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ファイントラックドライレイヤー。高い割に短い寿命

ファイントラックドライレイヤー。高い割に短い寿命

ファイントラックから出ているドライレイヤーは、生地の撥水効果によって汗が生地に留まるのを防止し、汗をかいても肌はさらりとするよう工夫されています。

すなわち、ファイントラックドライレイヤーの命は「撥水効果」にあります。

生地が持っている撥水効果が低下すると汗濡れを感じるようになってしまいます。

撥水効果が落ちないよう普段からメンテナンスに気をつけなければなりませんが、いくらメンテナンスに気をつけていても経年使用で撥水効果が低下すると、やがて寿命を迎えます。

今回はファイントラックドライレイヤーのメンテナンスや寿命についてのお話です。




ファイントラックドライレイヤーとは

ファイントラックのドライレイヤー「スキンメッシュ」

ドライレイヤーとは、ベースレイヤー(肌着)の下に着ることで、汗を肌に残さず汗冷えを防止してくれるというもので、近年、登山などの汗冷え対策として注目されています。

ファイントラックドライレイヤーの生地には撥水効果があり、かいた汗はベースレイヤーが吸い上げたあと、その撥水作用によって汗がドライレイヤーに逆流するのを防止しています。

出典:ファイントラックスキンメッシュ公式HP

すなわち、汗が吸い上げられたあとのドライレイヤーはさらりとしていますので、多量の汗が肌に直接触れることがなく、汗冷えを防止してくれるというものです。

ファイントラックドライレイヤーの命は「撥水効果」にありますので、撥水効果が落ちないようメンテナンスに気をつけることになります。(ファイントラックドライレイヤーを着用した感想については「登山の汗冷え対策。ファイントラックのレビュー」を読んでみて下さい)

※令和2年(2020年)現在、スキンメッシュは、後継モデルである「ドライレイヤーベーシック」に変更されています。

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ファイントラックドライレイヤーのメンテナンス

ファイントラックドライレイヤーは撥水効果が落ちないよう洗濯方法に気をつけなければいけません。

正しいメンテナンスの方法については以下のとおりです。

洗濯方法

ファイントラックの公式HPによれば、洗濯洗剤については柔軟剤や漂白剤などの成分を取り除いた「オールウオッシュ」を推奨しています。

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また、市販の洗剤を使用する場合については、「液体の洗濯洗剤でできるかぎり柔軟成分などの入っていないもの」としています。

柔軟成分や漂白成分が入っていない液体洗濯洗剤といえば、ゴアテックス専用洗剤でもある「ニクワックステックウオッシュ」「グランジャーズパフォーマンスウオッシュ」「モンベルO.D.メンテナンス ベースクリーナー」などがあり、市販洗剤では「サラヤarau」「ミヨシ無添加衣類のせっけん」「花王エマール」「ナノックスワン」「アタックZERO」などがあります。(柔軟成分や漂白成分が入っていない液体洗濯洗剤について、詳しくは「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(専用洗剤編)」「ゴアテックスに使用できる洗剤は?(市販洗剤編)」を読んでみて下さい)

メーカーでは下記の要領で洗濯するよう説明しています。

  • 洗濯機の場合
  • 洗濯などで強くねじれたりすると、糸切れやマークが剥がれる原因となる。
  • ねじれやコード類の巻き込み・引っ掛かり防止、表生地の保護のために洗濯ネットを使用する。
  • 洗濯洗剤に記載された洗濯方法(手洗いコース、ウールコースなど)に従わず、標準コースを指定する。
  • 洗剤や柔軟成分などが残留すると機能低下の原因となる。洗剤や柔軟成分の残留を防ぐため、すすぎを1回プラスする。
  • すすぎは40°C程度のぬるま湯が効果的。
  • 手洗いの場合
  • 洗濯洗剤無しでの水洗いだけでは脂や汚れを落とすことは困難で機能低下の原因となる。洗濯洗剤の使用をすすめる。
  • 手洗いの場合、水の量が少ないため洗剤の量が少量であっても適切な濃度よりも濃くなることがある。
  • 洗濯洗剤に記載された適切な濃度になるように、たっぷりの水に控えめの量の洗濯洗剤を入れて調整する。
  • 揉み洗いは避けて押し洗いで行う。糸切れやマークが剥がれる原因となるので強く絞らない。
  • 洗剤や柔軟成分などが残留すると機能低下の原因となる。洗剤や柔軟成分の残留を防ぐため、すすぎを繰り返し十分に行う。
  • すすぎは40°C程度のぬるま湯が効果的。

それでも撥水しなくなったら

メーカー推奨の洗濯方法で洗濯を行っていても、経年使用により徐々に撥水効果が落ちると汗冷えを感じるようになります。

このような場合の対処法としてメーカーでは次のように説明しています。

  • 撥水のチェックと回復方法
  • 撥水チェックには、水圧を弱くしてシャワーをかけてみる。水を弾くようなら問題なし。水が広がってしまうようなら、下記の方法で撥水力を回復させる。
  • 商品の撥水力が弱くなった場合は、アイロンを低温と中温の境界付近に(110°C〜120°C)セットして、生地に圧力を掛けず軽くゆっくり滑らせるようにアイロン掛けすると初期に近い撥水力が復元できる。
  • 洗濯表示はアイロン不可の表示になっているが、上記の要領を守れば生地を傷める事はない。
  • 熱により商品は若干縮むことがあるが、一度収縮すると以降の縮みは少なくなる。



実際に使用してみて~寿命は約2年?

筆者はファイントラックドライレイヤー「スキンメッシュ」を購入し、登山用として着用していました。

購入当初はかなり汗をかいても、肌が汗でベタベタにならず非常に快適でした。

しかし、5回~10回程度使用したころで、初期の性能より汗濡れを感じるようになりました。

洗濯方法はメーカーの指示どおりに行い、洗剤は柔軟成分や漂白成分がない市販洗剤を使用していました。(洗濯機使用)

撥水チェックのため、ドライレイヤーに霧吹きをかけてみたところ、あまり水玉ができず、撥水効果がやや落ちていることがわかりました。(撥水チェックは水圧を弱くしたシャワー、霧吹き、どちらでもできます)

新品時の水のはじき方。霧吹きをかけると水玉ができる

原因は皮脂などの汚れが蓄積したものと思い、手洗いでよく汚れを落とし、さらに低温でアイロンをかけたうえで、再度霧吹きをかけてみたところ水玉ができ、撥水効果は蘇りました。

これ以降は、洗濯機を使用せず、毎回手洗いするようにし、汗濡れを感じるようになったらアイロンをかけるといった具合で使用していました。

購入から2年目になり、着用回数が20回を超えたあたりから、アイロンをかけても撥水効果がさほど蘇らなくなってきました。

着用30回目では、アイロンをかけても水玉は全くできず、汗をかいてもドライレイヤーを着ているのかどうか差がわからなくなってきたので、寿命と判断しました。

洗濯後、アイロンをかける

着用30回。アイロンをかけても水玉はもう出来ない

ファイントラックドライレイヤーの寿命は登山に使用した場合、月1~2回の着用で2年程度、着用回数では20~30回程度だと思われます。

登山は、重いザックを背負うなどで生地に負荷をかけますし、長時間汗や皮脂の汚れにさらされるなど使用条件が厳しいので、一般のスポーツに使用した場合より、寿命はやや短くなるのではないかと思います。

撥水剤を使用したら復活できるのか

アイロンをかけても撥水効果がまったく蘇らなくなったドライレイヤーを、ダメもとでゴアテックスなどに使用する撥水剤を使って撥水効果が蘇るのかどうか実験してみました。

使用したのは「ニクワックスダイレクトウオッシュイン」です。

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この撥水剤は漬け置きするタイプで、ゴアテックスウエアやカッパ、ナイロン製品などに使用した場合、非常に強力な撥水効果が得られます。

撥水処理を行ってみる

撥水処理後アイロンをかけ、写真のように霧吹きをかけてみます。

撥水処理前にくらべ、いくらか水玉ができるようになりましたが、半分ぐらいは水がしみ込んでいます。

水玉はできたが、半分はしみ込んでいる

このあと、一度着用しましたが、1回の洗濯で撥水効果はなくなってしまいました。

この方法は少しだけ撥水効果が復活しますが、すぐに撥水効果がなくなりますので頻繁に撥水処理を行わなければならず、あまり良い方法とは言えません。

寿命を迎えたドライレイヤーを復活させる裏技は今のところないようです。

 

ドライレイヤー、競合商品にミレーもあり。どちらが良いかは好みによる。

ファイントラックドライレイヤーは撥水効果がなくなると、汗濡れを感じるようになってしまいます。

撥水効果を維持するためには、正しいメンテナンスが必要になります。

しかし、正しくメンテナンスしていても、使用環境によっては2年程度で寿命が来てしまいますので、その都度、買い替えが必要になります。(価格は5000円程度)

2年程度での買い替え(※後継モデルの寿命は1.5倍に延びている)を行う場合、これをコスパが良いと思うのか悪いと思うかについては、使用する人次第なのですが、競合商品に「ミレードライナミックメッシュ(価格は5000円程度)」があり、こちらは撥水効果で汗濡れを防止するのではなく、編みシャツで汗濡れを防止するというシンプルなもので、普通に洗濯しても、汗濡れ防止効果が2年程度でなくなってしまうということはありません。(筆者は現在ミレーを使用していますが5年目に突入しました。)

ミレードライナミック メッシュ ライトグレー

ファイントラックとミレー、登山の汗冷え対策にどちらを採用するのかは、登山者の好みで分かれると思います。(両者の比較記事について詳しくは「登山の汗冷え。ミレードライナミックとファイントラックを比較!」を読んでみて下さい。)

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追記:令和2年(2020年)現在、この記事で紹介したファイントラックスキンメッシュは後継モデルである「ドライレイヤーベーシック」に変更され、撥水耐久性は従来の1.5倍に延びたとメーカーでは説明しています。(2年で寿命が来る場合は、おおよそ3年に延びたということになる)

また、ファイントラック公式HPによると、撥水性の復活方法については、アイロンをかけても復活しない場合は市販の撥水剤を使用することも可能で、ファイントラックの撥水剤「ウォーターリペル」は他社の撥水剤よりも持続効果が高くおすすめだとしています。

当記事では、市販の撥水剤「ニクワックス」を使用して復元を試みた結果、効果は今ひとつでしたが、ウォーターリペル(2200円、450g入りでスキンメッシュ18枚分撥水できる)の撥水能力と持続時間次第では、買い替えではなく延命という選択肢も出てくるのかも知れません。

ドライレイヤーベーシックの耐久性や、ウォーターリペルの効果の検証については、今後の課題にしたいと思います。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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