26Jan
懐かしい昭和の登山装備~60年前の登山装備って?
登山を始めたころに山の先人達から頂いた旧式の装備たち。
今回は、倉庫に眠っている昭和の登山装備のうち、わかん、尻あて、ラジウスについて紹介します。
わかん
昭和30年代に手作りされた山ブドウ製のわかん
わかんは、「輪かんじき」のことで、登山では「わかん」という言い方が定着しています。
わかんは、古くから日本の豪雪地帯で使用されていて、昔は籐、現在ではアルミ製などがあります。
材質が変わっても基本的なデザインは昔から変わっていません。
わかんには平地用と山岳用があって、山岳用のわかんには斜面でも滑らないよう、フレームにスリップ止めの爪が2個ついているのが特徴です。
写真のわかんは、山の先輩が昭和30年ころに手作りしたものを譲り受け使用していました。
フレームは、山で取って来た山ブドウのつるを2本合わせたもので、市販品より一回り大きめに作ってあります。
爪は楢の木を削って自作されたもので、一般的な市販のわかんより長めに作ってあります。
登山靴の底を受ける部分は、通常は麻や化繊のロープなどが使用されますが、このわかんには革ひもが使用されてています。
このオリジナルのわかんをくれた先輩に聞いてみたところ、フレームを大きめに作って浮力を大きくしたこと、爪を長くして斜面でのフリクションを高めたこと、凍結防止のために丈夫な革ひもを使用した(化繊のロープが出回ってなかった)ことなど、独自の工夫を加えたとのことでした。
先人の知恵と技術に脱帽です。
(このわかんは、このあと現役復帰させました。→「60年前のわかんを復活させる」)
尻あて
昭和30年代に自作された犬の革の尻あて
20年くらい前までは登山用品店でもたぬきの革などの尻あてを目にしましたが、現在、尻あてをしている登山者は見なくなりました。
登山の時、尻あてを腰につけていれば、濡れた場所や泥がついた場所でも腰を下ろすことができて重宝します。
冬山では雪の上に腰かけてもお尻が濡れないですし、冷えずに済みます。
写真のものは、山の先輩が昭和30年ころに自分で犬の革をなめして自作したものですが、それを筆者が譲り受け、使用していたものです。
革は犬の背中の革で、ひもは日本軍のゲートルについていたものを流用したと聞きました。
なぜ、犬の革なのかを先輩に聞いて見たところ、犬の革は水を通しにくいから、当時は亡くなってしまったワンちゃんの革をなめして尻あてなどに加工する人がけっこういたということです。
確かに、筆者がこの尻あてを使用していたころは、春山の湿った雪の上でも尻あてに水が吸い込んで革がびしょ濡れになるようなことはありませんでした。
物がない時代における先人達の知恵と合理主義だと思いますが、動物愛護の人が聞いたらドン引きするような話でしょう。
現代の価値観と昔の価値観は違って当然です。貴重なお話だと思います。
ラジウス
昭和50年代製のマナスル126型の灯油式ストーブ(サンマイルド社製)
ふた裏には丁寧な説明も
ガソリンや灯油を燃料とするストーブ(携帯コンロ)を総称して「ラジウス」と呼ぶ場合がありますが、当時は、上の写真のような「マナスル」型のストーブを「ホエーブス」に対して「ラジウス」と呼んでいたりしました。
当時(昭和60年以前)は「ラジウス(マナスル)型」と「ホエーブス型」が2大ストーブとして、多く使われていました。
ホエーブス625型
ラジウスの歴史は古く、大正期にスウエーデンのラジウス社が製造したストーブが本家だと言われています。
日本では昭和30年代に多く出回るようになり、国産ではホープ社が「マナスル」という名前でラジウスを広めました。
写真のラジウス(マナスル)はホープ社が昭和50年代になくなってしまった後、ホープの元社員が立ち上げたサンマイルドという会社が製造した「キャンピング126ストーブ」という名称のラジウスで、元社員の方から頂いたものです。
ホープの技術が踏襲されていると思われ、外見も性能もホープ社の「マナスル126」となんら変わらない信頼性があります。
このサンマイルド社も残念ながらなくなってしまいましたが、約40年前に製造されたこのラジウスは現在でも良好に稼働できます。
現在ではガスカートリッジ式のストーブがカロリーアップしたため、わざわざ登山に重たいラジウスを持って行くようなことはなくなりましたが、釣りやキャンプに行く時には現在でも使用しています。
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