含む)、バッテリー寿命(発信時)250時間、単3アルカリ電池1本使用、約46000円
ピープス DSPスポーツ
デジタル式、アンテナ3本、受信範囲約50m、複数捜索可能、重量200g(電池含む)、バッテリー寿命(発信時)200時間、単4アルカリ電池3本使用、約50000円
マムート パルス バリーボックス
アナログ、デジタル併用式、アンテナ3本、受信範囲約60m(アナログ時60m以上)、複数捜索可能、重量210g(電池含む)、バッテリー寿命(発信時)200時間、単4アルカリ電池3本使用、約55000円
MAMMUT マムート ビーコン PULSE BARRYVOX パルスバリボックス
スノースコップとゾンデ(プローブ)
雪崩ビーコンで遭難者の位置を特定できたら、次に雪を掘るわけですが、スコップを持っていないとどうしようもありません。
遭難者は完全に埋まっていない事例もたくさんあり、雪面に体の一部が出ていることもあります。
雪山にはビーコンとゾンデは持って行かなくても、原則、スコップは必ず持って行くようにします。
上の写真は筆者が使用している雪山用のスノースコップです。
写真下のオレンジ色のスコップは市販品のスノースコップですが、写真上のスコップはホームセンターで買ったアルミの角スコップの柄を短く切って自作したものです。
予算を押さえたいなら、これでも十分です。
スコップはキャンプ用(軍用)の折りたたみ式のものもありますが、このタイプのスコップは重くて、ショベルの面積も狭く、雪を掘るのには効率が非常に悪いので、冬山向きと言えません。軽くて、丈夫で、ある程度面積の広いものが適しています。
いわゆるこんなやつは非常に効率が悪い
ゾンデ(プローブ)とは埋没者を探すために、雪に刺す細長い棒のことです。
雪崩ビーコンで埋没位置を特定できたら、ゾンデを刺し、人の感触があれば間違いなく遭難者がいますので、ピンポイントで掘り出すことができます。
遭難者がビーコンを持っていない、電波が取れないなどの状況では時間はかかってもゾンデを使用して捜索するしかありません。
雪崩遭難者の救出に必要なものは、スコップと雪崩ビーコン、ゾンデの3点セットです。
スノースコップ ブラックダイヤモンド(BlackDiamond) ディプロイ7
ゾンデ Black Diamond(ブラックダイヤモンド) クイックドロープローブツアー320
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