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元山岳部部長の登山講座

はじめての沢登り

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今回は沢登り初心者のための沢の基本的な知識や歩き方について書いていきます。

沢登りって?

真夏の沢登りは冷たくて気持ちが良く、楽しいものです。

沢登りの時期は、初夏から秋にかけて、雪が降る季節以外なら楽しむことができます。

沢登りといっても、ザイルなどの登攀用具を使わなきゃいけないような上級者向けの沢登りもあれば、沢登りシューズや地下足袋さえあれば、行ける沢もたくさんあります。

山によっては、ルート上に沢があるため、否応なしで沢登りをしなければならない場合もあり、このような山では基本的な沢の知識や歩き方を覚える必要があります。

沢を登るということは、基本的に登山道や目印がないと考えなければなりません。

登山道や目印がないということは、現在地がよくわからなくなりますので、当然のことながら読図能力も必要になってきます。

また、「沢勘」といって右岸を歩くのか、左岸を歩くのか、徒渉するのかなど、常に勘を働かせて自分でルートハンティングしながら1番安全で速くて歩きやすい道を探せる能力も必要です。

沢登りのルートハンティングは、センスがものを言いますが、センスが足りなくても練習すればできるようになります。

沢登りがうまくなるためには、とにかく沢を歩いてみることです。

 

沢装備について

まず、一番大事なのは靴です。

沢登りの靴~登山と登山靴5で書いたように、沢登りシューズ、フエルト地下足袋、スパイク地下足袋、地下足袋にわらじなどを用意する必要があります。

沢では今書いたような沢登り用の靴を履き、尾根に取りついたら登山靴に履き替えるというのが一般的です。

この場合、登山靴を背負って沢登りをすることになります。

例外的には日帰り登山で全行程があまり長くない場合は、スパイク地下足袋なら履き替えなしで尾根も登ることが可能です。

この方法はザックが軽くてすみ、履き替えの煩わしさがないという点では優れています。

難点があるとすれば、下山時に足の親指と人刺し指の股が痛くなることですが、これは慣れや個人差があります。

普段から足袋、草履、下駄などを履いている人はこのような痛みには耐性があります。

ザック(リュック)

ザックは普通の登山で使うものと同じものを使いますが、装備品のパッキングには注意が必要です。

沢では転んだり、深みにはまったりしますし、深い場所だと胸くらいの深さを徒渉したりすることもあります。

装備品は基本的にすべてビニール袋やジップロックなどに入れて防水措置をしてからパッキングすることになります。

服装

これも普通の登山服と同じで構いません。

ポリエステル製などの吸水・速乾・保温性がある服は乾きやすいので沢登りには適しています。

ズボンは特に濡れますが、ポリエステル製だと晴れた日なら尾根を歩いているうちに乾いてしまう場合がほとんどです。

その他の装備

ヘルメット

転倒は必ずといって良いほどしますので、ヘルメットを着用しましょう。

ヘルメットは軽くて丈夫な登山用の物が良いでしょう。

手袋

軍手やグローブを着用しましょう。

巨大な流木や巨岩帯の通過、高巻き時の急登や、場合によっては滝の横をよじ登ることもあり、普通の登山よりも手を使い三点確保をする頻度が増えます。

怪我防止に手袋を着用します。

脚絆(スパッツ)

沢登りでは脛の防護と靴や足袋の中に砂や小石が入らないよう脚絆(きゃはん)をはめます。

脚絆は木綿にゴムがついたものと、ネオプレーンのものがあります。

足袋や沢シューズとのマッチングで決めます。

靴下

靴下は普通のものでかまいませんが、ネオプレーン製の靴下は普通の靴下にくらべ足が冷えません。

足袋を履く場合の靴下は先割れか、指付きのものを選びましょう。

ストック(トレッキングポール、つえ)

徒渉が不慣れな場合にストックが1本あると歩行が安定します。

水流がある、沢床が見えない、石がごろごろしているなどでよろけたり、転んだりしますのでストックは重宝します。

ホイッスル

沢では音がかき消されますので、ヒグマと異常接近してしまうことがあると言われています。

クマよけの鈴に加えてホイッスルがあると安心です。

 

沢の地形・名称について

沢登り概略図

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上の図には沢登りで見られる主な地形の概略が描かれています。

最初は林道があって入渓ポイントがあります。

入渓すると最初は沢幅が比較的広く、流れも急じゃなくて玉砂利や砂のある河原や河畔林のある流域があり(写真1参照)、登っていくと沢幅は徐々に狭まり、流れは急になり、河原はなくなり、石や岩は段々大きくなってきます。

途中、ゴルジュ・廊下(写真2参照 沢の両岸が垂直の壁になっている場所。北海道では函(はこ)と呼ぶ場合が多い)や滝など通過困難な場所もあり、両岸の急斜面をよじ登って上流に出る「高巻き」などもします。

更に登ると、巨岩帯(写真3参照)やガレ場なども見られ、沢の斜度は増して水量は少なくなって小川となり、沢の始まりである源頭部(写真4参照)に到達し、源頭部のすぐ上には尾根やカールがあります。

ルートによっては源頭部まで行かずに途中で尾根に取り付くこともあるでしょう。

 

歩き方について

最初にも書きましたが、沢登りでは読図能力と沢勘が必要です。

読図能力

間違って違う沢に迷い込まないよう現在地を意識しながら歩かなければいけません。

現在地を知る方法として一番多いのは、沢のカーブの特徴や支流との出合い(合流点)の有無、函や滝などの特徴的な地形を見て、地形図と比較して現在地を知る方法です。

特に顕著な支流との出合いは現在地を知る上で有効です。

高度計があれば更にわかりやすいでしょう。

入渓前に地形図を見て沢の地形や特徴を頭に入れ、地形図はすぐに取り出して確認できるようにします。

詳しい読図方法については登山と地形図1~登山と地形図4に記載していますので参考にして下さい。

(各リンクです→地形図を持って登山に行こう地形図の読み方、地形図の実戦的使用法

沢勘

現在地を把握しながら同時に沢勘を働かせます。

沢登りでは主に沢の両岸のなるべく平らで歩きやすい場所を選んでコース取りをします。

平らな河原があればそこを歩きますし、河畔林の中にけもの道がついていれば河原よりも更にスピーディーに通過できます。

沢のカーブなどでは片岸が崖になっていることがよくあります。

例えば右岸の河原を歩いている時に、前方に河原がなくなり崖が出てきて通過困難になった時には早めに徒渉しやすいポイントを見つけて左岸に移動しなければなりません。

崖にぶち当たってから徒渉しようとしても、沢が深かったり、流れが急だったりして徒渉しづらいこともよくあります。

そういう時は来た道を戻って徒渉点をさがすことになり時間のロスになります。(徒渉について詳しくは、「はじめての沢登り~渡渉の仕方とコツとは?」を読んでみて下さい)

また、前方に滝があったり函(ゴルジュ)がある場合は沢の中を進むのが危険な場合がほとんどですから、そのような場合は岸の急斜面をよじ登って滝や函の上流に出るコースをたどります。

このことを「高巻き(たかまき)する」「巻く」などと呼びます。

またこのような道を「巻き道」と呼びます。

巻き道はほとんどの場合急斜面で、崩れやすく、滑りやすくて体力を使います。

滝であっても状況によっては滝の中や脇をシャワークライミングしながら、よじ登れる場合もありますし、函でも水量が少ない場合などは函の中を通過できる場合もあります。

このような場合は高巻きするより安全でスピーディーに通過できますので、行けそうかなと思ったら、近寄って確認してみてもいいと思います。

遠目では危なそうに見えても、近寄って見ると意外に行ける場合もけっこうあります。

このように、右岸を歩くか左岸を歩くか、徒渉するか、巻くかなど、常に歩きやすくて効率のよい道をルートハンティングしながら進むための目を「沢勘」と言います。

沢勘は野生の勘みたいなものです。

 

写真1 広い河原と河畔林の例~札内川本流

写真左側(右岸)に河畔林が見える。写真右側(左岸)は若干ガケになっているため、左側(右岸)の方が歩きやすいことがわかる。

 

写真2 函(ゴルジュ)の例~コイカクシュサツナイ川

この写真の撮影時、水量が少なく函の中は通過可能だった。

 

写真3 巨岩帯の例~札内川 八ノ沢(カムイエクウチカウシ山)

 

 写真4 源頭部の例~エサオマントッタベツ川

写真4 源頭部の例~エサオマントッタベツ川

沢登りのまとめ

以上のように沢登りには読図能力と沢勘が必要ですが、さらに沢では石がごろごろしていて非常に歩きづらいので、一歩一歩なるべく平らで安定した地面を選んだり、場合によっては岩の上を飛び石することもあり、遠目で先の地形を確認しながらも、常に足元にも気を配りながら進むことになります。

また、沢音にかき消され、動物の気配がわからなくなりますのでヒグマの存在にも気を使いますし、雨が降ってきたときは鉄砲水にも注意しなければならず、急な水量の変化がある場合は直ちに避難できるポイントにいなければなりません。

このように、沢登りは色々と気を使うことがあり、登山の総合力が一定レベル以上必要になってきますが、決して上級者だけにしか行けない沢ばかりではありませんし、沢は夏山の醍醐味のひとつですから、天気のいい日に簡単な沢からチャレンジして見るのも良いと思います。

看板(下)

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プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



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