山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

menu

元山岳部部長の登山講座

冬山のテント生活のコツ。雪上にテントを張る

冬山のテント生活のコツ。雪上にテントを張る

前回は、冬山に使うテントとペグについて説明しました。(前回記事「冬山のテント生活。冬山用テントと竹ペグ」はこちらです。)

今回は、雪上にテントを張る場合の実際について説明していきます。




テントを張る場所

冬山でテントを張る場所を決める場合、夏山とは違う配慮が必要になります。

テントを設営する場合に、一番気をつけなければならないのは、雪崩の心配です。

雪崩が発生しそうな斜面や、雪崩が発生した場合の雪崩の通り道、上部で発生した雪崩が到達するかもしれないような場所にはテントを張らないようにします。

雪崩に対して比較的安全とされている場所は、稜線上や傾斜の緩い尾根、樹林帯などで、危険な場所としては、太い木が生えてない斜面(毎年のように雪崩が通過するから木が育たない)や沢地形の場所などがあげられます。

安全に十分配慮していても、雪崩は想定外の場所まで到達することがありますので、雪山では雪崩に遭遇する可能性が常にあることを前提に行動しなければなりません。

雪崩の到達範囲については、「高橋の18度法則」というものがあり、自分のいる位置から雪崩の発生点を見上げた時の角度が、18度以上あれば、表層雪崩の末端が到達する可能性があるという研究がありますので、このような場所にも注意をしておく必要があります。

高橋の18度法則。

次に気をつけなければならないのは、強風に吹きさらされるような場所です。

強風は場合によってはテントのポールを折ったり、テントを破ってしまうほどの破壊力があります。

山頂や稜線など、標高の高い場所や風を遮るものがない場所は、風が吹けば吹きさらしになります。

稜線上は雪崩の心配が少ないので安心できる半面、強風に晒される危険もありますので、設営するかどうかは、気象状況を予測しながらになります。

 

テントを設営する

設営場所が決まったら、テントを張る場所の雪を、ある程度踏み固めるか、スコップでテントの床の形よりひと周り大きな、浅い縦穴を掘ります。

掘った縦穴にテントを設営することで、やや防風効果が上がります。

また、設営後に雪の防風壁を積み上げることを考えると、縦穴を掘った雪を防風壁に利用すると作業効率も上がります。

まず、テントの入口が風下を向くように考えて縦穴を掘り始めます。

深さは、深ければ深い方が防風効果は高まりますが、30~50cm程度の深さでも防風効果は感じられます。

雪はブロック状に掘ると、後でそのブロックを防風壁に利用できるので便利です。

縦穴を掘ったら、縦穴の中の雪を踏み固め、テントを組み立てます。

組み立て方は、夏山の時と同じ手順です。

違うのは、前回記事で説明したような「竹ペグ」などの雪上用のペグを使用するところです。

シングルウォールテントや、ダブルウォールテントで冬用内張りを使用する場合なら、テント本体の四隅と張り綱を固定して終了ですが、ダブルウォールテントで冬用外張りを使用する場合は、下の見取り図のように張ります。

まず、本体の四隅を竹ペグで固定したあと、テントの上に外張りをかけ、テントの張り綱を外側に出します。

そして、外張りのすそは、テントを一周するように、雪をかけて固定するのですが、先ほど縦穴を掘る時に出た、雪のブロックなどを利用してすその上に乗せると、スマートにいきます。

すその処理は、雪をかけて踏みつける方法と、雪のブロックを乗せる方法がありますが、前者は雪が氷化しやすく、氷化すると外張りのすそが氷から抜けなくなり、撤収時に慌てることがありますので注意が必要です。

すそにブロックを乗せる方法は、ブロックを手前に煽れば根元から取れますので、撤収はスムーズにいきます。

なお、ブロックが大き過ぎると、重たくて苦労しますので、抱える事ができる程度の適度な大きさが良いでしょう。

外張りのすそを雪で処理したら、竹ペグを使用して張り綱を張ります。

最後に飲料水用のきれいな雪を、テントの入口のすぐ近くにたくさん盛っておきます。

テントの入口付近の雪は、人が出入りすると、すぐに汚れて来ます。

飲料水用のきれいな雪を入口付近に盛っておくことで、炊事の時にいちいち靴を履いてきれいな雪を取りに行かなくてもよくなります。

ピッケル、ストックなど、テントに入れるとテントを破損する可能性のあるものは、テントの脇に突き刺しておき、アイゼンやスノーシューなどは、突き刺したピッケルなどに細引きを使ってぐるぐる巻きにして、風で飛ばないようにしておきます。

スコップは、夜間の降雪でテントが埋められたとしても、すぐに除雪ができるよう、入口のすぐ近くの手が届くところに刺しておきます。

なお、強風時にテントを張る場合は、よく手順を考え、風上から固定していくのが基本になります。

手順を誤れば、強風でテントが飛ばされてしまいますので、十分に気をつけなければなりません。

次回、「テント生活のあれこれ」では、テント生活のコツや注意点などについて説明します。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



カテゴリー