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元山岳部部長の登山講座

登山用GPSの選び方~専用機?スマホ?

登山用GPSの選び方~専用機?スマホ?

冬山や沢登り、登山道が判然としない山、視界が悪い時など、地形図を持っていてもうっかり道迷いを起こすことがあります。

今回はGPS専用機(ハンディGPS)やスマホのGPS機能を比較しながら、登山用GPSの選び方について説明していきます。




GPS専用機(ハンディGPS)とスマホGPS機能の長所と短所

従来、登山にGPSを使いたいなら、高価なGPS専用機を購入するしかありませんでしたが、スマホの普及と地形図アプリの登場で状況はガラリと変わりました。

単純に正確な現在地を知りたい場合、GPS専用機とスマホではほとんど差がありません。

このように書けば、ほとんどの人はGPS専用機は買わず、スマホに地形図アプリを入れることで対応すると思いますが、それぞれに長所、短所がありますので自分の登山スタイルに合ったものを選ぶことをおすすめします。

GPS専用機~値段は高いが操作のしやすさと信頼感

ここでは、最も有名なガーミン社のGPS専用機を例にします。

ガーミンのGPS専用機は電源が乾電池なので、予備電池を持って行けばバッテリー切れを気にする必要がありません。

機種にもよりますが、バッテリーの持ちは16時間~25時間ですので、歩いた軌跡を記録するために一日中電源を入れていても電池がなくなることはまずありません。(冬山では電池の消耗は大きくなります)

防水性や衝撃にすごく強いというわけではありませんが、一般的なスマホにくらべればタフに使えます。

画面はスマホより小さいですが、晴れた日の日中でも輝度を少し上げるだけで画面が明るくて見やすいのが特徴です。

タッチパネルではなく、ボタン操作の機種が多いのですが、ボタン操作式はタッチパネルのように画面に付いた水滴で反応しづらいというようなことは起こらず、よりアウトドア向きと言えます。

測位精度と受信感度は一般的なスマホよりやや優れています。

価格が20000円~60000円程度と高いところが難点ですが、スマホ+地形図アプリのユーザーが増えて売れなくなったせいなのか、独占状態だったガーミンの価格はずいぶんと安くなりました。

スマホアプリの利用者は今後も増加することが考えられますので、ガーミンの値段はもっと下がるのではという期待もあります。

最近では、登山に使用できる地形図が最初から内蔵されていたり、一部機種(etrex20xJ及び、30xJなど)に地形図が無料でインストールできるようにもなり、18000円もする地形図ソフトを買わなくてもよくなりました。

今後も安くなるようぜひ頑張ってほしいものです。

スマホ+地形図アプリ~ほどんと無料。電池を持たせる工夫が必要

地形図アプリが無料~数百円なので、スマホさえ持っていればほどんど無料でただちにハンディGPSとして使用できます。

GPS専用機を持たなくても良いので装備の軽量化にもなります。

アプリにもよりますが、地形図の表示は、GPS専用機と同等で特に見づらいということはありません。

画面が大きいという点ではGPS専用機より見やすいと言えます。

一方で、スマホ画面は晴れた日の日中はとても見づらく、画面が暗すぎて輝度を上げるのにも苦労することがあります。

地形図の表示は、山では圏外の場所が多いので、携帯圏内の時にあらかじめ地形図をダウンロードさせておく必要があります。

GPS機能はスマホ自体にGPS電波の受信機能がありますので圏内、圏外関係なく使えます。

スマホの一般的な測位精度と受信感度はGPS専用機よりやや劣りますが、実用上問題のないレベルです。

機種によってはGPS専用機と同等の測位精度があります。

沢地形など電波が受信しにくい場所ではアバウトな位置しか表示しないこともありますが、GPS専用機でも受信感度が悪い場所では誤差が出ます。

バッテリーはリチウムイオンなので、アルカリ乾電池やエネループなどのニッケル水素乾電池にくらべ、寒さには強いと言えます。

スマホは多機能ですので、設定やアプリなどの使用状態によってバッテリーの消耗が大きくなるので、登山中はWifiを停止し、省エネモードにするなど、使わない機能をすべてオフにするなどの注意が必要です。

バッテリーは容量や劣化の具合にもよりますが、必要以外の機能をすべて停止し、節電しておけば、GPS専用機と同等かそれ以上バッテリーは持ちます。(モバイル充電器を持って行った方が無難です)

GPS専用機にくらべ、一般的に衝撃や水濡れに弱いので、携帯方法は工夫する必要があります。



GPS専用機の選び方~登山に適した機種は?

GPS専用機はどれも登山に適していますが、必要最低限の機能があって、値段が安く、バッテリーの持ちが良いものが登山向きだと言えます。

ガーミン社から出ているものとしては、etrexシリーズが候補になると思います。

eTrex10J

アマゾン GARMIN(ガーミン) 登山用 ハンディ GPS eTrex 10J 【日本正規品】
楽天   GARMIN(ガーミン) 登山用 ハンディ GPS eTrex 10J 【日本正規品】

  • 対応衛星 GPS、GLONASS、みちびき
  • ディスプレイ 2.2インチ白黒
  • 内蔵地図 おおまかな大陸図
  • 別売地図 不可
  • 内臓メモリー 9MB
  • 気圧式高度計 なし
  • 電子コンパス なし
  • 電源 単3×2、NiMH・リチウム対応
  • バッテリー寿命 25時間
  • 重量 148g
  • ネット価格  日本正規品25000円程度 英語版並行輸入品13000円程度

10Jは別売りの詳細地形図を入れることができません。

内蔵のおおまかな大陸図は、本当におおまかなので登山では役に立ちません。

10Jを登山で活用するとしたら、緯度経度を表示させて、あらかじめ緯度経度の線を入れておいた地形図で現在地を確認するとか、自分が歩いた軌跡を逆にたどって元の位置にもどるという、極めてシンプルな使い方しかできません。

エントリーモデルということなのですが、初心者がこの機種を山で活用するのは難しいと思います。

 

eTrex22x

アマゾン ガーミン eTrex 22x ブルー 010-02256-08
楽天   ガーミン eTrex 22x ブルー 010-02256-08

  • 対応衛星 GPS、GLONASS、みちびき
  • ディスプレイ 2.2インチ、カラー
  • 内蔵地図 日本詳細地形図2500/25000、1/20万概略地図
  • 別売地図 可能
  • 内臓メモリー 8GB
  • 気圧式高度計 なし
  • 電子コンパス なし
  • 電源 単3×2、NiMH・リチウム対応
  • バッテリー寿命 25時間
  • 重量 148g
  • ネット価格  日本正規品45000~5万円程度 英語版並行輸入品 ー

20J→20xJからの後継機種です。電子コンパスや気圧式高度計がついていませんが、地形図が表示できるものでは一番安い機種です。

GPS専用機に高度計や電子コンパスは、必ずしも必要ないと思いますので、この機種はおすすめです。

20xJからの変更点は、「日本詳細地形図2500/25000」が最初から内臓されていることと、内臓メモリーが3.7GBから8GBに増えたことです。

内臓の「日本詳細地形図2500/25000」は等高線が10m(最大5m)間隔で表示され、登山用の地形図としては十分です。

ガーミンでは、登山用の別売り地形図「日本登山地形図TOPO10mplus(18000円程度)」を販売していますが、こちらは昭文社の「山と高原地図」のデータも入っており、日本詳細地形図2500/25000と比較して情報量が多くなっています。

 

eTrex32x

アマゾン eTrex 32x
楽天   eTrex 32x

  • 対応衛星 GPS、GLONASS、みちびき
  • ディスプレイ 2.2インチ、カラー
  • 内蔵地図 日本詳細地形図2500/25000、1/20万概略地図
  • 別売地図 可能
  • 内臓メモリー 8GB
  • 気圧式高度計 あり
  • 電子コンパス あり
  • 電源 単3×2、NiMH・リチウム対応
  • バッテリー寿命 25時間
  • 重量 148g
  • ネット価格  日本正規品5万~6万円程度 英語版並行輸入品34000円程度

30J→30xJからの後継機種です。

22xの機能に加え、気圧高度計、電子コンパスが付き、複数のアクセサリーに対応しています。

30xJからの変更点は、22xと同じく、「日本詳細地形図2500/25000」が最初から内臓されていることと、内臓メモリーが3.7GBから8GBに増えたことです。

気圧式高度計付きのGPS専用機がほしい方にはおすすめの機種です。

 

eTrex touch25J

アマゾン GARMIN(ガーミン) ハンディGPS eTrex Touch 25J カラー液晶
楽天   GARMIN(ガーミン) ハンディGPS eTrex Touch 25J カラー液晶

  • 対応衛星 GPS、GLONASS、みちびき
  • ディスプレイ 2.6インチ、カラー静電タッチパネル
  • 内蔵地図 日本詳細地形図2500/25000
  • 別売地図 可能
  • 内臓メモリー 8GB
  • 気圧式高度計 なし
  • 電子コンパス あり
  • 電源 単3×2、NiMH・リチウム対応
  • バッテリー寿命 16時間
  • 重量 159g
  • ネット価格  日本正規品60000円程度 

etrex touchシリーズは、タッチパネルになっており、日本詳細地形図2500/25000が最初から内蔵されています。

22xや32xにくらべ、バッテリー寿命が16時間と少なくなっています。

この機種には気圧式高度計はついていません。

 

eTrex touch35J

アマゾン GARMIN(ガーミン) ハンディGPS eTrex Touch 35J カラー液晶
楽天   GARMIN(ガーミン) ハンディGPS eTrex Touch 35J カラー液晶

  • 対応衛星 GPS、GLONASS、みちびき
  • ディスプレイ 2.6インチ、カラー静電タッチパネル
  • 内蔵地図 日本詳細地形図2500/25000
  • 別売地図 可能
  • 内臓メモリー 8GB
  • 気圧式高度計 あり
  • 電子コンパス あり
  • 電源 単3×2、NiMH・リチウム対応
  • バッテリー寿命 16時間
  • 重量 159g
  • ネット価格  日本正規品65000円程度 

この機種は、25Jの機能に加え、気圧高度計がつき、対応アクセサリーが多いのが特徴です。

etrex touchシリーズは登山用として見た場合、22xや32xよりバッテリー寿命は短く、悪天候でのタッチパネル操作がどこまでスムーズにいくのか、やや疑問が残ります。



スマホ用地形図アプリ~登山に適したアプリは?

スマホ向けに登山用地形図アプリがたくさん出ています。

地形図アプリの多くは基本的に無料で使用でき、課金して使える機能を増やせるといったものがほとんどです。

ですので、気軽にいろいろな地形図アプリをインストールしてみて、自分が一番使いやすいと思ったものを使用すれば良いと思います。

以下に登山用地形図アプリをいくつか紹介します。

以下に紹介するアプリはすべて無料でインストールができ(課金すれば機能が増えます)、あらかじめ地形図をダウンロードしておくことで、圏外でも地形図を表示でき、軌跡ログを取ることができます。

 

YAMAP

登山計画や登山記録の作成ができるGPSアプリです。

GoogleplayのGPSアプリの中で国内シェアNO.1だと言うことです。

  • ios、android対応
  • GPSログの記録可能。
  • オフラインでも使用可能。
  • カロリー計算のための活動種別(登山・ハイキング・ウォーキングなど)を選ぶことができる。
  • 位置情報を家族などに知らせるみまもり機能あり。
  • 距離ガイド機能~自分を中心に円で距離が表示される。
  • カメラ機能~活動中に撮影すると活動中の軌跡上にカメラマークが表示される。
  • 課金あり:プレミアム会員 月額(アプリ内決済¥580、クレカ決済¥480)、年額(アプリ内決済¥4600、クレカ決済¥3480)プレミアム地図(陰影のあるカラー地図)の表示、他のユーザーの軌跡を表示、3Dマップに軌跡を表示のほか、ダウンロードできる地図数・アップロードできる写真数・閲覧できる活動データ・ブックマーク件数・利用スタンプ数が無制限など。

ヤマレコmap

登山計画や登山記録の作成ができるGPSアプリです。

ヤマレコユーザーのGPSログ「みんなの足跡」が地図に表示され、マイナールートも確認できます。

  • ios、android対応
  • GPSログの記録可能。
  • オフラインでも使用可能。
  • コースタイム表示がある。
  • GPSログを取ることで現在位置をヤマレコに残すことができ、いまココアプリで家族などが登山者の現在位置を把握できる。
  • 道間違いを音声で通知する。
  • ヤマレコを使用した他の登山者の記録や足跡を確認することができる。
  • 課金あり:プレミアムプラン 月額(20GB¥360)年額(20GB¥3400、100GB¥15000、300GB¥21000)全体の容量アップ(20GB、100GB、300GBが選べる)、掲載写真の容量無制限、トップページに掲載される山行記録期間のアップ、山行記録がメルマガで紹介される、「コンパス」への登山届提出、表示広告の減少など。

地図ロイド+山旅ロガー

シンプルなGPSアプリです。

地図ロイドは国土地理院の地形図を使って現在地を表示することができます。

GPSログを取ったり軌跡を表示させるには、山旅ロガーをインストールしておく必要があります。

  • android対応
  • GPSログの記録可能。
  • オフラインでも使用可能。
  • 課金あり:山旅ロガーGOLD(400円)GPSログのリアルタイム表示ができるようになる。(無償版の山旅ロガーでGPSログを表示するには、記録したログを一回一回呼び出す必要がある)、超精密モードの測定、アラーム機能、電池残量モニター機能など。

 

ジオグラフィカ

開発者がフィールドテストして作られたGPSアプリです。

ルート案内や標高、時間などを音声で知らせる機能などがあります。

  • ios、android対応
  • GPSログの記録可能。
  • オフラインでも使用可能。
  • 音声による案内機能あり。
  • 課金あり:機能制限の解除(¥960)トラックログの記録回数が無制限、表示キャッシュの容量アップ、一括キャッシュの回数制限が解除、地図の一括ダウンロードの地図タイル数アップ

 

まとめ

GPS専用機は操作性、見やすさ、堅ろう性ともに優れていますので、山での使いやすさはGPS専用機になると思います。

スマホは上位機種に地形図アプリを入れた場合、GPS専用機と変わらない機能を発揮します。

スマホのアプリはほとんど無料、GPS専用機はとにかく高い(昔は本体、地形図ソフト一式約10万円しました)、値段で決めると勝敗はスマホです。

ほとんどの登山者はスマホに地形図アプリを入れ、GPS専用機は値段が下がらない限り、下火になることが予想されます。

スマホとGPS専用機を比べた場合、もやはGPS専用機がスマホに勝る要素はないという見方もありますが、そもそも登山中にスマホを操作するのと、それ専用に作られたGPS専用機を操作するのとを比べると、スマホの方は操作がやや煩雑で、GPS専用機の方が操作しやすく信頼感があります。

スマホをGPSがわりに使用する場合は、バッテリーが食わないような設定を必ずしておくことや、衝撃や水没対策をしっかりすることが必須です。

両者の特徴を理解した上で、自分の登山スタイルに合う方を選べば良いでしょう。

スマホ、GPS専用機どちらを使用するにしても、紙の地形図、コンパス、(できれば高度計)は必ず持つようにし、機械が壊れても読図をしながら下山できる実力を普段から身につけておくことが大切です。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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