27Feb

冬山のテント生活のコツ。冬山用テントと竹ペグ
冬山でのテント生活は夏山と違い、注意しなければならない点がいくつかあります。
冬の山中で、雪と氷と寒さをどう凌いで行くのか?冬山でのテント生活あれこれについて説明していきます。
今回は冬山用のテントと雪上で使うペグについて説明します。
冬山用のテントとは
基本的に冬山専用テントというものはありません。
冬山でテントを使用する場合、オールシーズンテント(冬用外張りや冬用内張りなどがオプション設定してあるテント)を使用するか、夏山に使用しているテントに冬用外張りや冬用内張りなどを着けて、テントの壁を二重にし、防寒性を高めて冬山で使用します。
冬用外張りというのは、例えるなら夏用のフライシートの裾が長いもので、裾はフライシートのようにテントの四つ角に連結して、四辺にペグを打つのではなく、地面まである長い裾の上に雪を乗せて二重壁の間の密閉を良くするものです。(写真①参照)
①冬用外張りの例~エスパース スノーフライソロ(グレーの裾部分に雪を乗せて固定する)
一方、冬用内張りはテントの中に蚊帳を吊るように薄いテントをもう1枚張って、二重壁にするものです。(写真②参照)
②冬用内張りの例~エスパース ソロウインター内張り付(テントの中に見える白いやつが内張り)
外張りタイプと内張りタイプを比較すると、テントの設営撤収は、内張りタイプは内張りを外さずに設営撤収できるのもが多いので、設営がスピーディーに行えます。
しかし、テントの内張りをはずして夏山で使用しようとすると、テント本体の入口が吹き流しタイプなので出入りがやや面倒なのと、入口の虫網がないなど、夏山ではやや不便さを感じることもあるでしょう。
外張りタイプは設営撤収のときに、外張りをかけたり外したりする分、手間がかかり、特に強風下での設営撤収は内張りタイプより苦労します。
しかしテント本体の入口がファスナー式で、虫網もついているので夏山では違和感なく使用できます。
どちらが良いとは言えませんが、夏山重視なら外張りタイプ、冬山重視なら内張りタイプのテントが便利だと思います。
なお、テントの材質には通常素材(ナイロン)とテント内の湿気を外に逃がすことができる透湿素材があります。
雪上にテントを張るためのペグとは
・竹ペグ
テントの設営において、夏山と冬山での最大の違いはテントを固定するペグです。
夏用の短いペグを雪に刺しても効きません。
30cm以上もある長いペグを使用するという方法もありますが、装備が重くなります。
雪上用のペグは、通称「竹ペグ」というものを自作して使います。
竹ペグは20cmくらいの竹や木の板を張り綱と連結し、竹ペグを横に寝かせた状態で雪の中に埋める方法が一般的です。
竹ペグは、写真③のように1本で作ったのものや、写真④のように2本の竹ベラを十字にクロスして作ったものなどがあり、十字型の方が抜けずらいですが、1本で作ったものでも抜けてしまうことはまずありません。
③自作した「竹ペグ」。軽い材質の木で作製し細引きを結んだ
④十字型竹ペグの例

図では竹ペグとステー(張り綱)の中間にU字の部品を使用しているがこの部分は細引きでも良い(出典:大修館書店 川崎隆章著 登山教室)
竹ペグを埋める深さですが、そんなに深く埋める必要はありません。15cmか20cmも埋めれば十分な強度が得られます。
テント撤収の時には踏み固めた竹ペグの周りが氷化してしまい、スコップやピッケルで氷を砕いてやっと竹ペグを救出するということはしょっちゅうありますので、あんまり深く埋めてはいけません。
夏用のペグを横向きにして埋めてもそれなりに効きますが、細い棒状の夏用ペグは表面積がないので引っ張ると抜けてくる場合があります。
なので、面積のある竹や木のペグを横向きにして埋めるのです。(挿絵⑤参照)
⑤竹ペグ使用イメージ
竹ペグを埋める時は、張り綱を直接巻きつけるのではなく、ペグが救出不可能になった場合を考えて、あらかじめ竹ペグに30cmくらいの細引きを付けておきます。(写真③参照)
細引きの取り付け方は竹ペグの中央にドリルで穴を開けて細引きを通して結ぶ方法や、穴を開けず竹ペグに直接細引きを結ぶ方法などがあり、どちらでも構いませんが、ロープワークが得意な人なら竹ペグに直接細引きを結ぶ方が、加工する手間もなく、穴を開けない分、竹ペグの強度もやや強くなると思います。
竹ペグに直接細引きを結ぶ場合の結び方ですが、特に決まりはありませんが、細引きが竹ペグからすっぽ抜けないような結び方が良いでしょう。
例えば「巻き結び(クラブヒッチ、インクノットとも言います)」は結んだ箇所が、ずれにくい結び方の代表選手です。
例では、写真⑥のような「巻き結び」でしっかり縛ってすっぽ抜けないようにしたあと、写真⑦のように「本結び(真結び、横結び、固結び、リーフノットとも言います)」で解けないようにしています。ロープワークが得意な人は「本結び」より、「かきね結び(おとこ結び)」などの方がベターでしょう。
⑥巻き結び
⑦巻き結びのあと、本結び
竹ペグを雪に埋めたら、写真⑧のように、竹ペグにつけた細引きをテントの張り綱に通して、もやい結びなどで結びます。(結び方は写真⑩の「もやい結び」に代表される、しっかり結べて、かつ、力がかかっても結び目が硬くならず解きやすい方法で結びます)
あるいは、写真⑨のように、竹ペグに付けた細引きに輪を作っておいて、輪とテントの張り綱を小さめのカラビナで連結しても良いでしょう。
結び目が凍って解けなくなる可能性を考えるとカラビナで連結した方が有利でしょう。
以上のように、竹ペグに細引きを付けておけば、竹ペグが凍って抜けなくなっても、竹ペグと細引きを放棄してテントを撤収することができます。
⑧細引きと張り綱を直接結ぶ方法
⑨細引きと張り綱をカラビナでつなぐ方法
⑩もやい結び(ブーリン結び、ボーラインノットとも言います)
なお、近年、登山者の増加によって登山者が多い一部の山域では竹ぺグの放棄が多すぎて問題化しているところもあります。
当たり前ですが、放棄はやむを得ない場合にのみ行います。
・ペグの代用
竹ペグを使用しないで、ピッケルやストックを雪に刺しても張り綱を固定することができます。
ピッケルは30cmくらい雪に刺せば十分です。
ストックを使用する場合はグリップの方を雪に30cmくらい埋めます。
撤収の時に埋めた場所が氷化してると、ピッケルならすぐに抜けますが、ストックはスコップで掘らなければ抜けません。
なので、ストックは先端の方(バスケットがついている方)を埋めるのではなくグリップの方を埋めます。
先端の方を埋めるとバスケットが氷に食い込み、回収困難になることがあるので注意して下さい。
また、テントの近くに立ち木があれば、張り綱を木に結ぶか、細引きやスリング(細いロープを輪にしたもの)を木に結んで、カラビナで張り綱と連結しても良いでしょう。
次回「雪上にテントを張る」では雪上でのテントの設営について、さらに詳しく説明していきます。
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