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元山岳部部長の登山講座

高濃度虫よけスプレー、ディート、イカリジンは登山に有効か?

虫よけスプレー

高濃度虫よけスプレー、ディート、イカリジンは登山に有効か?

虫よけスプレーは、登山においては従来から効果が今ひとつということで、あまり人気がありませんでした。

昨今登場した高濃度の虫よけスプレーは蚊やブヨなどに対する忌避効果が高く、持続性も長くなりましたので、新たな虫対策として期待が持てます。

今回は高濃度虫よけスプレーが登山の虫よけ対策に有効なのかを検証してみました。




登山の虫よけに期待~ディート30%、イカリジン15%の登場

デング熱の国内感染などがきっかけとなり、平成28年(2016年)から従来の虫よけスプレーより2倍以上濃度が高い、ディート30%、イカリジン15%含有の虫よけスプレーが各社から発売されるようになりました。

ディート30%とイカリジン15%は同等の忌避効果があるとされています。

(高濃度虫よけスプレー、ディート、イカリジンについて詳しくは「虫よけスプレーに新事情!登山の虫よけ考察」を読んでみて下さい。)

登山においては、人を襲撃する虫の数も多く、また汗を大量にかきますので薬剤の成分が流れて、持続時間や効果が薄くなることが考えられます。

実際に登山に使用してみなければ、高濃度虫よけスプレーの効果はわかりませんので、まずは実地検証してみることにします。

 

いざ実験

今回はムシペールPS30(ディート30%、エアゾールタイプ)と天使のスキンベープミストプレミアム(イカリジン15%、ミストタイプ)の2つを用意しました。

ムシペールPS30の適応害虫は「蚊、ブヨ、アブ、ノミ、イエダニ、マダニ、サシバエ、トモジラミ、ツツガムシ」で持続時間は「5~8時間」、「12歳未満の小児には使用しない」と表示されています。

一方、天使のスキンベープミストプレミアムの適応害虫は「蚊、ブヨ、アブ、マダニ」で、持続時間は「6~8時間」、と表示されていて、年齢制限は特にありません。

持続時間については、汗などをかけば、これよりかなり短くなることが予想されます。

虫よけスプレー

ムシペールPS30と天使のスキンベープミストプレミアム

場所はコース中に沢登りがある、日高山脈コイカクシュサツナイ岳で行い、実験のお手伝いに登山クラブのTさんに協力してもらいました。

コースは前半が沢登り、後半はネマガリダケが群生する尾根取り付き~急登と進んでいきます。

沢にはブヨ、ヌカカが多く、ネマガリ地帯にはマダニも多くいます。

コイカクシュサツナイ川

 

ネマガリ地帯

まずは、出発前に顔、ヘルメット、シャツにたっぷりと虫よけスプレーをかけます。

筆者はムシペールPS30、Tさんは天使のスキンベープを使用しました。

エアゾールタイプ(いわゆるスプレー缶タイプ)は吹きつけると跳ね返りますし、容器は大きなものしかありません。

ミストタイプは跳ね返りが少なく、携帯に便利な小型容器もあります。また肌に吹き付けた薬剤を手で伸ばすことも容易なので、登山にはミストタイプの方が使いやすいでしょう。

イカリジンの虫よけスプレー

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注意。ディートは刺激が強い!

イカリジン15%の天使のスキンベープは肌にやさしいということですが、スプレー直後はそれなりに刺激はあります。

しかし、ディート30%のムシペールPS30に比べれば、肌への刺激はかなり少ないと言えます。

ディート30%のムシペールPS30ですが、スプレーした直後は肌がけっこうヒリヒリします。

肌の弱い人はイカリジン系のスプレーを使用した方が無難と言えるでしょう。

また、ムシペールPS30と天使のスキンベープには注意書きに「合成繊維、プラスチックスなどに噴射しない」とあります。

ディートは以前から、プラスチックや合成繊維を変質させたり溶かすと言われていますが、イカリジンも注意が必要です。

実際に両者を衣類やヘルメットに噴射してみた結果ですが、筆者とTさんが着用していた、ポリエステルとウールのシャツは特に異常はなかったのですが、ヘルメットについては、下山後確認したところ、ディートを噴射した部分の表面の光沢がなくなり、ザラついてしまいました。

ディートの噴射によって表面が変質した。

このように、ディート系のスプレーはイカリジン系のスプレーに比べ刺激が強いので、使用する場合は特に注意が必要です。

刺されはしなかったが・・

入渓するとさっそく、ブヨとヌカカが寄ってきました。

筆者もTさんも顔の周りにブヨとヌカカが同じくらい取り巻きますが、飛び回るだけで、着陸して刺すことはありません。

刺されはしないものの、虫が顔に寄ってくる感じは、歩いていて非常に鬱陶しさを感じます。

Tさんも「刺されないけど虫がうざい」を連呼していました。

登山では、刺されなければ良いというものではなく、顔面の至近距離を虫に飛び回られることがけっこうなストレスになります。

結局、2人とも途中からハッカ油を併用し、虫の寄り付きを回避しました。

持続性についてですが、ムシペールPS30、天使のスキンベープともに、顔面は汗で直ぐに薬剤が流れてしまうようで、15分~30分程度すると顔面への虫の寄り付きが多くなります。

いくら高濃度で持続性が長くなったといっても、大量の汗で流されるとすぐに効果は薄れるようです。

ディートとイカリジン、効果は引き分け

筆者もTさんも虫の寄り付きは、ほぼ同じでしたが刺されることはありませんでした。

下山時に尾根取り付きのネマガリ地帯を通過し、沢に下りたところで、虫よけスプレーを交換し、筆者が天使のスキンベープ、TさんがムシペールPS30を使用しました。

筆者の感想は「どちらもこれとわかるほどの差はない」、Tさんの感想は「ほとんど差はないが、ムシペールPS30の方が若干虫が寄って来なかったような気がする」というものでした。

評判どおり、ディート30%とイカリジン15%は効果がほぼ同じということがわかりました。



マダニに対しても画期的な忌避効果はない

さて、高濃度虫よけスプレーはマダニに対しても効果が期待できるとされています。

今回は季節的にはマダニの数はそう多くはない時期なのですが、コース中にけっこうなネマガリダケが群生していたため、マダニも付いてしまいました。

下山時、ネマガリ地帯を通過後に確認したところ、筆者のズボンにマダニが5匹、腕に1匹噛みついていました。

Tさんはズボンに1匹付いていました。(帰宅してから更に2匹確認しました)

帰宅後、マダニがさらに2匹。

このことについては、天使のスキンベープを使っていたTさんの方がマダニの付着が少なかったので、イカリジンの方がマダニに効くとも言えそうですが、この日、筆者がトップを歩いていたので筆者の方がマダニが多く付いたとも言えます。

言えることは、高濃度虫よけスプレーを使用していても、笹やぶを漕ぐとマダニの付着は避けられないということです。

やはり、マダニが多い場所では、虫よけスプレーだけに頼るのではなく、まずはマダニが付きにくい服装(つるつるしたナイロンのズボンを着用するなど)をして防御するしかないようです。(マダニ対策について詳しくは、「登山とダニ(マダニ)対策~スプレーか?服装か?」を読んでみて下さい)

ディートやイカリジンのマダニに対する忌避効果については、今後はトップを交代しながら歩く、スプレーの噴射量を多くするなど条件を変えながら検証を続けたいと思います。→検証しました。「実験!高濃度虫よけスプレーはマダニに効くのか?

 

まとめ~結局、ハッカ油。

高濃度虫よけスプレーの使用により、蚊やブヨに刺されないという安心感はあるものの、虫の多い場所では、顔面への寄り付きは防げないので、結局ハッカ油を併用することになってしまいました。(持続性はさほど長くありませんが、ハッカ油の忌避効果は高い)

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高濃度虫よけスプレーだけでは登山の虫よけ対策にはやや難がある印象です。

ディートやイカリジンは蚊やブヨに刺されはしませんが、人への寄り付きを防ぐ効果はほぼないようなので、ハッカ油や蚊取り線香など、虫の寄り付きを防げるアイテムと併用するのが、登山では効果的な使い方だと思います。


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プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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