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カムエク登山・渡渉に注意!札内川の水量を知る方法とは?

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カムエク登山・渡渉に注意!札内川の水量を知る方法とは?

カムイエクウチカウシ山(1979m)に登るには、最終ゲートから道道静内中札内線をしばらく歩いたあと、七ノ沢出合で札内川本流に入渓し、八ノ沢出合までの約2時間は河原歩きや河畔林の巻き道、数回の渡渉を繰り返しながらの行程になります。

札内川本流は川幅がそこそこあり、場所によっては20mほど渡渉する場合もあります。

川幅の広い札内川本流では、台風や長雨などで一旦水量が増すと、晴天が続いたとしても、渡渉が出来る水位に下がるまで数日から1週間程度かかる場合がけっこうあります。

無理をして渡渉をすれば、転倒して流されてしまいますので、一定以上の水位では渡渉は非常に危険になりますので、カムエク登山自体諦めなくてはならなくなります。

入山前に札内川本流の水位がわからなければ、せっかく準備をしても無駄足になってしまう可能性があります。

札内川本流の水位を知る方法としては、ネットで、国土交通省の「川の防災情報」を見れば数か所の観測点の水位は確認できますが、いずれも札内川ダムより下流の観測点です。(札内川ダム上流5.8kmの「竜潭上流」観測所は閉局中)

札内川ダムでは常時放流量を調整し、下流の水位をコントロールしていますので、これらの数値は参考程度にしかならず、ダムより上流にある七ノ沢出合付近の水量は容易に推測できません。

そこで、ダムより上流の水量を知るのに役に立ちそうなものを調査したところ、ネットで国土交通省の「ダムリアルタイム情報 札内川ダム」というのを見つけました。

このページではリアルタイムで札内川ダムの貯水位(m)、全放流量(㎥/s)、全流入量(㎥/s)を公開しています。

この中で、ダムへの「全流入量(㎥/s)」に注目してみました。

矢印が流入量(出典:国交省ダムリアルタイム情報)

全流入量とはダムの上流から流れ込む川の水や、支流、川岸などからダムへ入り込むすべての水量を毎秒で表したものです。

ですので、「全流入量=ダム上流の水量」とはなりませんが、全流入量は上流の水位の状況を知る上で有力な情報となるかも知れないと思い、過去のカムエク登山時の札内川の実際の状況と「全流入量」を比較してみることにしました。



関係あり!過去の登山時の水量と全流入量

過去のダムデータを検索

ダムリアルタイム情報では過去5時間までのデータしかわかりません。

そこで、ダムの過去データについて、札内川ダム管理支所に問い合わせたところ、過去のデータについてはネットで「ダム諸量データベースを検索して下さい」とのことでした。

「ダム諸量データベース」を検索すると札内川ダムに関しては、平成10年(1998年)~現在まで、日ごとの流入量を、ページ内にある「任意期間ダム諸量検索」では、平成14年(2002年)6月~現在まで、時間ごとの流入量を見ることができます。

実際の水量(札内川七ノ沢出合~八ノ沢出合まで)と放流量との比較

筆者は縦走などで過去4回カムエクを訪れ、札内川七ノ沢出合~八ノ沢出合間を6回通過しています。

過去6回の記録と流入量を比較してみます。

  • 平成12年(2000年)7月15日09:00ころ七ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は膝上、浅い場所を探さなければ渡渉やや困難
  • 流入量7.33㎥/s(時間ごとのデータがないので推測値)

 

  • 平成12年(2000年)7月16日14:00ころ八ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は膝上、浅い場所を探さなければ渡渉やや困難
  • 流入量6.01㎥/s(時間ごとのデータがないので推測値)

 

  • 平成14年(2002年)9月21日13:00ころ八ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は膝下、ほとんどの場所で渡渉が容易
  • 流入量3.12㎥/s
  • H14.9.21八ノ沢出合付近

 

  • 平成15年(2003年)9月25日14:00ころ八ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は膝下、ほとんどの場所で渡渉が容易
  • 流入量4.30㎥/s

 

  • 平成30年(2018年)9月1日 12:00ころ七ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は太腿、慎重に渡渉しなければ体を持っていかれる、ほとんどの場所で渡渉は困難
  • 流入量12.94㎥/s
  • H30.9.1七ノ沢出合付近

 

  • 平成30年(2018年)9月2日 15:00ころ八ノ沢出合付近
  • 渡渉時の水深は太腿、慎重に渡渉しなければ体を持っていかれる、ほとんどの場所で渡渉は困難、前日よりやや水量は減った
  • 流入量8.85㎥/s
  • H30.9.2七ノ沢出合付近

過去の流入量と登山記録を比較すると、流入量と渡渉の困難性との間には一定の関係があることがわかります。

この比較検証からわかることですが、流入量が4㎥/s以下だと水深は膝下でほぼ問題なく渡渉ができますが、流入量は8㎥/sを超えると水深は太腿で、渡渉ポイントはかなり限定されます。

流入量が13㎥/s付近では渡渉はほぼ限界と思われ、13㎥/sを超えると渡渉は困難で、ロープなどを渡して体を確保しなければ流されてしまうものと推測します。

筆者は札内川で渡渉が不可能だった経験がありませんので、参考でヤマレコユーザーさんの登山記録で渡渉が出来なかった事例を1つ紹介します。

ヤマレコによれば2018年7月8日~9日にかけてカムエクに入られた方が増水で七ノ沢出合で停滞させられ、翌日も水が引かなかったので登山を中止した内容が確認できます。(出典:ヤマレコ カムイエクウチカウシ山撤退2018年7月8日)

この日の流入量ですが、

  • 7月8日午前9時 18.92㎥/s
  • 7月9日午前9時 15.36㎥/s

やはり、流入量13㎥/s以上では渡渉が難しいということになりそうです。

八ノ沢では?

筆者が札内川を歩いた時の八ノ沢の水量ですが、いずれも渡渉が問題となるようなことは一切ありませんでした。

札内川本流が増水していても、支流である八ノ沢は比較的水が引けるのが早いのだと思われます。



まとめ

今回の検証記事では、札内川ダムの流入量と札内川上流の水量は比例関係にあることが推測されました。

必ずしもそうではないのかもしれませんが、カムイエクウチカウシ山の登山計画をするにあたって、札内川ダムの流入量(ダムリアルタイム情報 札内川ダム)をチェックすることはかなり有効な手段であることがわかります。

出典:国交省ダムリアルタイム情報札内川ダム

流入量が13㎥/s以上の時は、渡渉が困難な場合がありますので注意が必要です。



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プロフィール

フリーライター。元船員。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け30年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。



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