4Jun

登山靴の種類
登山靴の解説の3回目。
今回は、靴のタイプ、目的、長所・短所について書いていきます。
愛用の登山靴
私が使っている夏山用の登山靴は、
10年前に購入したガルモント製の本革軽登山靴で、2~3年に1回ペースで靴底を貼り替え修理に出しながら使用しています。
そして、冬山用は5年以上前に購入したスカルパ製の硬めのプラスチックブーツを使用しています。
そんな状況なので最新の登山靴の履き心地については検証できていませんが、最近の登山靴の傾向についてわかる範囲で整理してみます。
最近の登山靴
最近の登山靴を見ると、ラインナップが多いので、ぱっと見て用途別の区分けが難しいところですが、
おおむね、以下のような種類に分けることができます。
○トレッキングシューズ(軽登山靴)
※トレッキングシューズの例
トレッキングシューズと分類されている登山靴は、メーカーではハイキングから日帰りの低山までを想定している場合が多いようです。
ナイロンなどの化学繊維や部分的に革も使用されていて、靴本体(アッパー)や靴底(アウトソール)の強度によって、いくつかのグレードか選べるようになっています。
傾向としてアッパーやアウトソールの強度が高いものほど上級の登山向けになっていて、アッパーの形状は運動靴のようなローカット、ミドルカット、重登山靴のようなハイカットがあります。(写真のものはミドルカットです)
上位モデルほどハイカット(足首までの高さがある)になっていて、上位モデルの中にはトレッキングシューズと言いながら、夏山の縦走やアイゼンの装着まで想定しているものあります。
なお、登山靴の分類の仕方によっては、トレッキングシューズと軽登山靴を分けて呼ぶこともあります。
これは前述で書いたようにトレッキングシューズの中でも靴の強度が高いハイグレードなものを軽登山靴と呼ぶ場合があるということですが、メーカーによってその境界は曖昧なので、軽登山靴=トレッキングシューズと分類しました。
○オールシーズンブーツ(重登山靴)
※オールシーズンブーツの例
[モンベル] mont-bell アルパインクルーザー 2800
オールシーズンブーツと分類されるものは、一般的に夏山の日帰り登山からフル装備での縦走登山、厳冬期以外の冬山まで対応できるものを言います。(冬山用登山靴に比べ防寒性能に劣ります)
アッパーは革製や特殊素材製が多く、アウトソールは厚くて硬く、全体に重くて堅牢です。
オールシーズンブーツにはコバ(アウトソールの前後の出っ張り)があるますが、コバは前後についているものと、写真のように後のみコバがついているものがあります。
このような登山靴は前のコバがないため、ワンタッチアイゼンは着きませんが、セミワンタッチアイゼンや固定バンド式アイゼンは装着可能です。
○冬山用登山靴
※冬山用登山靴の例
冬山用登山靴と分類されるものは、冬山に特化して作られていますので保温性があり、アッパーもアウトソールも夏山用の登山靴に比べ、硬く作られています。
オールシーズンブーツのように、夏山を歩くのには向きません。
アッパーは特殊素材製で軽量タイプと重量タイプ(厳冬期用)があって重量タイプの方が全体に硬くて重く、防寒性に優れています。(写真のものは重量タイプです)
通常、コバが前後に着いていてワンタッチアイゼンが装着できます。
冬山用登山靴を初めて履いた時、どうしても硬くて歩きづらいという印象を持つを思いますが、冬山用ブーツとはそんなものです。
履き心地は夏山用登山靴にはかないません。
なお、冬山用登山靴には現行の山スキー用ビンディングには装着できなくなりなした。
山スキーをしたいなら、兼用靴(ツアーブーツ)というスキーブーツと登山靴の中間的な靴を使用することになりますが、これは冬山を長時間歩けるようには設計されていません。
○プラスチックブーツ(冬山用登山靴)
※プラスチックブーツの例 スカルパ ベガ
冒頭で紹介した私が使用しているスカルパ製の登山靴がプラスチックブーツです。
一昔前までは冬山ではこれが主流でした。
本体はプラスチック製で中にインナーシューズが入っています。
アッパーが柔らかいタイプ(コフラック製など)と硬めのタイプ(スカルパ製など)があります。
柔らかい方が歩きやすく、硬い方は山スキーに向いています。(山スキーは旧タイプのビンディングにしか着きませんが)
温かさでは革製や特殊素材製より優れていていますが、プラスチックの経年劣化で登山中に靴がバラバラに壊れる危険性があります。
○本革製登山靴
※本革製軽登山靴の例 ガルモント製
これも冒頭で紹介した私が使っている夏山用の本革製登山靴です。
写真のものは軽量タイプで、冬山には使用できません。
通常本革製登山靴といえば、もっとごついオールシーズンに対応する重登山靴を指すと思います。
大昔はごつい靴ばっかりでしたが、今ではめっきり見なくなりました。
一部ではまだ売られていて、オーダーメイドできる、東京の専門店「ゴロー」などがあります。
※本革製重登山靴の例(オールシーズン用) ゴロー C-06
本革製重登山靴はオールシーズンに対応しますが、ほかの靴と比べるとメンテナンスの手間もかかり、冬山では靴下やオーバーシューズなど防寒対策を工夫する必要があります。
この靴の特徴をよく理解して使用する必要がありますが、市販品では足がどうしても合わない人にとっては、オーダーメイドで作れるというのは非常に魅力があります。
以上のように分けてみました。
経験上わかることは、軽くて柔らかい軽登山靴は足元が軽い分、体力の消耗も少なくてすみ、足にもフィットしやすいので靴ずれもしにくいと言えます。
しかし、
柔らかい分、荷物が重ければ重いほど、長距離になればなるほど、足首以下にかかる負担が大きくなります。
ガレ場などの悪路、急な下りでは重登山靴にくらべ爪などを痛めやすいということもあります。
また靴が軽くて柔らかい分、靴底のエッジが効きづらく泥斜面では重い靴に比べると滑りやすいとも言えます。
重くて硬い重登山靴は足が重いことと、靴が硬いので、足にフィットする靴をさがしづらいのと値段が高いというのが短所ですが、それ以外は万能だと思います。
なお、靴によってはすり減った靴底を貼り替えられるものと出来ないものがあるので、長く履きたいのなら貼り替え可能な靴の方が良いでしょう。(靴修理業者によっては張り替え不可の登山靴でも修理に対応してくれるところもあります)
登山スタイルに合わせて選ぶ
自分がこれからどんな山域でどんな登山をしたいのかによって選ぶ靴の種類やグレードが変わると思います。
とは言うものの、最近のトレッキングシューズは優秀なものが多く、全荷での縦走登山でもトレッキングシューズを使用している登山者を多く見かけるようになりました。
どんな登山靴を選ぶかは、その人の体力や足のコンディションなど個人差や好みによるものが多いと思われるので一概には言えないところですが、大は小を兼ねると言うように、初心者でも重登山靴はありだし、自信があれば縦走などの本格登山であっても軽登山靴でもいいと思います。
(ただし、冬山は保温性、キックステップ歩行、アイゼンの装着などの理由から頑丈な冬山用登山靴が良いでしょう)
問題は足にフィットして靴ずれしないかを優先しつつ、登山スタイルに見合った用途、グレードのものを選ぶのが良いでしょう。
軽さでは地下足袋最強
余談ですが、
軽い靴と言えば、私は時々地下足袋で日帰り登山をしています。
普通は沢登り以外では使いませんが、軽くて、靴ずれしないという点だけ見れば地下足袋は地上最強です。
ただ登山靴のようにクッション性がないので腰痛持ちには少々厳しいこともあります。
それから、足袋ゆえに岩に足をぶつけた時の痛さはなんとも・・・。
ニンジャシューズ万歳!
次回は靴ずれ対処法について書いていきます。
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