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元山岳部部長の登山講座

ザック選びの基本2~ザックの種類と選び方

登山とザックの2回目。

前回はザックのルーツやキスリングについて書きました。

今回は登山のザック(リュックサック)の種類と選び方について説明します。




登山用ザックと汎用ザックの違い

ザックには登山に適したもの(登山用ザック)と、通学やお出かけなどでよく使用されるもの(汎用ザック)があります。

しかし、ザックに「登山用」と書いているわけではありませんので、見分けがつきづらいと思います。

登山用品店やスポーツ量販店の登山コーナーで購入すれば、まず間違うことはありませんが、それ以外で購入するときには、登山に適しているのかどうか、よく見極めなければなりません。

登山用ザックとそれ以外の汎用ザックの大きな違いは、生地や背負いバンド、ファスナーなど、登山用のザックは全体に丈夫に作られています。

ザックの重みで縫い目がほころんで来た、枝に引っ掛けて破損した、ファスナーが壊れたでは登山に支障が出ます。

それと、ほとんどの登山用ザックは背中部分に金属製のフレームが仕込んであるか、フレームがなくても分厚くできていて、背中のフィット感を損なわない工夫がされています。

安い汎用ザックは、背中部分が薄くてふにゃふにゃの物が多く、生地は薄く、ファスナーの強度も低いものが多いと言えます。

 

ザックの形は大別して2種類。アタックザック型とデイパック型

現在の出回っているザックはほどんどが縦長タイプのいわゆるアタックザック型です。

ほかに、町でよく見かけるデイパック型などもあります。

登山用ザックにはどちらのタイプもあります。

一般的に日帰り登山用の小型ザックにはデイパック型とアタックザック型の両方がありますが、リッター数の多い大型ザックにはデイパック型はありません。

アタックザック型(左)とデイパック型(右)

 

 

日帰り登山には小型ザック、泊を伴う登山では大型ザック

ザックには大きさ(容積)があります。

日帰り登山には25~40リットル程度のザックが便利です。

このような日帰り登山用の小型ザックを縦走用の大型ザックに対し、「サブザック」と呼んだりします。

夏山の日帰り登山でも万が一の時のために、1泊くらいはビパークできる事を想定するのが基本です。

そうなると、持ち物は、水、食糧、行動食、予備食糧、防寒用のヤッケ、替えのシャツ、フリースやセーター、雨具、ツエルト、ヘッドランプ、ラジオ、携帯電話、予備バッテリー、怪我などの応急用品、細引き(細い雑用ロープ)、小型ナイフ、軍手などになると思います。

これをパッキングすれば、30リッター程度で少し余るくらいになるでしょう。

私は夏山も冬山も同じ小型ザックを兼用しており、40リッターのものを使用しています。

冬は防寒用品、ゴーグル、アイゼンなどの装備も増えるし、ザックの外部にピッケル、スノーシュー、スコップ、ワカンなども装着するのでどうしても大きさが必要になります。

また40リッター程度であれば夏山では山小屋を利用すれば一泊程度の山行にも対応可能です。

(日帰り装備に加え、炊事用品と食糧、シュラフ、エアーマットや銀マットなどが増えます。)

テント泊であれば泊数やテントの大きさにもよりますが、装備にテントが加わるので60リッター程度は必要になると思います。

テント泊の場合、私は70リッターのザックを使用しています。

ルートや行程にもよりますが、70リッターでの単独行では3泊程度の山行でザックの荷物は一杯になります。

ザック3種類



ザックにはサイズ(男性用、女性用)がある

ザックには女性用、男性用がありますが何が違うのでしょうか?

一般的に肩からウエストまでの長さは男性の方が長く、女性の方が短いので、ザックの背負いバンド(ショルダーベルト)上部の付根からヒップベルト(ウエストベルト)までの長さ(背面長と言います)も男性用は長く、女性用は短く出来ています。

「女性用」などの表示がない場合は、ザック同士を並べてみると背面長が明らかに違いますのでわかると思います。

個人差はありますが、男性が女性用のザックを背負うと、ヒップベルトはへその上まで来てしまいますし、女性が男性用のザックを背負うとヒップベルトは骨盤より下の位置に下がってしまいます。

ヒップベルトの適正位置はベルトの幅の中央が骨盤の角に当たる位置とされています。

 

ザックを背負って見る

ザック選びはとにかく背負ってみることが大切です。

自分の登山スタイルに合う大きさ(リッター数)のザックは遠慮せずに売り場にあるものはすべて背負ってみましょう。

大概は軽い詰め物が入れられていて、試せるように陳列されています。

背負ったら、ヒップベルトを骨盤に合わせて止め、ザックが背中にフィットするよう背負いバンドの長さを調整します。

(ベルト類の調整については「ザックの背負い方~ベルト類の調整で快適に」に詳しく書きましたので読んでみて下さい)

登山用として売られているザックはどれも良いものばかりで、ラインナップも多く、とても迷うものです。

背負ってみて、背中、肩、ウエストに一番しっくりくるものをあわてず慎重に選びましょう。

しっくりくる物が見つかったら、あとは使い勝手とデザインで決めることになります。



使い勝手の良いザック~ファスナーの信頼性、ポケットとファスナーの位置

丈夫で滑らかなファスナー

ファスナー

使い勝手の良し悪しで、まず気にしなければならないのは、ファスナーの信頼性です。

開け閉めに引っかかりが多かったり、振動で開いてしまいそうなものは買いません。

ファスナーは丈夫で、開け閉めがスムーズなものが使いやすいと言えます。

ファスナーの開け閉めが渋いと結構、いらり・・とくるものです。

使い勝手の良し悪しが決まる、もうひとつの要素は、ポケットやファスナーの位置です。

ファスナーの位置は商品によって、バリエーションがあります。

例えば、ザックの下部にファスナーがついたもの、サイドにファスナーがついたものはなどは、下の方にパッキングしてある装備が急に必要になった時など、出し入れするのにけっこう便利だったりします。

気にいったものをじっくり選びましょう。

 

軽くてコンパクトな汎用ザック(小型ザック)の使い道

先ほど安い汎用ザックは登山に適さないと書きましたが、軽くて柔らかくてコンパクトな汎用ザックにも使い道があることがあります。

縦走中にザックをデポ(一時的に置いておく)し主稜線からそれたピークへアタックする時や、泊を伴う山行で、キャンプ地から日帰りで頂上アタックするような時は、軽くてコンパクトな小型ザックを持って行くことで、重量軽減につながります。

フレームの入った普通の小型ザックは大型のザックの中にパッキングするには結構かさばりますし、重くなります。

このように軽くてコンパクトな汎用ザックも装備としての使い道はありますが、登山で使う以上、ある程度丈夫なものを選ぶようにします。

参考ですが、私は縦走中に使うサブザックには、下のような軽くて丈夫なザックを使用しています。

※このザックは、極めてシンプルなデザインですが、汎用ザックではなく登山用です。

使用しているコンパクトなサブザック(秀岳荘オリジナル「日高ザック」)

まとめ

ザック選びは、まず、登山スタイルに合ったリッター数のものを選びます。

次に、肩と腰の長さ(背面長)が合うものを選びます。(男性用、女性用など)

最後に使い勝手(ファスナーの信頼性やポケットの位置など)の良いものを選びます。

小型ザックには登山に適さない汎用品もありますので、品物をよく見て、丈夫なものを選ぶようにしましょう。

使用頻度にもよりますが、品質の良い登山用ザックは、一度買うと20年程度は壊れません。

登山の相棒として長く使用することになりますので、慌てずにじっくりと選ぶようにしましょう。

次回はパッキングのコツについて説明したいと思います。




看板(下)



プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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