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元山岳部部長の登山講座

登山と雷~落雷対策

雷対策について考える

ごく稀なことの例えに「雷に撃たれるような」なんていう言葉がありますが、全国で落雷による死傷者は毎年10名前後出ており、中でも登山者が犠牲になる割合はそれなりに高く、落雷の被害に遭う登山者は毎年数名出ています。

また落雷を受けた人の半数程度は死亡しています。

そこで落雷の被害に遭わないためにどうすればいいか、雷対策について考えていきたいと思います。



雷について昔からよく言われている話とは?

雷に関して一般的に昔から言われていることに、

  • 雷はより高い所に落ちる
  • 雷は金属など電気の通りやすいものに落ちる
  • 高い木の側は危険
  • 金属を身につけていると危ない
  • 送電線の下は安全
  • 避雷針がある建物内は安全
  • 車内は安全
  • 遠雷が聞こえたら避難の準備をする

などがあります。

kaminari

被害に遭わない方法を考える

昔から言われているこれらの事は本当なのか?迷信なのか?最近の雷に対する考え方と比較しながら対処法を探っていきます。

まず、私自身、落雷の被害現場を目撃したことはありませんし、知り合いからも聞いたことがありませんので実体験からこうすれば良いということが言えませんので、過去にあった事故例を参考にしながら被害に遭わない方法を考えていこうと思います。

まず、前提として「雷はどこにでも落ちる」という見解がありますので、野外にいる場合、どこにいても落雷に遭う可能性は消えないということが言えます。

すなわち、避雷針のある山小屋にでも避難しない限り雷撃される可能性は常にあるということです。

しかし、雷が発生した時に近くに山小屋があることはめったにないことなので、野外にいて落雷の危険性がより低い場所に移動することや、やってはいけないことを考えるのが現実的です。

「雷はより高い所に落ちる」

「雷はより高い所に落ちる」について。

雷は鉄塔や高い木、山頂など大地から出っ張った場所に落ちようとする傾向が強いようで、実際、そういう場所に落雷する例が多いと聞きます。

山頂、尾根筋、高い木はもちろん、平坦地に突っ立っていることも危険であると言われているのはこのような理由からです。

実際に山頂付近や尾根筋で落雷事故が多数起きており、しゃがんいる人よりも立っている人に落雷しやすく、また、テントに直撃することもあり、地面から出っ張ったものに落雷する傾向があることがわかります。

「雷は金属など電気の通りやすいものに落ちる」と「高い木の側は危険」

次に「雷は金属など電気の通りやすいものに落ちる」と「高い木の側は危険」について。

雷は鉄塔、人間、傘、ピッケル、テントのポール、濡れたものなど電気を通しやすいものに直撃したり、また、直撃したあとに付近の電気の通しやすいもの(人間など)に電気が飛び移る(側撃と言います)事故も起きています。

木に落雷した場合、木のすぐ側にいると人間が側撃を受けるので、木から3~4m離れた方が良いと言われています。

木に雨宿りをしていて側撃を受けた事故例は複数あります。

電気の通しにくい岩場に落雷した場合、電気が地中にアースせず、岩場の地面を伝って電気が横方向に走り、電気を通しやすい人間に側撃する事故も起きています。

この場合、大勢が一か所に固まっていると一度に全員が直撃や側撃を受けてしまうため、ばらばらに離れたほうが被害が少ないと言われています。

また地面からの側撃の場合、地面に伏せていると、より側撃を受けやすくなりますので、地面に伏せるのではなく、姿勢を低くしてしゃがむようにします。

「金属を身につけていると危ない」

それから、「金属を身につけていると危ない」については、近年は昔と違う解釈がされています。

雷が直撃した登山者の靴の金具やベルトのバックルが激しく破損している事故例があり、以前は身に着けていた金属に落雷したのではないかと推測されておりました。

現在では人間自体が大変電気を通しやすいということがわかっていますので、人間に落雷したあと、より電気を通しやすい金具に電気が集中した結果、その部分だけ激しく破損したというのが最近の見解です。

この見解によれば金属を身につけていようといまいと、落雷の危険性に差はなく、むしろ金具に電気が集中したおかげで、心臓に電気が届かず一命を取り留める可能性すらあると言われております。

(死亡か負傷かの違いは心臓に電気が通ったかどうかで決まると言われています)

ですが、金属を身に着けていても関係ないとは一概に言えないこともあり、頭より高い位置にピッケルやカメラの三脚、ストック、テントのポールなどを身に着けていれば落雷の危険は高まると言います。



雷に対して危険な状況とは何か

以上について、雷に対して危険な状況とは何かを整理すると、

  • 頂上、尾根筋付近にいること
  • 岩場にいること
  • 平坦な場所で突っ立っていること
  • テントの中にいること(テントのポールは電気を通しテントは地面から突き出ている)
  • 高い木のすぐ側にいること
  • 複数で固まること
  • 頭より高い位置に電気を通しやすいものを身に着けていること
  • 地面に伏せること

などが危険であると言えるでしょう。

なお樹林帯にいる時は近くにたくさん木があり、木から距離をとりづらいと思いますが、なるべく木から離れた場所を探すようにし、幹に触れるようなことはしない方が安全です。

「送電線の下は安全」「避雷針がある建物内は安全」「車内は安全」

次に、「送電線の下は安全」「避雷針がある建物内は安全」「車内は安全」について、避難場所や比較的安全な場所について考えていきます。

まず、『高い場所は危険』ということがわかっていますので、より低い場所に避難することが有効であることがわかります。

すなわち、

  • 山頂付近にいたなら、ただちに下山し適当な斜面や窪地で姿勢を低くして雷の通過を待つ
  • 尾根筋であれば鞍部(コル)など低い場所に移動し姿勢を低くする
  • 斜面や窪地に、はい松帯があればその中で姿勢を低くして待つ
  • 山小屋が近くにあれば避難する

なお、ここでいう山小屋は避雷針がついたしっかりとした建物であって、掘立小屋やあずま屋に避難しても人間に落雷する事故が起きております。

山小屋以外にも安全と言われている場所があります。

  • 送電線の下で送電線の真下から数メートル離れた場所
  • 送電線の鉄塔から数メートル離れた場所
  • 自動車の中
  • 高い木の先端を45度に見上げる場所からその木の幹の3~4m手前までの範囲内の場所(下図参照)

これらは、送電線にしても鉄塔にしても木にしても自動車にしても人間よりもそちらに落雷するから安全だということであり、数メートル離れるというのは側撃を受けないという意味です。

いずれも姿勢は低くして避難しましょう。

それから自動車の車内や山小屋でもそうですが、あまり壁際や柱に寄ったり、電気製品や金属に触れないようにした方が安全です。

これは落雷した電気が地面にアースする前に人体を通らないようにするためです。

実際に屋内で電話中の人が電話線から雷撃された事故例があるようです。

「遠雷が聞こえたら避難の準備をする」

「遠雷が聞こえたら避難の準備をする」については、そのとおりであり、雷の音が聞こえた時には雷が10km~20kmに近づいています。

雷は10km以上離れた場所に落ちることもありますので、登山中に遠雷が聞こえたら避難準備をするのが賢明です。



天気図や天気予報を確認して入山する

ここまで、落雷による対処について書いてきましたが、対処の前に天気図や天気予報を確認して入山することは言うまでもなく、

  • 寒冷前線の通過が予想される場合
  • 雷雨注意報が発令されている場合
  • 積乱雲が発達してきた場合
  • 氷が降ってきた場合
  • AMラジオにノイズが入る場合

など、雷が発生しそうな状況を予測し、登山自体を中止する、早めに下山するなどの判断を的確に行うことが落雷に遭わないためには最も有効な手段です。

雷探知器も販売されています。

「雷探くん」では40km以内、「ストライクアラート」では60km以内の雷を探知が可能とのことです。

AMラジオにザザーッというノイズが聞こえたら50km以内に雷が接近していると言われていますので、携帯ラジオも優秀な雷探知器と言えそうです。


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それから登山者ではありませんが、近年、落雷事故について訴訟となり、監督者の注意義務違反を認定された事例が出ました。

このことは、場合によっては監督者が落雷を予見し、事故を回避できる可能性があると司法が判断を示したということです。

団体登山のリーダーは落雷を予測し、適切にパーティーを避難させる能力も求められ、事故があれば法的に過失責任を問われかねない時代になりました。

看板(下)



プロフィール

フリーライター。元船員。
学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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