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冬山~雪洞の作り方

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冬山~雪洞の作り方

冬山での楽しみのひとつに雪洞生活があります。

雪洞は子供のころに作ったかまくらのようなもので、大人でもなんとなくうきうきしてしまうものです。

冬山でのテント生活と比較すると、テントは風を防ぐだけで気温は外気と同じになりますのでとても寒く、風が吹けばバタバタとうるさく、眠れなかったりします。

強風下ではポールが折れるなどの危険もあります。

その点、雪洞は雪の中なので室温は0℃付近に保たれるから、テントにくらべるととても温かく感じます。

また、外が強風でも風の音は聞こえず、とても静かです。

広さは自由に決められるのでテント生活のように窮屈ではありません。

雪洞は掘る労力を考えなければ、メリットばかりなのです。

今回は雪洞作りについて説明していきます。

 

雪洞の種類と作る場所

雪洞の形にはたて穴式、横穴式などがありますが、この形でなければならないといった決まりはありません。

何泊もできるよう、しっかりとした雪洞を掘ることもあれば、緊急時、避難するために簡易的なタコつぼのようなたて穴を掘ることもあります。

たて穴式雪洞の例

ここでは、一般的な横穴式の雪洞の作り方について説明します。

横穴式の雪洞を作る場合、積雪が十分な斜面を掘ることになります。

積雪が十分な場所じゃないと、天井が薄くなりますから、雪洞が壊れてしまう危険があります。

横穴式の雪洞は斜度が急な場所ほど早く掘り進められ、斜度が緩いとたくさん掘らなければならないので時間がかかります。

おおむね、40度かそれより急な場所に雪洞を作ることになります。

また、風向きも考えなければなりません。

雪洞の入口から風がもろに吹き込まないような場所を選びます。

注意しなければならないのは、雪崩の通り道になるような場所は避けなければならないということです。

稜線から下がった斜面では稜線の風下側に雪洞を作ると思いますが、上部に雪庇があると雪崩が起こる危険がありますので注意が必要です。

雪洞の中で雪崩に遭ってもスコップで掘れば外に出られると思うかも知れませんが、実際の雪崩事故では雪洞内に勢いよく雪が侵入し窒息したりする事故が起きています。(雪洞での事故については「過去の遭難に学ぶ-札内川十の沢大雪崩事故」を読んでみて下さい)

雪洞を掘る

横穴式雪洞の形は上から見るとL型なります。

最初斜面にまっすぐ掘ったあと、90度方向を変えて掘り進めます。

・雪で濡れないよう完全武装で

雪洞作りは体中が雪まみれにまります。

作業の前に、ヤッケ、オーバーズボン、オーバーミトンを着用し、ヤッケのフードもかぶってフードのゴムもしっかり締めて完全武装します。

雪洞作りには下の写真のような冬山用のスノースコップを用意します。

スノースコップは登山用品店に売っていますが、アルミの角スコップの柄を短く加工したものでも十分です。

市販のアルミスコップを短く加工したもの(上)とスノースコップ(下)

・入口部分と廊下を掘る

まず、斜面に対して真っすぐに掘っていきます。

掘り方はスコップで雪を四角く切り出すように掘るのが効率が良い掘り方です。

はじめはどんどん掘り進み、足元がある程度平らになってきたら入口部分を作ります。

入口があんまり広いと風がたくさん入ってきますし、狭すぎると出入りが大変ですので、中腰でやっと通れるくらいの大きさにします。

ここからは、膝をついて低い姿勢での作業になります。

はじめの内は、掘った雪は斜面にどんどん捨てていきますが、深く掘り進めていくと掘った雪が自分の後ろ側にたまって、出られなくなりますので、時々雪洞の外に廃雪をしながら掘り進めることになります。

廃雪はスコップで行うのは大変なので、ツエルトやシート類があればその上に掘った雪を積み上げ、ある程度たまったらシートを引きずって雪洞の外に廃雪するのが効率の良いやり方です。

2名以上いれば、掘る作業と廃雪作業を分担して行いますが、単独行だと全部ひとりでやらなければならず、労力は2倍になります。

ある程度入口を掘り進んだら天井部分を高くするために天井の雪を削ります。

入口は狭くしなければ風が入ってきますが、廊下部分はザックを抱えて中腰で歩ける程度の高さと幅がないと中で移動するのが大変です。

・90度方向転換して廊下と居室を掘る

上から見た図

 

入口の廊下をおおむね2m以上掘ったら右か左か好きな方向に90度方向を変えて掘り進めます。(入口の廊下部分は長い方が外気が入らず温かですが、作業時間との兼ね合いで決めます)

90度に方向を変えてから、さらに2mほど廊下を作ります。

2mほど掘り進んだら、居室部分を作る作業になります。

できれば、居室の床面は廊下の床面より1段高く作るとさらに外の冷気が入り込みにくくなります。

天井の高さは、床に座って頭上に少し余裕がある程度で良いですが、中腰で歩ける程度の高さ(140~150cmくらい)だと、さらに生活しやすくなります。

雪洞の天井は翌朝、落ち込んで下がってくることがありますので、天井は極端に低く作らないよう注意します。

また、天井の雪の厚さはあまり薄いと踏み抜いたりする危険がありますので、薄くても1m、できれば2m以上あると安心です。

居室の大きさは、テントの床面積を参考に考えるとわかりやすく、テントの床面積より一回り大きく作るようにします。

例えば1人で泊るのなら、1人用テントの床面は90cm×210cm程度なので、雪洞は150cm×270cm程度、2人なら2人用テントは130cm×210cm程度なので雪洞は190cm×270cm程度だとゆったりと生活できます。

テント泊は人でぎゅうぎゅう詰めで寝るものですが、雪洞は壁が雪なのでテントより一回り大きめにするわけです。

なお、パーティーが3名以上いてスコップが2つあれば、雪洞を両側から掘っていくと作業スピードが上がります。この場合、完成後、雪洞の片方の入口を雪のブロックでふさぎます。

上から見た図

・仕上げ作業

居室部分が掘り終わったら、居室の天井をドーム型に仕上げます。

ドーム型にすることによって、溶けた雪が床を直撃するのを防止します。

はじめは、スコップで荒削りし、仕上げはコッヘルのふちを使って天井の表面を滑らかにします。

天井が仕上がったら、スコップで壁にロウソク台を作ります。

雪洞内は四面が雪なので、1本のロウソクを灯すだけで乱反射してとても明るく、幻想的な雰囲気になります。

雪洞生活する時にはロウソクやランタンを用意すると良いでしょう。

最後は入口に垂れ幕を設置します。

垂れ幕はツエルトや適当なブルーシートなどを使用します。

垂れ幕は入口の外側に設置する方が作業的には簡単ですが、入口よりやや内側に設置した方が風で飛ばされる危険も少なくなります。

垂れ幕の止め方は様々で、シートの上辺や下辺に雪のブロックを乗せて止める方法、シートを折り返してシートの上辺にストックを通し、暖簾のようにしてストックごと埋める方法などありますが、これと言った完璧な方法はなく、筆者も研究中です。いろいろと工夫してみて下さい。

もし、シートに余裕があれば垂れ幕を入口と廊下の2か所に設置して二重にするとさらに保温効果が上がります。

また、雪洞の入口の周りを廃雪した雪のブロックを利用して防風壁を作るとなお効果的です。

・トイレ問題

雪洞内は意外とにおいがこもります。外が暴風雪のときなどやむを得ない場合以外はトイレは雪洞の外で行うようにします。




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プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



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