16Jan
百名山?それともお気に入りの山?
日本百名山が火つけ役となり、現在の登山ブームに至っています。
NHKの日本百名山の放送の影響で、世間では「登山=百名山」のような誤解を生んでいるところがあります。
日本百名山が登山をするきっかけになった人は多いと思いますが、山の楽しみ方には決まりはなく、百名山ピークハンティングは、たくさんある登山スタイルの一つにすぎません。
今回はピークハンティングとは違う登山の楽しみ方について考えてみます。
一つの山でも千差万別
例えば、お気に入りの山だけを登るという登山スタイルがあります。
同じ山ばかりを登る登山スタイルは、なんといってもその山を全部知り尽くすというところに醍醐味があります。
このような登山スタイルには次のような特徴があります。
第1に、同じ山でも、複数のコースがあるところでは、コースによってその登山は全く別物になります。
コースが変わると、傾斜も道のりも植生も景色も、すべて変わります。
第2に、同じコースでも天気や季節によって、難易度も雰囲気もがらりと変わります。
毎週とか毎日のように同じ山を登る人は、ほかの登山者が気づかない日々の微妙な変化にも気づくことができます。
特に、雪解けから高山植物が咲き乱れるころまでの時期までは、一週間と言っていられないくらい、山の様相は急激に変化し、その都度本当にわくわくさせられるものです。
第3に、その山の地形や特有の気象、動植物の知識が非常に豊富になります。
その山の地形や気象に詳しくなるということは、万一、悪天候や視界が効かない状態に遭遇しても、誰よりも安全に下山する力が付くということです。
第4に、同じ山を何度も登ることで、自分の筋力や心肺能力などが、上がっているのか、下がっているのかを把握しやすくなり、現在の体調や実力を計る上でのバロメーターになることです。
第5に、その山の地形に詳しくなるので、積雪期にも挑戦できるきっかけになります。
冬山も登れる実力が付いたころには、春夏秋冬、どの時期でも、どのコースでも登山を楽しむことができるようになりますし、その山について、誰よりも詳しく、誰よりも安全に登山ができるようになります。
結果的に登山の総合力が高まり、活動の幅が広がっていきます。
一般登山者でも山のプロに
一般の登山愛好家であっても、特定の山を知り尽くすということは、その山に関して言えば、プロの登山家や山岳警備隊よりもベテランということになっていきます。
海に例えるなら、海のプロと呼ばれている海上保安庁より、地元の漁師の方が、地域特有の気象や潮流、海底地形などにはるかに詳しいと言いますが、山でも同じようなことが言えます。
このように、同じ山を登る登山スタイルは、百名山ピークハンティングとは別物の登山の楽しみ方だと思います。
筆者が知る限り、百名山ブームが起こる以前は、やたらにたくさんの山頂をハンティングするのではなく、自分の気に入った山を何度も登る登山者は今より多かったように思います。
メディアやツアー会社などが、百名山ばかりを取り上げるので、世間では「登山といえば百名山」みたいなイメージが強くなったのですが、お気に入りの山を何度も登ることに楽しみを覚える登山者はたくさんいます。
百名山を完登して、燃え尽きてしまう登山者もおりますが、様々な登山スタイルがありますので、少し視点を変えて見ると登山の楽しみは方は際限なく広がっていくのだと思います。