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元山岳部部長の登山講座

スノーシューのビンディングが壊れた!

先日登山中に、スノーシューのビンディング(バインディング)のウレタン部分が経年劣化でバラバラに崩壊してしまいました。

今回はビンディングの破損状況と応急処置、交換や修理について考察していきます。




登山中、ビンディングがバラバラに

このスノーシューは14年前(平成18年、2006年)に購入した、「MSRライトニング」です。


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2年前にベルト(ストラップ)が経年劣化で切れてしまったため、ベルトを交換して使用していました。

スノーシューのベルト

ベルト交換したスノーシュー

交換したベルトは純正品ではなく、ホームセンターで買った荷締め用ベルトを代用しました。

(詳細についてはスノーシューのベルト交換~代用品を試す!」「スノーシューのベルトが切れたら」を読んでみて下さい。)

ところが、ベルト交換してから2年目の今年の2月、樽前山を登山中に突然ビンディングのウレタン部分が切れてしまい、細引きや荷締め用ベルトで応急処置して登山を続けたのですが、その後もウレタンの破損は続き、ビンディングがバラバラに崩壊してしまったのです。

出発前に、自宅で装備品を準備している時に、ビンディングのウレタン部分が去年より硬くなったような気がしていたのですが、ひびなどはありませんでした。

本当はこの時に登山靴に一度装着してみて強度を点検していれば、ビンディングの破損を予見出来ていたのではないかと思います。 

下山後のスノーシュー。ビンディングのウレタンがバラバラ



とりあえず応急処置して登山続行

いざ出発。

ビンディングのウレタン部分が崩壊しましたが、ビンディングの土台は丈夫な金属製ですので、登山靴とビンディングを固定さえ出来れば、なんとか歩くことが可能です。

撤退を考えましたが、折角来たので使えそうなものを使用して靴に固定してみます。

ベルトは純正品ではなく、長めの荷締め用ベルトを使っていたので、まずはこの荷締め用ベルトで登山靴とビンディングを固定してみます。

荷締め用ベルトで固定してみる。

しかし、歩いているうちにビンディングの崩壊が徐々に進んで緩んできました。

荷締め用ベルトに加え、細引きでしっかり固定すると、下山まで何とか耐えることができました。

細引きで固定。

下山後にビンディングの破損状況を確認してみます。

ウレタン部分が跡形もなく崩壊している。

黄色く変色している。

ウレタン部分はバラバラで、原形をを留めていません。

ビンディングの土台の金具だけは破損もなくしっかりしています。

劣化したウレタンは一度破損が始まると一気に崩壊してしまうことがわかります。

 

ビンディングの寿命は10年程度

このスノーシューの使用履歴ですが、

  • 14年前に購入→毎年概ね3~8回使用→2年前にベルト破損、交換→今年ビンディング破損

ということで、筆者の使用環境では、ベルトの寿命は12年、ビンディングの寿命は14年という結果でした。

結論から言うと、使用環境や保管の状態にもよりますが、購入から10年を超えると、ベルトもビンディングもいつ寿命が来てもおかなくないということがわかりました。

ベルトが経年劣化で切れたら、間もなくビンディングも寿命が来てしまうので、安全を考えればベルトが切れたタイミングでビンディング交換を検討するのが良いと思います。


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交換用ビンディングを買わず、壊れたビンディングを改造して使用できるのか?

スノーシュー本体はまだ十分な強度を保っているので、ビンディングを交換すれば、次の10年間は問題なく使えそうです。

しかし、その前に、壊れたビンディングはどうせ捨てる運命ですので、ダメもとでビンディングを加工して再利用できるかどうか挑戦してみることにします。

ビンディングは金属製の土台にウレタンパーツが固定され、ウレタンパーツにベルトが取り付けられています。

金属製の土台は破損していませんので、この土台を加工して登山靴に取り付けられるかどうかやってみることにします。

ビンディングは、左右2本のピン(クレビスピン)で止まっています。

クレビスピンは、ピン、ワッシャー、リングの3つのパーツで出来ていますが、マイナスドライバーやラジオペンチなどを使って、リングを取り外せばピンは簡単に抜けます。

クレビスピン。リングで止まっている

クレビスピン(ピン、ワッシャー、リング)

ビンディングを取り外す。

ウレタンパーツはリベットで固定されているので、電動ドリルでリベットを取り外します。

ドリルでリベットを外す。

すべてのリベットが外れた。

このリベットの穴にロープ(6mm)を通して、登山靴に固定したいのですが、穴の径が5mmと小さいので、電動ドリルで穴を広げます。

穴をあまり広げ過ぎると、強度が心配です。

6mmのロープを通すので、穴の径は8mm程度が良いのですが、ドリルの刃が10mmしかなかったので、穴は10mmにしました。

金属製の土台は適度な厚みと強度があるので、10mmくらいまでなら何とか大丈夫そうです。

10mmのドリルで穴を広げる。

ヤスリでバリを取り、角を滑らかに。

穴は10mmになった。強度はさほど問題なさそう。

ビンディングをスノーシューに取り付けます。

穴を加工後、ビンディングを復旧。

この穴に、6mmのポリエステルロープを通して登山靴に固定するのですが、固定の仕方は、昔のわかんの縛り方をヒントにすれば何とかなりそうです。

わかんの結び方

わかんの結び方の一例。

ロープはビンディングの穴との摩擦で切れる可能性があるので、擦れる部分にビニールテープなどを巻くか、ビニールホースをロープに通して擦れ当てをすることにします。

ビニールホースで擦れ当てをする。

ロープは3本に分けてビンディングに通してみました。

ビンディングにロープをセットする。

縛り方は幾通りもありますが、今回は、まず真ん中のロープを蝶結びなどで縛り、次に先端のロープでつま先を一旦締めてから、かかとのロープの輪に通して締め上げ、最後は蝶結びで縛りました。

真ん中を縛り・・

前のロープを締め、後ろのロープの輪に通して絞る。

とりあえずはガタつきもなく、意外にしっかりと固定出来ています。

後は、実際の雪山で使用してみて、不具合がないかどうかを確認して、良ければ実戦投入、ダメなら交換用ビンディングを購入することになります。



改造スノーシューを雪山で使用してみる

改造したスノーシューは、前回と同じ樽前山で使用してみました。

樽前山でスノーシューのテスト。

登山口から往復約6時間の行程をスノーシューだけで歩きましたが、途中で若干のロープの緩みを感じたので、1回だけロープを締め直した以外は、問題なく使用できました。

本物のビンディングと比較すると、本物のビンディングはブーツが遊ばないよう、ソールが接する部分のウレタンにイボイボが付いていますので、一度ベルトを締めるとブーツがずれることはありませんが、改造ビンディングは、平らなビンディングにロープを取り付けただけなので、ロープをきつく締めてもブーツに若干の遊びが出来ます。

本物のビンディングに付いているイボイボ。

改造ビンディング。ブーツに遊びが出来る。

上の写真はビンディングとブーツに遊びが出来ている状況ですが、ブーツが左に1cm程度ずれています。

この遊びが、歩きにどう影響するのかが実験のポイントです。

まずは平地でのテストですが、ブーツの遊びはまったく気にならず、何ら問題なく使用出来ました。

平地でのテスト。使用感は良好。

次に、斜面でのテストです。

MSRスノーシューのライトニングシリーズは斜面でのフリクションが非常に高いことで知られており、アイゼンが必要な場面でも少々の斜面ならスノーシューを脱がずに歩くことが出来ます。

クラスト斜面などのタイトな状況でも安全に使用できるのかどうかが一番心配でしたが、硬いクラスト斜面を歩いてみた結果、登り、下り、トラバース共にブーツの遊びは特に気になることはなく、歩きに影響は出ませんでした。

テストで登った樽前山東山直下のクラスト斜面。

クラスト斜面でも問題なく使用できた。

今回のビンディング改造の評価は以下のとおりです。

  • 良い点
  • ウレタンを使用していないので経年劣化でいきなり破損する心配がない。
  • ロープなので劣化の状況がわかりやすい。
  • 費用が安い。
  • 悪い点
  • ベルトに比べブーツを固定するのに時間がかかる。
  • ロープなので緩みが出る。
  • ビンディングとブーツに遊びが出来る。
  • ビンディングの加工(穴あけ作業)にやや手間がかかる。

筆者の総合評価では、実用上は一様合格点だと思います。

斜面など、危険箇所を通過する前に緩みの状態を点検するなどすれば、問題なく使用出来ますが、ブーツの遊びが気になる場合やロープの扱いが苦手な場合には、純正品のビンディングへの交換ということになると思います。

今回は交換用ビンディングは買わず、しばらくはこれで頑張ってみようと思います。






プロフィール

フリーライター。元船員、航海士。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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