山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

menu

元山岳部部長の登山講座

沢登りの靴

沢登りの靴

登山靴の解説の5回目。

今回は沢登りの靴について。

(普通の登山靴については前回記事、登山靴の種類に掲載してます。)




沢登りには靴は何を履くのか?

伝統的には地下足袋わらじの組み合わせがあり、現在でもこの組み合わせにかなう物はないのではないかと思います。

このほかに、フエルト地下足袋、沢登りシューズ(ウエルディングシューズ)、スパイク地下足袋などがあります。

どれも沢登りには適していますが、それぞれ特徴があり好みもあると思います。

 

地下足袋とわらじ

まず、地下足袋にわらじ。

ここで言う地下足袋は底が普通のゴムのものを言います。

とび職の職人さんが履いているやつである。

こはぜの枚数によって足首くらいのもの、すねまである長いものなどがあります。

(こはぜとは、合わせ目をとめるための爪形の金具のことです。)

価格は2000円~3000円くらいです。

 

沢登りの場合、足首くらいの短い地下足袋には脛の防護のために脚絆(きゃはん)を併用します。

脛まである長い地下足袋なら脚絆は必要ないかも知れません。

脚絆にも長さがあり、脛の中間付近までのものや、膝下くらいまである長いものもあります。

いずれも、こはぜで止めるタイプが多く出回っています。

そのほか、登山用品店にはネオプレーン素材(ウエットスーツの生地)の脚絆もあります。

これにわらじを着けて沢登りをするのですが、

沢登りといっても、

  • 沢床の砂利や岩
  • 沢から出ている岩
  • 濡れた岩
  • コケのむした岩

などがあり、

河畔林も歩くし、高巻き(前方に滝や函など通過困難な場合、岸にある急な斜面を登って沢の上流にたどりつくこと)などもあり、沢に沿って水の中をじゃぶじゃぶと歩いたり、飛び石しながら歩くだけではないので、沢登りではあらゆる地面の状況でも滑りづらいということが望まれます。

そういう意味では、未だにわらじを超えるものはないと言われています。

ひとつ弱点を言えば、

わらじは消耗品であり、歩いているうちに擦り減ってちぎれてしまうので、必ず予備を何足か用意しなければならないことです。

現在ではわらじは手に入りづらくなっており、購入出来ても1足1500円程度はします。(昔は500円くらいで買えました)


BE-TACKLE  【スレを軽減させる布仕様】日本製 本格的手作りわらじ

私は、まだ安い時代に大量に確保して置いたのを細々使用していますが、今後わらじにこだわるのなら、コスト的に見ると自作するしかないだろうと思います。

既製品か手作りかわかりませんが、荷づくり用のPPロープなどの化学繊維で作られたわらじも山で見かけた事があります。

試したことはありませんが、強度は本物のわらじよりあるのではないかと思います。



スパイク地下足袋

わらじには及びませんが、スパイク地下足袋は万能なフリクションを発揮します。

厚いゴム底に鉄のスパイクがたくさんついています。

あらゆる状況の道でもよく効きます。

耐久性も高く、底がゴツいので少々のことでは足の裏が痛くなりません。

行程や荷の重さ、使用頻度にもよりますが、筆者の経験では沢登りをしても10回程度ならスパイクが完全に破損したり減って使用できなくなることはありません。

問題があるとしたら価格が普通の地下足袋よりやや高い(3000円~5000円)ことと、スパイクが擦り減れば沢では滑って使えなくなるということです。(スパイク地下足袋の使用限界については「沢登り。スパイク地下足袋の使用限界を検証した」を読んでみて下さい)

また、スパイクピンの長さが5mm程度と短いため、スパイクが登山道を荒らすというようなこともありません。

スパイク地下足袋の愛用者はほとんどいませんが、登山用の履物としては優秀であることには間違いありません。

[マルゴ] MARUGO スパイク10枚II型 黒

 

フエルト地下足袋

【 秀岳荘オリジナル 】フェルト付き地下タビ

フエルト地下足袋について。

これは地下足袋の底に厚いフエルトが貼ってあるものです。

わらじに比べると効きはやや劣り、特に高巻きなどのときに、フエルト底に泥が多く付着している状態でつるつるした岩を踏むと大変滑りやすいので注意が必要です。

また、底が分厚くないので足裏に岩や石ころの感触が伝わってくるため、長時間歩いていると段々足の裏が痛くなってきます。

これについては慣れもあるし、歩行技術でも個人差があると思います。

フエルト地下足袋はラインナップがほどんどなく、自分が知る限り、札幌秀岳荘オリジナル(マルゴ製です)以外のものは見たことがありません。

価格は4000円程度です。

耐久性もあり、フエルトがすぐにすり減って数回の沢登りで使えなくなるようなことはありません。

私はこのフエルト地下足袋にわらじの組み合わせで歩くことが多いです。

理由はフエルト地下足袋単体だと長時間の歩行では足の裏が痛くなることと、わらじが破損してもフエルト地下足袋だけでも沢登りが続行できるというメリットがあるからです。



沢登りシューズ

フエルト底沢登りシューズキャラバン(Caravan) 渓流 KR_3F ネイビー

 

ラバー底沢登りシューズキャラバン(Caravan) 渓流 KR 3R ブラック

沢登りシューズ、ウエルディングシューズなどど呼ばれているものが現在ではメジャーな沢登り用の靴です。

自分はこのタイプの沢靴は一度も使用したことはありません。

見た目はトレッキングシューズのようですが、靴底の材質が厚いフエルト製のものや、最近では特殊なゴム底のものもあります。

価格帯は1~2万円です。

履いたことがないのでなんとも言えませんが、地下足袋より耐久性や足への防護性などが高いのではないかと想像できます。

フエルト底の沢登りシューズを履いている登山者が「やっぱりわらじの方が効くよ」と言っていたのを覚えています。

 

結局・・・

沢登りには何を履けばいいのか?

紹介したものの中で、特にこれが良くないというものはありません。それぞれの特徴を理解した上で、歩行技術、実用性、ランニングコストや好みなどで決まると思います。

個人的には地下足袋、わらじ、脚絆スタイルは風情があって、山から姿を消してほしくないものの一つであります。




看板(下)



プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



カテゴリー