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元山岳部部長の登山講座

登山にも大会がある!?~高体連登山競技採点基準

登山にも大会がある!?~高体連登山競技採点基準

当時の採点基準表

高等学校体育連盟(高体連)が主催する登山競技大会、いわゆる山岳部の大会の採点基準(昭和60年(1985年)ころの資料)です。

現在の採点基準(北海道高体連登山専門部のHPに掲載されています)と比べると、若干変更されている項目もありますが、基本的には同じことが書かれており、30年以上、ほぼ同じ基準で審査されているようです。

当時の採点基準表の内容は、下にまとめました。(採点の点数配分は全国大会と地方予選では若干違うようです。)




採点基準 (合計100点)

行動

体力(全国30点、地方30点)

内容:1日目 2日目 3日目、1日ごとに体力を見て(10点満点で)配点する。

歩行(全国20点、地方20点)

内容:体全体の中で遅れはないか(2点)、疲労の程度(身体のふらつき、づまづき、スリップ、足のひきづり)はどうか(2点)、行動中余裕を持ち、安全確実な歩行が出来ているか(2点)、悪場でのリズム、バランスがどうか(2点)、雪渓での歩き方はどうか(2点)、落石等危険な事をしていないか(2点)、転倒、尻もち、転落をしていないか(2点)、登りの歩幅が大き過ぎないか(2点)、下りにひざがかたく、リズミカルに下れない(2点)、つま先、かかとで歩く等歩行技術がぎこちない(2点)、行動不能になる(失格)

備考:見るポイントをあらかじめ決めておく。例~1日目 羊蹄山頂上付近、2日目 ニトヌプリ下山路、チセ、ニトのコル手前、チセ頂上への登り、湯本温泉への急な下り、3日目 岩内岳へパンケ湿原からの雪渓、岩内岳からのスキー場のガレ場の下り 

生活

装備(全国10点、地方10点)

内容:必要な装備を持ち、その数量が適切であるか(2点)、ザックのパッキングの状態はどうか(1点)、雨・風に対する対策、雨具の使用は適当であるか(1点)、装備に工夫、研究がなされているか(1点)、帽子はあるか(あごひもはついているか)(1点)、ブッシュ帯等でのそで、手袋の活用は適切であるか(1点)、靴ヒモの処理不良はないか(1点)、だらしなくないか(ザックのひも処理、手ぬぐい、服装等)(1点)、救急薬品を所持しているか(1点)

備考:必要装備 (団体)スコップ、ツエルト、防水シート、修理具、コンロ、ラジオ (個人)非常・行動食(内容と量)、細引き、雨具、水筒(残量)、ナイフ、地図、コンパス、電灯(予備の電池、電球、保管等)、防寒具、計画書、軍手、筆記具。サブ行動等の時装備チェックを行い不備な点を減ずる。(医薬品)体温計(保管方法)包帯等、外傷薬、風邪・胃・腹薬・痛み止め

設営撤収(全国10点、地方5点)

内容:仕事分担、連携、手順が良く、用具の取り扱いが手慣れている(2点)、テント内、外の整理整頓は良いか(1点)、フライがテントに正しく着けられているか(0.5点)、張り綱、ペグの良し悪し(0.5点)、灯油、ストーブの置き場所は良いか(0.5点)、作業に軍手をしているか(0.5点)

備考:テントが多種多様化しているので必ずしも時間が早いのがいいというわけではない。しかし、機敏に動作しているかどうかを見る。

炊事(全国5点、地方5点)

内容:計画書と実際の内容が一致しているか(1点)、献立が適切であるか(インスタント食品が多くないか)(1点)、コンロの整備が良く取り扱いに慣れているか(1点)、コンロの風防対策がなされているか(0.5点)、灯油の量は適当か(0.5点)、残飯、ゴミ等の量が多くないか(0.5点)、炊事に時間がかかりすぎてないか(0.5点)

備考:実際に炊飯しているときに計画書と比べてみる。食事の終わったころ再度行ってみる。

知識

気象(全国5点、地方5点)

内容:天気図の完成度はどうか(全体的に見て)(2点)、高、低気圧、前線等の位置に記入ミスはないか(1点)、等圧線が正しく記入されているか(1点)、予報が適切に書かれているか(1点)

備考:放送終了から15分~20分で提出させる。

計画記録(全国5点、地方5点)

内容:計画書は適正に記載されているか(1点)、計画書にテーマと会場地の研究があるか(1点)、記録は書き方に独自性と工夫があり、携行に便利か(1点)、記録の内容が今後の山行に役立つものであるか(1点)、持参地図に事前研究が見られるか(1点)

備考:(計画書必要記載事項)緊急連絡先、選手名、住所、血液型、父母名、電話、薬品リスト、装備、食糧表、大会地、概要、テーマ研究、日程 (記録、記載事項)場所、時間、自然状況、天候メンバーの様子、その他

行動中テスト(全国0点、地方5点)

内容:読図に関すること(4問×0.5点=2点)、自然に関すること(1点)、基礎的な救急処置の知識と技術について(1点)、ビバーク技術について(1点)

備考:=(救急処置)日射病、熱射病、凍傷、ヤケド、骨折、疲労 (ビバーク)やらせてみてもいい。

ペーパーテスト(全国0点、地方5点)

内容:読図に関すること(6問×0.5=3点)、山の基本的な知識に関すること(14問×0.5=7点)

地形(全国5点、地方0点)

救急(全国5点、地方0点)

態度

パーティーシップ(全国5点、地方5点)

内容:パーティーのまとまり、仕事分担はうまくいっているか(1点)、リーダーの指導が良く行き届いているか(1点)、無駄な掛け声やスタンドプレーはないか(1点)、自然保護をわきまえて行動しているか(ゴミ処理等)(1点)、高校生らしく素直で快活に山登りを楽しんでいるか(1点)

備考:パーティー全体を見て特記事項がある場合は書いてもらう。

 

以上が当時の採点基準表の内容ですが、現在でも十分参考になる登山の基礎的な事項が書かれています。

国体山岳競技と高校体育連盟の登山競技の詳しい話については「登山にも大会がある!?~山岳競技のお話」を読んでみて下さい。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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