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元山岳部部長の登山講座

10本爪アイゼンは厳冬期用?購入に注意しよう!

10本爪アイゼンは厳冬期?購入に注意しよう!

アイゼンには、高山などにも対応した一般的なアイゼン(ここでは「本格アイゼン」と呼ぶことにします)と、軽アイゼン(簡易アイゼン)があります。

かつてアイゼンと言えば、4本爪や6本爪アイゼンのことを軽アイゼン、10本爪以上のものを本格アイゼンとして区別していましたが、最近では低山ハイク用の10本爪軽アイゼンが登場し、トレッキングシューズに装着して気軽に雪山を楽しむ登山者も増えました。

今回は初心者がアイゼンを購入する際に気をつけなければならないことについて説明します。




アイゼンの性能は単純に爪の本数だけで決まらない

スポーツ量販店で見たものとは・・

先日、アイゼンを探しにスポーツ量販店のXEBIO某店に行った時、登山コーナーで「おやっ?」と思うことがありました。

アイゼンが陳列してあるコーナーを見ていると、「XEBIO選び方NAVI アイゼンの選び方」と書いてあるボードがありました。

そこには、爪の本数によるアイゼンの違いについて、以下のように説明していました。

「4~5本 低山の積雪・夏の残雪:低山や里山の積雪に備えて準備。携帯に便利で携帯しやすい。」

「6本 低山の積雪~スノーハイキング:スノーハイキングをする・夏の雪渓を登る程度のであれば、6本で十分です。」

「10~12本 厳冬期登山:積雪のある急斜面に適しています。(つま先にツメがあるため)」

ボードの説明は概ね間違ってはいませんが、そのボードのすぐ隣には、トレッキングシューズ用の爪の短い10本爪軽アイゼン(エバニューEBY017)と6本爪軽アイゼン(エバニューEBY015)だけが並んでいて、縦走用の10本爪、12本爪の本格アイゼンはありませんでした。

10本爪軽アイゼン エバニューEBY017

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6本爪軽アイゼン エバニューEBY015

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同じ10本爪でも、本格アイゼンと軽アイゼンがあります。

軽アイゼンの方は冬山の高山や縦走には対応していませんが、売り場の状況からは、軽アイゼンでも10本爪なら厳冬期の本格登山に対応しているかのような説明に見えます。

店員さんにアイゼンの在庫を確認した際、EBY017について、「こちらは、10本爪ですが、軽アイゼンですから、低い山だけにおすすめしています。例えば羊蹄山(1898m)とかを登るのでしたら、本格アイゼンをお取り寄せします。」との補足説明がありました。

どんな道具を買おうと登山は自己責任でやることですが、量販店などではアイゼンに限らず、このように紛らわしい状況に出くわすことがありますので注意が必要です。

 

アイゼンの種類とは

アイゼンは4~6本爪は軽アイゼンといって、主に夏山の硬い雪渓などを想定していますが、最近では、冬山の低山ハイクにも使用する登山者が多くなりました。

8本爪は本格アイゼンと呼ぶのか軽アイゼンと呼ぶのか微妙ですが、例えば8本爪の「カジタックスLXT-8」は縦走にも対応する本格アイゼンです。しかし、8本爪アイゼンの多くは軽アイゼンにカテゴリーされます。※R3.11追記 カジタックスLXT-8は販売が終了してしまいました。

10~12本爪本格アイゼンは冬山の高山、縦走などを想定しています。

12本爪本格アイゼン グリベル G12 EVO ニュークラシック 

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本格アイゼンは、材質や作りが頑丈で爪が長く、アイゼンの前後をつなぐ、金属製のジョイントバーが、基本的には硬くて曲がらない材質のものを使用しています。(ジョイントバーが柔らかいものを使用している場合もあります。)

これに対し、同じ10本爪でも前述のとおり、軽アイゼンにカテゴリーされるものもあり、10本爪軽アイゼンは爪が短くて、ジョイントバーが柔らかいか、可動式なのが特徴です。

ジョイントバーが柔らかいことによって、ソールの柔らかいトレッキングシューズでもフィットして外れにくい構造になっています。

ソールの柔らかい登山靴に、ジョイントバーの硬いアイゼンを装着すると、アイゼンがずれたり、外れる可能性がありますので注意が必要です。(ジョイントバーが硬いアイゼンは、ソールが硬い冬山用登山靴(アルパインブーツ)やオールシーズンブーツ、革製重登山靴などに装着します。)

このように、同じ10本爪でも本格アイゼンと軽アイゼンがありますので注意が必要です。

アイゼンの種類や選び方についての詳しい記事は「冬山とアイゼン~選び方と使い方」を見てみて下さい。



10本爪軽アイゼンで行ける雪山登山は?

10本爪軽アイゼンは、雪山の低山ハイクを想定しており、トレッキングシューズに装着できるようになっています。

雪山登山には冬山用登山靴を履くのが基本ですので、トレッキングシューズで雪山登山をする場合には、一定の注意が必要になります。

トレッキングシューズは防水性があったとしても、防寒性はありませんし、夏山用の靴下でサイズを合わせている場合がほとんどだと思いますので、防寒のために靴下を厚くすると足が窮屈で血行障害を起こしたり、靴ずれを起こす可能性もあります。

また、トレッキングシューズは靴の硬性がありませんので、雪面をキックして足ががりにする歩行(キックステップ)も難しく、硬い斜面では10本爪軽アイゼンをつけた方が安全だと思います。

しかし、10本爪軽アイゼンは爪が短いので、クラスト(氷化)斜面を長時間歩行しなければならない登山には不向きです。

具体的には森林限界以上(木がなくなって、はい松しか生えていないような高度)の登山には使用しないようにします。

軽アイゼンはアイゼンというより、転倒防止用の簡単なスパイクだと思った方が良いでしょう。

 

低山のトレッキングなら山岳用スノーシューが便利

雪山低山のトレッキングでは氷化している場所もありますが、ほとんどが深雪です。

山岳用スノーシューは深雪はもちろん、氷化している斜面においても、軽アイゼンと同じくらいのグリップ力があります。(※平地用スノーシューは爪が少ないのでNGです!山岳用、平地用の違いについて詳しくは「冬山。スノーシューの選び方と使い方」を読んでみて下さい。)

低山のトレッキングのために軽アイゼンを購入するのなら、山岳用スノーシューを履いてしまった方が滑ることもないですし、深雪にはまって苦労することもありません。

雪山低山を楽しむのなら、値段はやや高いですが、山岳用スノーシューの方が実用的だと思います。

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プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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