17Jun
懐かしい昭和の登山装備。昔の登山用ゴーグル
冬山登山で強風や吹雪の時にゴーグルを着用しますが、30年以上前に冬山で使用されていたゴーグルは、現在主流になっているスキー用ゴーグルのような形とは違い、競泳用のゴーグルのようにレンズが左右に分かれているタイプが多く見られました。
今回は、昔の登山用ゴーグルを紹介します。
30年前の登山用ゴーグル、バルファルディ
今回紹介するのは、昭和60年(1985年)ころ登山用品専門店で購入した、イタリア製のゴーグル「バルファルディ社 101 SARゴーグル」です。
価格は覚えていませんが、当時高校生だった筆者がお小遣いで購入できたので、数千円程度だったと思います。
外観はアルミ製の本体に丸い突き出たレンズ、脱着可能な鼻ガードと、非常に特徴的な形をしています。
当時、このレトロで不格好な外観を見て、何か冒険心をかき立てられるような思いがしたのを覚えています。
アルミニウムの本体は塗装なし、サイドには曇り防止の通気口が複数あり、「BARUFFALDI」の文字が刻印されています。
レンズの色は真っ黒く見えますが、やや濃いめのブラウンです。
目に当たる部分の緩衝材はスポンジではなく、ゴム製ですので経年劣化はありません。
ゴムバンドは細めのデザインで、いわゆるパンツのゴムのような材質です。
経年劣化で伸びきっていますので、使用するなら交換が必要な状態です。
鼻ガードは革製で、三角形の形をした硬い芯が革の内側に入っています。
鼻ガードの外側には「B」のロゴがあり、内側には「101 SAR Ⅳ」と書いてあります。
ゴーグル本体と鼻ガードとの脱着はスナップボタン式で、簡単に外れます。
昔のゴーグルと今のゴーグル
昭和のころの登山用ゴーグルは上記で紹介したゴーグルのように、レンズが左右に分かれたデザインのものが主流でした。
当時から、現在のようなレンズの大きいスキー用ゴーグルは存在しており、スキー用ゴーグルを冬山登山に使用するのはありでしたが、なぜか登山用ゴーグルと言えばレンズが左右に分かれたタイプのものというイメージがありました。
現在ではレンズが左右に分かれたタイプのゴーグルは姿を消し、登山用もスキー用もほぼ変わらないデザインになりました。
現在出回っているゴーグルは、登山用もスキー用も、形や性能はほぼ変わりませんので、登山用だろうがスキー用だろうが、特に気にすることなく気にいったゴーグルを冬山に使用している登山者が多いと思います。
なぜ、昔のゴーグルはレンズが左右に分かれていたのかについては定かではありませんが、当時はそのようなデザインのゴーグルが主流でした。
今回紹介した、イタリアのバルファルディ社は1930年代にスキー、バイク、登山用のゴーグルブランドとして世界中に知られるようになりました。
1930年代といえば、大戦前ですが、戦前の写真によく見るバイクや飛行機、戦車などに搭乗する人が着用しているゴーグルは、レンズが左右に分かれたデザインのものばかりです。
ゴーグルの用途は、バイク用、飛行機用、登山用、スキー用など多岐に渡りますが、雨、風、雪、砂、異物、寒さなどから目を防護するという目的は一緒なので、バイク用を飛行機に使用しても、登山用をバイクに使用しても、帽子やヘルメットなどの装備品とのマッチングさえ合えば、問題なく使用できる場合が多いと思います。
前述の「バルファルディ101SARゴーグル」を調べてみると、驚いたことに現在でも販売されています。
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楽天 baruffaldi 101 SAR GOGGLE(バルファルディ101サーゴーグル)
ネット上で、バルファルディのページを見ると、主にバイク向けゴーグルの製造メーカーであることを全面に出しています。
しかし、バルファルディ101SARゴーグルを購入した当時、登山用品店では「登山用」として陳列されていました。
まあ、バイク用ゴーグルを登山用に流用しても、紫外線さえしっかりカットしてくれれば、まったく問題ないということだと思いますし、また付属の鼻ガードは、鼻のてっぺんが雪焼けでずる剥けになるのを防止してくれますので、登山者から見れば、雪山専用ゴーグルとしか言いようがありません。
当時の登山技術書「冬山の基礎技術」(雨宮節 著 昭和59年協同出版株式会社発行)の中で、登山に使用するサングラス、ゴーグル、スキー用ゴーグルについて挿絵で示しています。(下の写真参照)
この挿絵でもわかるとおり、やはり当時の登山用ゴーグルの主流はレンズが左右に分かれたタイプだったことがわかります。
下の写真は、当時、社会人山岳会に所属していた筆者の父が、昭和34年(1959年)、仲間と共に冬期の石狩岳に登頂した時のものですが、中央の男性が着けているゴーグルはレンズが左右に分かれたクラシカルなタイプです。
また、筆者が持っている古い雑誌「植村直己の世界」(文藝春秋 昭和61年発行)の記事の中で、登山家の故植村直己氏が昭和40年(1965年)にヒマラヤのゴジュンバカンⅡ峰(7646m)に登頂した時の写真が掲載されていますが、この写真で植村さんはレンズが左右に分かれたタイプのゴーグルを着用しています。
これらは1例にすぎませんが、30年以上前の登山家の写真には、こういうタイプのゴーグルを着用しているものが多く見受けられます。
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現在のゴーグルはレンズが大きくて視界は良好になり、曇り止めヒーター付きの物まで登場するようになりました。
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昔のタイプのゴーグルは何と言っても視界が狭いことが欠点だと思いますが、コンパクトであるという利点もあります。
冬山で日帰り登山をする場合は、天気を見てから入山しますので、吹雪に遭遇する確率は少なくなります。
日帰り登山でも、ゴーグルは持って行きますが出番はほとんどなく、お守り代わりでゴーグルを持って行くのであれば昔のタイプのゴーグルの方がコンパクトでかさばりません。
このバルファルディ101SARゴーグルは、ゴムバンドを交換して日帰りの冬山登山用として復活させようと思います。
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