10Apr
登山のロープワーク。船乗りが教えるロープの結び方その1
ロッククライミングを中心に、登山では実戦的なロープワーク(ザイルワーク)をたくさん使います。
ロープワークは帆船時代に発達し、明治期になり、海軍とともに日本に入ってきました。
海上で使用されるいろいろな結び方は登山にも応用されるようになりました。
ロープワークを海軍や商船では結索(けっさく)と呼び、伝統的な結び方は現在でも海上では日常的に使用されています。
筆者は20年以上の船員経験があり、船舶の実務で使用していた結び方や、登山で使用されている結び方などについて説明していきます。
今回は8種類の結び方について説明します。
目次
1.基本の結び
・一重結び
2.ロープの一端を縛り支点にして、ものを引っ張ったり吊り上げたりする結び方
1.基本の結び
一重結び
ロープにコブを作ったり、結んだあとの端末が解けないよう、保険のために一重結びをしたりします。
八の字結び(エイトノット)コブを作る結び方
一重結びと同じく、ロープにコブを作るための結び方です。一重結びは硬く締まると解けませんが、エイトノットは締まっても解くことができます。
2.ロープの一端を支点にして、ものを引っ張ったり吊り上げたりする時の結び方
八の字結び(エイトノット)輪を作る結び方
基本の結びで出てきたエイトノットは、ロープにコブを作るだけではなく、ロープをダブルにしてエイトノットを結ぶと、輪を作ることができます。
クライミングの世界では、もやい結びよりも解けづらく安全だということで、輪を作る場合、よく使用されています。
これで、出来上がりですが、クライミングの世界では絶対に解けないよう、保険として下のように端末をダブルフィッシャーマンズノットと同じ結び方で処理しています。
一結び(ハーフヒッチ)
一時的に縛っておくための、結び方です。
反対側から見たところ。
二結び(ツーハーフヒッチ)
ハーフヒッチからの変化です。端末にもう1回ハーフヒッチをかけます。
端末があまっていれば、3回、4回とハーフヒッチをかけてもかまいません。ハーフヒッチをかけるほど解けづらくなります。
ツーハーフヒッチは、簡単で覚えやすく、いろいろな場面で応用が効く結び方です。
よく見るとわかりますが、引っ張る方のロープに、端末側のロープで巻き結び(クラブヒッチ、インクノット)をかけているのがこの結び方です。
まずハーフヒッチをいれます。
結び目が解けそうと感じた時は、さらにハーフヒッチをかけても良い。
巻き結び(クラブヒッチ、クローブヒッチ、インクノット)
この結び方は、ロープが締まって、縛りつけたものが横ずれしにくくなります。
上で完成ですが、締め付けが足りないと感じる時は下のように同じ要領で何度も巻き締めると、巻き付けは強くなる。
下は、あらかじめ輪を作っておいてから、巻き結びを作る方法です。
同じ輪を作り重ねます。輪の作り方と重ね方を間違えないようにします。
カラビナなど、巻き結びをしたいものに通し、締めつけます。
もやい結び(ボーラインノット、ブーリン結び)
もやい結びはロープの一端を支点にして、ものを引っ張ったりする結び方としては、簡単で信頼性があり、結び目が硬くならないので、解きやすい結び方です。
クライミングの世界では、誤った方向にテンションをかけた時にもやい結びが解ける現象(「危険なリング負荷」などと呼ばれる)が起きたために使用されなくなり、代わりにエイトノットが普及しているようですが、もやい結びは、正しく使用すれば解けることはなく、非常に汎用性の高い結び方です。船舶の世界では、もやい結びを日常的に使用しています。
もやい結びが解ける現象については、「もやい結び(ブーリン結び)は本当に危険なのか?」を読んでみて下さい。
上で完成です。通常はこの状態で十分使用できますが、レスキューの世界では、危険なリング負荷により、もやい結びが解けないための保険として、下のように端末に一重結びをいれます。
ねじ結び(より結び、チンバーヒッチ)
チンバーヒッチは簡単で、テンションをかけると縛ったものが締まるのが特徴です。安全確実な結び方ではないので、簡易的に丸太などを引っ張ったり吊ったりする場合に使用されます。
まず、一結びします。
概ね、3回以上巻きつけていきます。巻きつける回数は多いほど解けにくくなります。
絞ります。
次回、「登山のロープワーク。船乗りが教えるロープの結び方その2」では、ダブルフィッシャーマンズノットなど、ロープとロープをつなぎ合わせる結び方について説明します。