山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

menu

元山岳部部長の登山講座

地形図の実戦的使用法2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回に続き、地形図の実戦的使用法です。

(前回→地形図の実戦的使用法1

今回は自分の位置がわからなくなった時の地形図コンパスの使い方について説明します。

実戦的使用法解説

図1クロスベアリング

図1

図1について。

登山者は現在地X点にいますが、本人はX点にいるのかどうかわからなくなった状況とします。

視界が効くので周囲の地形が確認できます。

東北東にAピークが見えますが、登山者はこのピークの形に見覚えがあり、間違いなく札内岳の本峰だと確信を持っています。

若しくは地形図の等高線の特徴と周囲の地形を見比べてAピークが札内岳だと確信を持っています。

そこでコンパスを取り出しAピークが何度に見えるのか計測してみました。

なお、図1の中には度数の前にはMとTが書かれていますが、Mは磁針方位、Tは真方位を表しています。

偏角は西偏9°とします。

(磁針方位と真方位、偏角については「地形図の実戦的使用法1」参照)

 

図2A測定

図2

 

まずコンパスを体の正面に持ち水平にして、定規中央にある矢印をAピークに向けます。

次にそのままの状態でコンパスの方位環を回し、コンパスの針が示す北(磁北)と方位環のN(0°)合わせます。

そして定規中央の線と方位環の目盛を読みます。Aピークが磁針方位77°に見えることがわかりました。

 

図3A作図

図3

 

次にコンパスの方位環はそのまま動かさず、図のようにコンパスを地形図の上に置き、定規の縁をAピーク(札内岳)に合わせ、かつ、コンパス円内の赤い平行線が地形図に書いた磁北線と平行になるまで定規本体を動かします。

現在地はこの定規の縁の線上のどこかにあることがわかります。

筆記用具で線を引いても良いです。

この場合、読図が慣れている人なら自分の周囲の地形と地形図を比較して現在地が図1のX点付近であるとが推測できるでしょう。

今説明したように1つの物標を計測するだけで、だいたいの位置を知ることができます。

しかし、次に説明する方法は二つ以上の物標を計測して正確に現在地を求めるクロスベアリングと呼ばれる方法を紹介します。

Aピークを計測したのと同じ要領で図1のBピーク、Cピークをコンパスで計測します。

 

図4B測定

図4

 

Bピークは磁針方位116°に見えることがわかりました。

 

図5B作図

図5

 

Bピーク計測後、地形図で確認。筆記用具で線を引きます。

 

図6C測定

図6

 

Cピークは磁針方位135°に見えることがわかりました。

 

図7C作図

図7

 

Cピーク計測後、地形図で確認。筆記用具で線を引きます。

 

図8作図結果

図8

 

筆記用具でABCの交点を記入すると図のように現在地が求められます。

作図の結果、図8では図1のX点とは少し誤差が出てしまいました。

しかし、クロスベアリング法は測量器具でも使わない限り、山用のコンパスでは正確さに限界があります。

このくらいの誤差は良しとします。

実際に机もない山中でクロスベアリングを行うことは困難です。

しかし、知識として覚えておくことは有効で、いざという時には役に立つ技術です。

説明ではABC3点を計測していますが、2点でもかまいません。

2点の場合はAとCでクロスベアリングを行うのが良いでしょう。3点とる方がより正確に測位できます。

図1の例では角AXCは58°になりますが、本当は120°くらいが一番理想で、測位誤差が少なくなります。

角AXCは角度が狭くなるほど測位誤差は大きくなってしまいます。

また、計測する物標は計測場所からの距離が近いほど測位誤差は大きくなり、遠いほど測位誤差は小さくなります。

救助要請の場合にも役に立つ

この技術は自分の位置を知ことができるのと同時に、万が一の時の救助要請の時、山岳警備隊に自分の位置を伝えるのにも役立ちます。

遭難時に場所をうまく伝えられない、GPSが使えない時など、例えば、「○○岳がコンパスで何度に見えます」というだけで、その線上をヘリコプターが捜索しますし、さらに「距離は○○岳から何kmです」と言えば遭難位置がほぼ特定できます。

もし、高度計を持っていれば、「標高○○mの地点です」と言えますので、なおいいですね。

情報が多いほど発見は容易になり迅速な救助が可能になるでしょう。

豆知識

地形図上での距離の計測について。

1/25000地形図では1cmは250mです。

今回の説明で使っているようなコンパス(オリエンテーリング用コンパスと言います)があれば距離尺や定規がついているので、距離の計測も楽にできます。

簡便法として自分の指の幅などを覚えておくのも便利です。

私の場合、親指の幅が2cmあり、地形図上では500mです。また、人刺指と小指の間は10cmで地形図上では2.5kmです。

地形図を見て距離をぱぱっと確認するのにけっこう役立ちます。

方位角を知る簡便法について

地形図の使用法とは直接関係ありませんが、コンパスを使わずに角度を知る方法として、こぶしを握り、腕をいっぱいに伸ばした時のこぶしの横幅はほとんどの人が約10°です。

片手でグーを握り、体の真正面に突き出し、こぶしの幅を9つ分、水平に移動して下さい。

90°真横に来るはずです。

知っていれば何かの役に立つかも知れません。

余談ですが、私はこの方法を使ってよく太陽があと何時間で沈んでしまうのか測ったりします。

太陽も星も1時間に15°動きます。

季節にもよりますが、太陽と地平線がこぶしを縦にして3個分ならあと2時間~3時間以内で日没なのがわかります。

 

以上、コンパスと地形図の使い方を説明してきましたが、

ベースに読図能力があって、コンパスが使えて、更に高度計があればもっと正確に現在地が出せることは言うまでもありません。

なるべく高度計も合わせて装備した方が良いと思います。

看板(下)



  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



カテゴリー