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登山とダニ対策と感染症~ダニ媒介性脳炎とは?

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今回は、マダニが媒介する感染症について説明します。

今月(平成28年8月)、道内の男性がマダニに咬まれ、ダニ媒介性脳炎で死亡したことが報じられ、保健所が注意を呼びかけています。

マダニについては一度記事を書いていますが、マダニが媒介する感染症は北海道においてはほとんど耳にした事はなく、私の周囲でもマダニで病気になった話は一度も聞いたことがありませんでしたので、前回は詳しく触れませんでした。

マダニについて。)

今回、死亡者が発生してしまったとのことですから、マダニが媒介する感染症と危険性について国立感染症研究所の記事を参考にしながらマダニの危険性をまとめてみました。

※平成29年5月追記:北海道大学で札幌市内の野生動物(野ネズミやアライグマ84匹)を調査したところ、12%がダニ媒介性脳炎ウイルスに感染していたとのことです。今後、汚染が拡散していくかも知れません。注意しましょう。

※平成29年7月追記:道内の男性がマダニによるダニ媒介性脳炎で死亡しました。昨年に続き2人目の死亡者です。汚染地域の拡大が心配です。注意しましょう。

※平成29年8月追記:道内の男性がマダニによるダニ媒介性脳炎に感染し入院しました。感染はこれで4例目です。急激に汚染が拡大しているようです。

 

マダニが媒介する感染症

マダニが媒介する感染症は何種類かありますが、今回発生したダニ媒介性脳炎のほか代表的なものにライム病、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)がありますので、この3つについて書いていきます。

ダニ媒介性脳炎について

この病気は日本では平成5年に北海道で1例発生していますが死亡には至っておりません。

このマダニ媒介性脳炎は何種類かあるそうですが、ロシア春夏脳炎と中部ヨーロッパ脳炎という2つの脳炎が多いようです。

また、ロシア春夏脳炎ウイルスが道南地域の犬に分布していることが判明しているようです。

国内での感染例は少ないですが、ロシア春夏脳炎の場合、感染すると潜伏期間は7~14日で、その後頭痛・発熱・悪心・嘔吐が見られ、精神錯乱・昏睡・痙攣、麻痺などの症状が現れることもあり、致死率は30%とあります。

また、現在のところ国内では有効なワクチンはないそうです。

ライム病について

この病気は昭和61年に国内で初めて確認され、現在まで数百人が感染しています。

詳しく数字が出ていませんが、年間に10数名が感染しているようです。

また、この病気は本州中部以北、特に北海道と長野県で多いようです。

感染すると、マダニに咬まれた部分に赤い紅斑ができ、紅斑は円形に徐々に大きくなり、数日から数週間現れるそうです。

筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などインフルエンザに似た症状を伴うこともあるそうです。

病原体が全身にまわると皮膚、神経、眼、心疾患、関節炎、筋肉炎など様々な症状が出るようです。

感染から数カ月~数年して慢性化すると重度の皮膚症状、関節炎などになるといわれていますが日本で慢性化した例は現在のところないそうです。

致死率については触れられていません。

ライム病についても現在のところ国内では有効なワクチンはないそうです。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)について

この病気は平成25年に初めて感染者が確認され、現在まで203名が感染し、そのうち48名が死亡しています。

年間70名程度が感染し、致死率は約24%になります。

また、この病気は西日本に多く、関東以北では報告例がないようです。

感染すると6日~2週間、潜伏期間があり、その後、発熱、嘔吐、下痢などが現れ、重症患者は発熱、出血症状の後、死亡に至るようです。

SFTSは現在のところ有効なワクチンは開発されていないようです。

 

以上がマダニによる感染症についての国内の現状です。

今回報道で騒がれたダニ媒介性脳炎は現在のところ数字で見る限り、感染する確率は極めて少なく、北日本であればライム病の方が感染する可能性が高く、西日本であればSFTSに感染する可能性が高いと推測できます。

しかし、どの感染症にしても今後汚染地域が拡大していかないとは限りません。

用心に越したことはないでしょう。

北海道内に限って言えば、登山中に発生し得る動物による命にかかわる問題(スズメバチ、エキノコックス虫、ヒグマ襲撃)と比較すれば、マダニによる感染症で死亡に至るリスクは現在のところはそれほどでもないと言えます。

しかし、今後の動向には注意が必要です。

マダニに咬まれて感染症が不安な方は皮膚科を受診するか、受診前に自分でマダニを取った時は、マダニを捨てずに、病院に持参して受診すると検査がスムーズだそうです。

 

ダニ対策

前回の記事「登山とダニ」で、ダニについていろいろ触れましたが、ダニ対策として、蚊取り線香、虫よけスプレーは効果がなく、今のところ服の上からつるつるしたウインドブレーカーを着てダニが付きにくくするのが一番有効な方法です。

今回のことで虫よけスプレーの有効性について再度調べたところ、「ディート」という成分が入っている虫よけスプレーにはマダニに対して忌避効果があるとのことです。

私は以前虫よけスプレーを使用して、6月ごろの笹やぶを漕いだ時、普通にマダニがたくさん付きました。

この虫よけスプレーに「ディート」が入っていなかったからたくさんダニが付いたのか、「ディート」は入っていたけども、ダニが多すぎて忌避効果を十分実感できなかったのか、または十分にスプレーしなかったから効果が薄かったのか、今となっては確認のしようがありません。

来春以降、ディート入りのスプレーをたっぷり使って、ダニ付き放題の山に出かけて効果を検証できたら、また報告したいと思います。

ちなみに、ディートが入っている虫よけスプレーは各社から出ていて、アースの「サラテクト マダニ・トコジラミ用」や、ムヒの「ムシペールPS」などがあります。

成分を見る限りムシペールの方がややディート成分が多いようです。

ディートが入っている虫よけスプレーはアレルギーや肌荒れなど起こすこともあるそうです。肌が弱い人や子供などへの使用は注意して下さい。

 

ディート

余談ですが「ディート」はアメリカ陸軍が大戦中のジャングル戦経験から戦後の昭和21年に開発したものです。

濃度が濃いものほど効果が持続しますが、その分毒性も高いようです。

国内では濃度12%以内のものしか製造されていないらしく、外国製のものはかなり成分の濃いものがあるようです。

私は以前、札幌の登山用品店「秀岳荘」で「米軍が使用している虫よけ」と書いてある物を見たことがあります。

興味をそそりましたが結局買いませんでした。

もう売っていませんが、今から思えばそれはアメリカ兵が使う本物のそれだったのかも知れません。

米軍にとって、ダニや蚊はよほど消耗を強いられたのでしょう。

看板(下)

平成28年8月

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プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



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