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元山岳部部長の登山講座

登山のためのトレーニング方法(後編)

登山のためのトレーニング方法(後編)

今回はランニングや筋トレなど、登山のための具体的なトレーニング方法について説明をしていきます。

登山のためのトレーニング方法(前編)はこちらから)




筋トレ方法~足腰のトレーニングは心肺能力も高める

・普段から階段を使う

心肺能力を高めるのには、下半身の運動が必須です。

体の中でも下半身は筋肉の量が多く、血液がたくさん循環しています。

つまり、下半身の筋肉を使うということはたくさんの血液を足に送らなければなりませんので、心臓がたくさん動くから、ばくばくするのです。

このように、下半身を使ったトレーニングは足腰の筋力強化と心肺機能を高めるというふたつの効果が得られるのです。

トレーニング方法には色々ありますが、トレーニング以前に、まず日常生活の心得としてエレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使うということから始めます。

「山登りをする者は普段から階段を使う」を常識化してください。

そして、できれば登りも下りも1段ぬかしをすると更に効果的です。

1段ぬかしができない状況なら、階段は小走りするようにして、下半身に負荷をかけます。

階段の登り降りは、臀部、太腿、ふくらはぎの筋力強化と腸腰筋(インナーマッスル)の強化になり、足腰の強化だけではなく、歩行時のバランス強化にもなります。

次に、下半身と心肺機能の強化の具体的なトレーニング方法を何種類か説明します。

・ランニング

一番わかりやすいのが、ランニングです。ランニングはすべての運動の基本です。

ランニングは基本的にゆっくりペースで長時間(30分~1時間程度)が適しています。

登山中の心拍数は140回/分を超えない程度を保って歩行するのが基本なので、ランニングも基本的にこの心拍数に合わせます。

また、登山の平均的なピッチ(休憩から次の休憩までの歩行時間)は30分から1時間程度なので、心拍数140回/分程度で30分~1時間走ると、登山の1ピッチを再現できるので、登山のイメージをしやすくなります。

なお、ランニングに慣れていない人がいきなりアスファルトの上を長時間走ると足首などの関節を痛めることがあります。

ランニング時間は徐々に増やすようにし、ランニングシューズはクッション性の良いものを履くなど怪我のないよう工夫して下さい。

ランニングはゆっくりペースで行いますが、ゆっくりペースのランニングばかりでは足や臀部の筋力強化が不足します。

ランニング中に、時折数十メートルの短距離ダッシュ(電柱と電柱の間など)を加えたり、坂道があれば、坂道ダッシュなどを加えることで筋力強化の不足を補うことができます。

長い坂道や神社の階段なんかを利用すると良いトレーニングになります。

・踏み台昇降

天気が悪く、ランニングができない日には、自宅でも下半身強化のトレーニングができます。

踏み台昇降は、家の階段か、どっしりした踏み台などの段差を利用して行いますが、登山中の運動とほぼ同じ状況が再現されますので、非常に効果的でバランスのよいトレーニング方法です。

踏み台昇降を行う場合、できればザックを背負って行うといい感じの負荷になります。

何も背負わないで行うと、けっこう長い時間行っても負荷が弱いと感じる人もいるでしょう。

自宅でのトレーニングはどうしても飽きがきてしまうので、延々と室内で踏み台昇降を行うことは精神的につらいものがあります。

ザックの重さや登り降りのペースを調整して、心拍数が140回/分程度になるようにして20~30分程度行えれば十分だと思います。

・スクワット

スクワットは主に太腿の前面の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えます。

登山では登りはもちろん、下山での長い下りではこの筋肉を酷使します。

ランニングだけでは十分な太腿の筋力はつきづらいので、1日30回~50回程度でも良いので、スクワットを行うと効果的です。

スクワットは完全にしゃがみ込むようなやり方を長年続けると、膝関節の故障を起こしますので、完全にじゃがむのではなく、適度に膝を曲げる程度にしましょう。



・中臀筋を鍛える運動

中臀筋とはお尻の両サイドにある筋肉です。

この筋肉は短時間の歩行ではダメージがわかりませんが、登山のような長時間の歩行ではこの筋肉が弱いと股関節の外側が痛くなってきます。

長時間歩行でいったん痛み出すとかなりの苦痛を伴いますので、この筋肉をしっかり鍛えておきましょう。

簡単なトレーニング方法ですが、ボーリングのボールを投げたあとの片足立ちのフォームを思い出して下さい。

このフォームで立っていると、中臀筋が疲れてきます。

この姿勢を利用してトレーニングをします。

壁などにつかまって、両足立ちからゆっくりとボーリングを投げ終わったあとの片足立ちの姿勢に移行し、もとの両足立ちにゆっくりと戻ります。

地面についている方の足は、できるだけ深く曲げ、姿勢を低くするほど負荷がかかります。

これを片足ずつ10回~20回行い、3セットほど行います。

・カーフレイズ(底屈運動)

登山中は、つま先立ちをしたり、跳んだり、着地したりする動作を繰り返します。

この時にふくらはぎ(下腿三頭筋と脛の筋肉(前脛骨筋)をよく使います。

沢登りをする人は特にこの筋肉を酷使します。

この筋肉もランニングだけではつきづらいので、カーフレイズ(底屈運動)をして筋力アップしておきましょう。

カーフレイズは壁などに手を着き、つま先立ちをしながらかかとを上下動する運動です。

100回×2セットを目安に行います。

負荷が弱い時は片足ずつ50回×2セットでも良いでしょう。



筋トレ方法~上半身のトレーニング

・腕立て伏せ

登山中は木や岩につかまる動作がありますので、上半身を鍛えておく必要があります。

腕立て伏せは肩の筋肉(三角筋)、上腕の筋肉(上腕三頭筋)、胸の筋肉(大胸筋)、腹筋、背筋などが鍛えられます。

腕立て伏せの負荷は、個人差が大きいので何回とはいえませんが、目安は6割くらいの力でできる回数を3~5セット行うと良いでしょう。

また、腕立て伏せの時、腕の幅を広くするのと狭くするのとでは使う筋肉の部位が変わります。

腕の幅を変えながら、腕立て伏せを行うことで、バランスよく腕を鍛えることができます。

・体幹部(腹筋、背筋)のトレーニング

ザックが重たい場合や長時間の山行時に腰や背筋が痛くなることがあります。

これは体幹部(腹筋や背筋とその内側の筋肉)の筋力が不足していると考えられます。

体幹部を鍛える方法は、一般的な腹筋運動、背筋運動でも構いませんが、優れた強化方法のひとつに、「プランク」(両肘をついたまま腕立て伏せの姿勢を保つ)という運動があります。

プランク運動

プランクは腹筋、背筋とその内側にあるインナーマッスルを同時に鍛える効果があります。

負荷は30秒×1セットくらいから始めますが、できなければ10秒程度から始めてもかまいません。

30秒できるようになったら、徐々にセット数を増やし、楽に3セットできるよう目指します。

プランク運動について詳しくは「登山と腰痛~体幹トレーニングで腰痛を治す!」に書きましたので興味のある方は読んでみて下さい。

腰痛防止のためにも、体幹部は普段から強化しておく必要があります。

・握力を強化する運動

登山では最低、鉄棒にぶら下がれる程度の握力が必要です。

できれば片手でぶら下がれるだけの握力が望ましいです。

トレーニング方法ですが、鉄棒やぶら下がれる場所があれば、両手でぶら下がります。

これも個人差が大きいと思いますが、両手で30秒~1分以上は耐えれるくらいの握力が望ましいと思います。

片手なら5秒~10秒ぶら下がることができれば、十分だと思います。

ぶら下がれる場所がない場合は、腕がだるくなる程度にグーパー運動を行う方法、柔らかいゴムボールなどを何度も握る方法、ダンベルを持っていれば、ダンベル運動をしているだけでも握力強化になります。

通勤、通学に自転車を使用している人は、自転車に乗ること自体が握力強化になっています。

握力強化のやり方は身近なところにありますので工夫してみて下さい。

・バービー運動

バービー運動は立った姿勢から腕立て伏せの姿勢になり、再び立ちあがることを繰り返す運動です。

この運動はスクワットと腕立て伏せの両方の要素をもっていて、心肺への負荷も大きい運動であり、家の中でできる、登山のトレーニングとしては非常に優れたトレーニング法です。

特に、急斜面での三点確保の場面が多い山行を控えているときのトレーニングとしては、この運動は最適です。

バービー運動は、心拍数がすぐに上がりますので、ゆっくり行い、はじめは20~30回を2セット、慣れてきたら50回×2セット、さらに100回×2セットと負荷を増やしていきましょう。

 

まとめ

登山のためのトレーニングは、出来るだけ間をおかずに登山をすること、

できなければ、坂道や長い階段を利用してランニングをすること、

ランニングができなければ、踏み台昇降やバービー運動を行うこと、

柔軟体操、ストレッチ、ヨガ運動など行って柔軟性を保つこと、

補強運動として、スクワット、中臀筋強化、腕立て伏せ、握力強化、腹筋、背筋運動などを行うことです。

それぞれ工夫しながら登山のためのバランスの良い体づくりを目指しましょう。



プロフィール

フリーライター。元船員、航海士。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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