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元山岳部部長の登山講座

60年前のわかんを復活させる

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登山装備 昭和 わかん

60年前のわかんを復活させる

以前に「懐かしい昭和の登山装備。わかん、尻あて、ラジウス」で紹介し、現在は飾り物にしている、60年前の「わかん」を現役復帰させます。

少しもったいないような気もしますが、まだ十分な強度があるなら山道具としての役目は終わっていません。

今回は、ビンテージ物の「わかん」復活の話です。



わかんの状態は?

このわかんは、昭和30年代に冬山で活動していた山の先輩が、コクワのつるを使用して自作した完全オリジナルのわかんです。

作製されてから60年が経過しています。

筆者が本格的に登山をはじめた30年前(昭和60年ころ)、このわかんを作った先輩から譲ってもらい、一時期、雪山で使用していました。

アルミ製のわかんに切り替えてからは、部屋の飾り物となり、第二の人生を送っていたものです。

スノーシューが主流となった現在でも、わかんは軽くて、かさばらず、アイゼンを装着したまま着用できるなど、スノーシューにはない特性があります。

アイゼン併用の例。アイゼン併用の場合、爪は上向きにする

わかんの欠点はスノーシューに比べ、浮力がないということなのですが、このわかんは市販のアルミ製のわかんより一回り大きく作られているので、市販品よりも浮力は期待できます。

輪が大きい分浮力が期待できる

 


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和かんじき 立山かんじき (大)

フレーム(コクワ製)と爪(ナラ製)は木製なので、腐食が気になります。

分解して、点検しましたが、木製部分はよく乾燥していて、腐食はまったくありません。

フレームは弾力性もあり、わずかに亜麻仁油の成分が残っているようです。

よく乾燥させて、亜麻仁油を塗り、30年間湿気の少ない部屋で保管していたおかげで、このわかんは現役復帰ができそうです。

 

分解清掃する

木製わかんのベルト部分は、通常、ロープを使用しますが、このわかんは、革ベルトを使用しています。

登山装備 昭和 わかん

製作者(今年90歳)の話では、ナイロン製のロープがなかった時代、凍結防止にたっぷりと保革油をしみ込ませた細い革ベルトを採用したそうです。

この革ベルト、30年間保革油を塗っていなかったせいで、パリパリに割れてしまい、残念ながらお役目を果たしました。この部分は新しいロープに交換です。

フレームを繋いでいるのは針金ではなく、細いロープを巻きつけています。

マニラ麻でできた麻ロープ(通称マニラロープ)のようです。

驚いたことに、この麻ロープ、60年経ってもオイル成分が残っていて、思いっきり引っ張っても切れません。強靭です。

このロープは見た目も味があるので再利用します。

組み立てると隠れてしまう部分ができるので、分解した状態で一度、亜麻仁油を塗布しました。

亜麻仁油は亜麻から抽出した植物油で、木製ピッケルのシャフトやわかんなど、木製品の腐食防止用に昔から使われています。

最近は健康志向で、食用の亜麻仁油がスーパーにならんでいます。

木工用の亜麻仁油の方がお得なので、木工用を買おうとしましたが、近くのホームセンターに置いていなかったので、食用の「日清アマニ油」を使用しました。

木製品への塗布は木工用でも食用でも、成分がほぼ一緒ならどちらでも問題ありません。


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組み立てる

爪を中心に2本のフレームを組み合わせ、麻ロープを固く丁寧に巻きつけます。

麻ロープだけでもフレームの連結は十分なのですが、念のため前後2か所にダブルにした針金を一巻きし、補強します。

取り外した革ベルトの代わりに、8mmのクレモナ(ビニロン)ロープを使用します。

ロープをフレームに3巻きして、巻き結び(クラブヒッチ、インクノット)で止め切ります。これを前後2か所作ります。

最後に、わかんを靴に固定するための長いひも(8mmクレモナロープ)を軽く結んで完成です。

※靴に固定するひもですが、クレモナロープはよく締まりますが、水濡れすると解きにくくなります。水濡れしづらいナイロンロープの方が適しているのかも知れません。

わかんの結び方には、下図のように、あらかじめ、わかんにひもを固定しておく方法と、固定せずに1本で締める方法があります。

ひもを固定しているかどうかの違いはありますが、基本的な締め方はどちらも同じです。

わかんの結び方には、これ以外にも様々な方法がありますが、確実な方法をひとつだけ覚えておけば十分です。

今回は固定式の結び方なのですが、ひもを切るのがもったいないので、上の写真のように、1本のまま前後のロープに軽く結びました。

登山靴に結ぶとこんな感じです。

※実際には爪は下向きで装着します

完成したら、フレーム、爪、麻ロープ部分に亜麻仁油を塗布します。

※亜麻仁油がしみ込んだウエス、新聞紙などを風通しの悪い場所に置いた場合(レジ袋の中に入れて口を閉じる、ゴミ箱の中に積み重ねるなど)、一定条件がそろうと自然発火する可能性があるそうです。十分気を付けましょう。

 

これで、わかんの復活再生完了です。

ビフォー

アフター

見た目は骨董品ですが、良い仕上がりで強度も十分です。

標高900mの低山で試してみましたが、良好な履き心地です。

30年前に使った時とくらべ、まったく違和感はありませんでした。

わかんは金属性が主流ですが、木製のわかんもびっくりするほどの耐久性があるものです。



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プロフィール

フリーライター。元船員。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け30年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。



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