7Mar

冬山のテント生活のコツ。テント生活のあれこれ
今回は冬山でテントを張ったあとのテント生活の実際について説明していきます。
前回の「雪上にテントを張る」はこちらです。
快適なテント生活のために
雪上にテントを張り終えたら、いよいよテント生活に入ります。
雪山でのテント生活では、テント内に雪や氷を持ち込まない工夫が必要です。
テントの出入りの時、装備をテントに入れる時など、知らず知らずのうちにテントの床は雪だらけになってきます。
侵入した雪は溶けてテントを濡らし、ふたたび凍ります。テント内に雪が落ちていれば、乾いている服や寝袋、装備にも雪がついたりして無駄に水濡れさせます。
雪山では、いったん装備を濡らすと下山まで乾かず、日に日に装備が重くて冷たくなってきます。
テントや装備はどうせ雪で濡れてしまうのですが、極力、装備についた雪や氷をこまめに落とす、テント内は極力濡らさないよう気を配るのと、そうでないとでは、日を追うごとに快適さに差が出てきます。
テントに入る前に
テントにはピッケル、アイゼン、スコップ、ストック、ワカン、スキーなど、外に刺して置くもの以外はテントに入れますが、この時、ザックと衣類、登山靴をよーくたたいて雪を落とします。
雪は手ではらうだけではとても落ちづらいので、たわしや適当な靴ブラシを使って落とすと便利です。(私は手の平サイズのほうきを使っています)
テントに入ってから
テントの中に入ったら、マット類を敷き、荷物を整理をします。
まず、銀マットやエアーマットを敷きますが、この時すでに床には雪が舞っていると思います。
小さいほうきとちり取りがあると、雪や氷を外に出すのに重宝します。
このほうきは、たわしやブラシほどではありませんが、テントに入る前に装備についている雪を落とすのにも使えます。(ほうきの毛は腰の強いものが良い)
ほうきとちり取り
テント内は人の出入りのたびに雪が侵入しますし、水蒸気が天井について霜や氷が床に降ってきますから、テント生活中はずっとほうきとちり取りが活躍します。
衣類と靴下の汗冷え対策にひと工夫
1日の行動を終え、テントに入ってほっとしたあと、下着と靴下の汗で体が冷えてきます。
着替えをすれば良いのですが、着替えは無制限には持っていけません。
コンロを炊くとテント内は温かくはなりますが、濡れた衣類が乾くほどのパワーはありません。
そこで、こんな方法があります。
まず、寒いのを我慢して、上半身を全部脱ぎます。
通常、上半身はアンダーシャツ、中間着、フリースの順で着ていると思いますが、脱いだ後、今度は逆にフリース、中間着、アンダーシャツの順に着ます。
こうすると、肌に接するのは乾いたフリースになりますので汗冷えはなくなり、汗を吸ったアンダーシャツは一番外側になります。
その上に予備のフリースを着て、さらにヤッケ(ハードシェル)を着るとずいぶんと温かくなります。
汗濡れしたアンダーシャツは翌日には体温で乾いていますので、翌朝起きたら、また上半身を全部脱いで、通常どおり、アンダーシャツ、中間着、フリースの順に着直します。
靴下ですが、これも汗濡れして足が冷えて非常に不快です。
靴下は薄手の上に厚手の靴下の2枚重ねが多いのではないかと思いますが、私の場合、冬山では下から薄いシルク靴下、中厚手の靴下、厚手のフリース靴下の3枚重ねですので、この場合の対策を紹介します。
まず、靴下を全部脱ぎます。
次に、予備の中厚手の靴下を履きます。
その上から、今まで履いていた靴下を履いていたとおりに、シルク靴下、中厚の靴下、厚手のフリース靴下の順に履きます。
こうすることで、足の汗冷えの寒さは一気になくなります。
翌朝には濡れていた靴下が相当乾いています。
出発前には一番下に履いていた予備の中厚手の靴下を脱いで、濡れないように保管し、翌日以降も同じ方法で靴下を乾かします。
靴下2枚重ねの人なら、厚手の靴下の予備を持っていき、それを一番下に履いてから今まで履いていた靴下を履けば同じことになります。
以上が衣類と靴下の濡れ対策ですが、汗が体温で蒸発して衣類が乾いた分は寝袋が全部吸ってしまい、寝袋が重くなってしまいますが、シャツや靴下が濡れているのよりはましだということです。
炊事の湯気対策
テント内での炊事の時は湯気がもうもうと上がり、テントの内壁に付いて水滴が凍ります。
この水滴は凍って床に降ってくるし、寝ているときに顔を落ちてきて不快なばかりか、テントを撤収する時にはテントが小さく畳めず、収納袋に入らなくなることがありますし、重くなります。
この対策として、炊事中はベンチレーターを必ず開けます。
ベンチレーターを開けるのと、閉めっぱなしでは水滴の付き方がぜんぜん違います。
ゴアッテックステントはある程度水蒸気を透過してくれますが、炊事のときはベンチレーターは開けるべきです。
ベンチレーターを開けて水蒸気をたくさん逃がしても、やはり水滴は内壁に付いてしまいます。
そこで、小さめのフキンを1枚用意しておき、炊事のあとにテントの内壁をひと吹きして、テントの外に水分を絞って捨てます。
こうすることで、テントの濡れと、重量増が軽減されます。
翌朝起きると、呼気や濡れた衣類の水蒸気によってテントの内壁に霜がたくさん付いています。
朝食の炊事のときに、室温が上がり内壁についた霜は解けますので、炊事の直後にフキンでひと拭きすれば、すっきりとテントを畳むことができます。
フキンで内壁を拭くのは面倒なことですが、ひと手間かけるとずいぶんと快適になります。
寝る時は凍るものは寝袋へ
食事が終わったら、雪を溶かして翌日に使う飲み水を作ったり、アルファ米を用意しているのなら、お湯をそそいで翌朝用のご飯作っておいても良いでしょう。
水筒に入れたばかりの飲み水やアルファ米は湯たんぽのように温かいので、寝袋の中に一緒に入れます。
水やごはんは、寝袋の中に入れないと翌朝凍ってしまいます。
アルファ米は巾着袋などに入れて腹に抱いて寝ると、翌朝はそのまま食べられます。
登山靴は靴の内側が汗で湿っていますので、そのままテント内に置いて寝ると、翌朝靴がカチカチになります。
カチカチでも履けないことはありませんが、足が温まるまで冷たい思いをします。
登山靴はゴミ袋などに入れて、寝袋の中に入れて寝ると凍りません。
寝袋の中は窮屈になってしまいますが、冬山でのテント生活とはそんなものです。
寝袋に入る時は持って来たフリースなど十分に重ね着し、目だし帽をかぶります。
場合によっては冷える箇所に使い捨てカイロを張ったりすると温かく寝られます。
寒いと、朝までほとんど眠れないことがありますが、睡眠不足は翌日以降の行動に支障をきたします。
また、撥水力が落ちて雪で湿ってしまったヤッケを着たまま寝袋の中に入ると、翌日、寝袋はとんでもなく湿ってしまいますので注意が必要です。
表面が湿ってしまったヤッケは翌朝凍ってガリガリになり、そのまま着ることになりますが、冬山では仕方のないことです。
参考:ヤッケなどアウターの有効な撥水処理の仕方については「ゴアッテックスの手入れ」を読んでみて下さい。
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