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元山岳部部長の登山講座

冬山。スノーシューの選び方と使い方

冬山。スノーシューの選び方と使い方

山岳用スノーシューの登場によって、冬山登山も楽に踏破できてしまうことが多くなりました。

林道のアプローチや冬山の低山はもちろん、クラストした硬めの斜面でも強いグリップを発揮するものも出ていて、スノーシューを脱がずに山頂まで行けてしまうこともけっこうあります。

今回は登山に適したスノーシューの選び方と使用法、登山に使用してはいけないスノーシューなどについて説明します。




危険!! 登山をするなら平地用のスノーシューを選んではいけない!

スノーシューは大きく分けて、平地の雪上散歩用と登山用の二つがあります。

冬山登山用にスノーシューの購入を考えているのなら、必ず山岳用のスノーシューを選ぶようにします。

平地用と山岳用の違いは、スノーシューの裏側についている「爪」の数です。

平地用のものは、短い爪が2,3か所ついているのが定番ですが、山岳用のものは明らかに爪の数が多く、このぎり状の長い爪がついているモデルが多いようです。

低山で山頂まで深雪だったら、平地用スノーシューでも登れないということはありません。

しかし、平地用スノーシューを着けた状態で雪面が硬い斜面をトラバース(斜登)しようとすると、横滑りを起こし、最悪滑落します。

山岳用スノーシューは縦方向はもちろん、斜面での横滑り防止のために前後方向にのこぎり状の爪をつけている場合を多く見受けます。

平地用スノーシューの例:アトラス スノーラン

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山岳用スノーシューの例:アトラス ヘリウムMTN26

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写真(上)は平地用スノーシューですが、爪が少ないのがわかります。

一方、写真(下)の山岳用スノーシューは平地用に比べて爪が多く、両サイドにのこぎり状の長い爪がついているのがわかります。

この、のこぎり状の爪が斜面において横滑りを防止するのです。

では実際に雪面をトラバースする場合、スノーシューの違いによってどんな現象が起こるのかを次に説明します。

トラバースにおける山岳用スノーシュー(左)と平地用スノーシュー(右)の違い

上の図を見て下さい。

斜面をトラバースしている場合、深雪ですとスノーシューは沈み込みますが、雪面が硬い場合、図(右)のように一歩踏み出した時に、スノーシューのフレームのサイドが雪面にあたり、滑ってバランスを崩す原因になります。

一方、図(左)のように、山岳用スノーシューは雪面が硬い場所でのトラバースでも、サイドの爪が効きますのでバランスを崩すことがありません。

平地用のスノーシューでも、雪が硬くなったらスノーシューを脱げば良いだけですが、実際の冬山では、雪質の状況は数メートル単位で変わる場所もたくさんあり、今まで深雪だと思っていたら、急に硬いクラスト斜面になったり、また深雪になったりと雪質が一定しないこともあり、このような場合、その都度スノーシューを脱着せず、履きっぱなしになると思いますが、雪質が硬い場合、平地用スノーシューでは斜面でバランスをとるのが難しく、気がゆるむと転倒や滑落の危険があります。

滑落しましたでは取り返しがつきませんので、登山にスノーシューを使用する時は必ず山岳用モデルを使用するようにします。



山岳用スノーシューの選び方

では、山岳用スノーシューの選び方について説明していきます。

お店で買う時に気をつけなければいけないのは、平地用、山岳用と表示されていればよいのですが、何も表示がない場合は裏面の爪を良く見て買うようにします。

平地用と山岳用は爪が明らかに違いますのでわかるはずです。

それから、登山専門店ではなく、スポーツ量販店などでスノーシューを買う場合、店員が平地用と山岳用の違いをよく理解していないまま、お客さんにすすめている場面を見かけることがありますので、注意が必要です。

下に何種類かの山岳用スノーシューの裏面がわかる写真を載せました。

MSR ライトニング アッセント

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アトラス レンジBC22

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タブス FLEX VRT

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上はMSR、アトラス、タブスの山岳用スノーシューです。いずれもスノーシューの代表的なメーカーです。

どのモデルも、こぎり状の長い爪があるのがわかります。

このように、山岳用スノーシューは、ほとんどのメーカーで裏面にこのようなのこぎり状の爪がついていますので、一目でわかると思います。

MSRとアトラスのスノーシューは、フレーム自体が爪になっており、高いグリップ力を発揮しますが、このタイプを最初に販売したのはMSRです。

下の写真は筆者が使っているMSRスノーシューですが、フレーム自体が爪になっていることで、直登でもトラバースでも全方向によく効きます。

10年使っていますが、まだまだガタはきていません。(※この後、購入12年目でベルトが破損、14年目でビンディングの樹脂が壊れましたが、本体に破損はないので、部品交換などして現在も使用中です。)

筆者が使用中のMSR製スノーシュー

スノーシューを選ぶ場合、同じグレードのものでも、長さが違うものや幅が違うものがある場合があります。

長さの違いについては、より浮力を得たい場合は長い方のモデルを選ぶことになりますが、長いものは大きさも重量も増しますので、登山装備として考える場合は、浮力はやや劣っても小さくて軽量の方が良い場合もありますので、よく検討して購入します。

幅の違いについてですが、MSRスノーシューの場合、幅の狭いものはレディース向けとして販売されています。

歩き方にもよりますが、小柄な女性が幅の広いスノーシューを履いて歩く時に、自分のスノーシューを踏んずけてしまったりして、歩きづらい場合があるということと、女性の方が体重も軽い場合が多いので幅を狭くしても浮力に影響が出にくいということです。

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ストックも冬用に

夏用のストックのつば(バスケットといいます)は小さくて、雪上では使い物になりません。

写真(下)のような大きなバスケットに必ず交換します。

登山用ストック(トレッキングポール)を持っている人なら、オプションで冬用のバスケットがあると思いますので、忘れずに交換しましょう。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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