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元山岳部部長の登山講座

登山の服装選びの基本1~レイヤリングとは

登山の服装選びの基本1~レイヤリングとは

登山に適した服装といっても、季節や登る山の標高、登山スタイル、好みなどによって変わるものです。

近年はウエアのラインナップが多く、カテゴリーなどもわかりづらくなっていますが、登山ウエアについて順を追って説明していきます。




登山服の基本は着たり脱いだりの「重ね着」

基本的には、肌着、中間着(行動着:フリースなど)に伸縮性の良いズボンを着用し、寒いときにはアウター(ヤッケ、ウインドブレーカー、透湿性のカッパなど)や、防寒着(セーターやフリース)、雨天時にはカッパを着用するというように、登山中に変化する気温、体感温度、天気などのコンディションの変化に対応しながら、脱いだり、着たりを繰り返すのが一般的です。

ウエアの合わせ方は人それぞれであり、特に決まりはありませんが、肝心なのは、自分が登る季節や標高など温度変化によって「重ね着」の仕方を工夫しながらしっかりと体温調整ができるということです。

 

レイヤリング(重ね着)

登山中は気温、風の強さ、発汗の状況変化により、体温調整のために何度も服を着たり、脱いだりすることになります。

最近ではこのような重ね着の調整をレイヤリングと言っています。

レイヤリングを説明する場合、衣類を主に3種類に分けますが、

  • 肌着などのアンダーウエアを「ベースレイヤー
  • フリースなどの中間着(行動着)を「ミッドレイヤー
  • ヤッケやウインドブレーカー、透湿性のカッパなどの上着を「アウター

などと呼びます。

この3種類のほかに、ミッドレイヤーとアウターの間に着こむ防寒用のフリースや、雨天のためのカッパ上下(透湿性のものはヤッケと兼用できる)を用意するのが登山では基本的な考え方です。

このレイヤリングと呼ばれる重ね着の調整は、登山の世界では昔から行われている事であり、体温調整を誤ると暑すぎて熱がこもって熱中症の原因になったり、逆に汗でびしょ濡れのところに冷たい風を受け続けると、低体温症の原因になったりもします。

このように登山の服装とレイヤリングは、命に係わる大切な登山技術のひとつと言えます。

 

昔の登山服~高機能の服がなかったのでレイヤリングでカバー

30年以上前(昭和後期)の頃の登山者は、肌着は木綿のシャツ、中間着はウールのカッターシャツ、ズボンはウールのニッカズボン(ニッカボッカ)が定番でした。

ニッカズボンがない人はウール製で古着の背広のズボンなどが重宝しました。

寒いときには、中間着の上に毛糸のセーターや、ヤッケを着用し、カッパには透湿性がありませんので、アウター(ヤッケ)とは別に持っていく必要がありました。

肌着は、現在のような吸水、速乾、保温性があるような素材はありませんでしたので、夏は木綿の肌着やTシャツ、ランニングシャツ、冬用は上下アクリル製の肌着(いわゆるラクダのシャツ、ももひき)を着こんでおりましたが、余裕のある人はウールの肌着を持っている人もいました。

八甲田山の記事でも書きましたが、木綿のシャツは濡れると乾きにくく、かなり汗冷えしますので、真夏でも厚めのウールカッターシャツを着る必要がありました。

このように現在主流の登山の服装と比べると、まったく十分とは言えない状況でしたが、高機能の服がなかった時代でも、重ね着を工夫することで、それなりにうまく対応できており、レイヤリングがいかに大切なのかがわかります。



高機能の服が多くなった現在の登山服

さて、現在ですが、ウールにかわる新素材としてフリースに代表されるポリエステル製品が主流となりました。

ポリエステル製ウエアの利点はウールに比べると軽くて、水濡れに対して乾きやすいというのが最大の特徴です。

暖かさは物にもよりますがウールにひけを取らないものが多く出回っています。

このようにポリエステル製のウエアは暖かく、水濡れしても乾きやすく、ウール製品より値段も安いので、ベースレイヤー、ミッドレイヤー、ズボンなど、登山用ウエアはポリエステル製品が多くなり、ウールは少数派になりました。

しかし、ウール製品が姿を消したわけではありません。

山でウール製の衣類が良いとされているのは、

  • 保温性が優れていること
  • 水濡れしてもある程度保温性が保てること
  • 化学繊維に比べ臭くなりづらいこと

など優れた点があり、冬山などの寒い季節を中心に、ウール製の肌着などを好む登山者は現在でも多くいます。

現在では、高機能なポリエステル製品、昔ながらのウール素材など登山服の選択肢は多くなり、昔より登山中の体温調整は楽になりましたが、登山服が高機能になった現代でも、油断すれば熱中症、低体温症は発症してしまいますから、服装がどんなに進化しても登山服の基本は重ね着(レイヤリング)であることには変わりありません。

 

服装に決まりはない。自由に組み合わせを楽しむ

研究

登山の服装は絶対に登山メーカーの物でなくちゃいけないということはなく、タンスにしまってある服でも登山に適したものがあるかも知れないし、作業用品店や釣り具店、ユニクロなどでも登山用と似たような性能を持った服が安く売っている場合もあります。

どんな服をどう組み合わせるのかを考え、そのレイヤリングでその日の登山は快適だったのかを検証してみたり、登山の服装の研究は楽しいものです。

一流の登山メーカーだから、知り合いが着ていたから、ショップの店員にすすめられたからでも良いですが、登山に適した服装は、素材の特性(吸水、速乾、保温性)とレイヤリング(重ね着調整)で決まります。

流行やファッション、メーカー品にこだわることなく、自由に組み合わせを楽しみながら自分の形を探していくのも良いと思います。

次回の登山の服装選びの基本2では具体的な服装について説明していきます。




看板(下)



プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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