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登山の遭難対策~携帯かアマチュア無線か?

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登山の遭難対策

~通信手段の最後の砦はアマチュア無線

登山中にアクシデントで救助を要請しなければならない時には携帯電話が有効です。

通信エリアの拡大で今やどこの山でも山頂や高い尾根に登れば必ず「圏内」になります。

しかし、アクシデントが発生した場所が沢筋や標高の低い場所で「圏外」だったらどうしますか?

パーティーのメンバーに頼んで、先に下山してもらい救助要請するか、あるいは、電波のある高所まで誰かに行ってもらい、携帯で通報するというのが現実的です。

どちらか早い方法が良いでしょう。

 

携帯電話の強みと弱点

では遭難した時の通信手段は携帯電話があるから絶対に安心なのでしょうか?

最悪の事態を考えてみたいと思います。

ひとつは、アクシデントが発生した場所が圏外で、単独行だったり、付近に登山者がいないような場所だった場合はどうすればいいのでしょうか?

登山ブームで今時そんな場所はないと思うかもしれませんが、人気の山で登山者がたくさんいたとしても、崖から滑落してしまい一命をとりとめたけど、そこは圏外で携帯が使えないという可能性は十分に考えられます。

あるいは、圏内なのに不幸にも携帯のバッテリー切れということだって考えられます。

こういう事態にも対処できる方法はないものでしょうか?

まずは、バッテリー切れという基本的なことを防ぐために、入山したら携帯はなるべく使用しない、電源を切るなどして下さい。

どうしても使用したければ、予備バッテリーを必ず持って行きましょう。

今時のスマホはガラケーとは比較にならないほどバッテリーが持ちません。

通信手段としてはガラケーの方が優秀ですが、スマホは圏外でもGPSの位置情報が受信できますし、スマホ用地形図アプリも登場していますので、バッテリー切れさえなければスマホは非常に有効です。

 

アマチュア無線は有効か?

さて、遭難場所が圏外で、登山者がいない、身動きできない時の最後の砦を私は用意しています。

携帯のなかった時代の登山の通信手段、「アマチュア無線機」です。

アマチュア無線のハンディ機と呼ばれる小型のトランシーバーは結構な出力があります。

オプションでアンテナを取り替えれば更に電波はよく飛びます。

呼び出しチャンネルという誰もが聞いている周波数がありますので、電波を出して遭難したことを呼び掛けます。いわゆる、SOSです。

遭難場所にもよりますが、運が良ければ誰かが電波をキャッチしてくれる可能性があります。

応答があればその人に救助要請を依頼しましょう。

携帯、アマチュア無線に限らず電波は標高が高い場所ほど遠くに届きますし、受信感度も上がります。

どこの山頂付近でも携帯が圏内なのは、山に携帯の基地局があるからつながるわけではなく、標高が高くて受信感度が上がるから圏内になるのです。

アマチュア無線もなるべく標高が高くて、見通しの良い場所ほど電波は遠くに届きます。

どこの町にいってもアマチュア無線のすごいマニアっているものです。

家の敷地に立派なアンテナを立て、常時無線機をオンにしている人もいます。

あるいはトラック運転手がアマチュア無線機を積んでいる場合も多く、トラックが峠など標高の高い場所を通過中なら偶然電波を拾うかも知れません。

このように遭難場所が圏外で絶望的でもアマチュア無線が最後の砦になる可能性は十分にあります。

先日、平成21年1月に発生した積丹岳の遭難事故の判決がありましたが、この事故では遭難者は無線機を使用して山頂付近から下山したメンバーに位置情報を通報しています

使用した無線機はアマチュア無線だったのかどうかは分かりませんが、携帯が使えなかったから無線機を使った可能性があると思います。

アマチュア無線は免許を取らなくてはいけませんが、一番下級の免許なら試験はごく簡単で、小学校高学年以上の学力なら誰でも合格できます。

携帯が普及し、アマチュア無線を登山に持って行く人はほとんどいないと思いますが、私は単独行が多く、登山者の少ない山ばかりを行きますので、携帯はガラケー、位置情報はハンディGPS、そして最後の砦のアマチュア無線機を必ずザックに忍ばせています。

念には念を入れたい人は検討して見てはいかでしょうか。

 

ヒトココを持っていれば絶対安心?

近年「ヒトココ」という小型の発信器が注目されています。

これはGPSとは違い、発信器の電波を直接探索することで行方不明者の位置を特定するという機械です。

警察などへの登山届にもヒトココの発信器のIDを記載する欄ができています。

ヒトココは機械だけを購入することもできますが、ココヘリというシステムに入会すれば、年間数千円の会費で発信器がレンタルされ、万一遭難した場合にはシステムを運用している会社のヘリが無料で出動、捜索をして遭難位置を警察などに通報するというものです。(出動回数などには条件があるようです)

ヘリが持っている受信機は、遭難者から2,3km以内の距離なら電波をキャッチできるとのことです。

このシステムは、費用対効果に優れていると思いますが、ヘリで捜索してもらうのには、誰かが出動を依頼しなければなりません。

異変に気付いた遭難者の家族が通報するパターン、警察などに登山計画を提出していて下山が遅延した場合に警察が自動的に捜索を開始するパターンなどがあると思いますが、一刻を争う場合には遭難現場から通報する必要がありますので、やはり登山者自信が携帯電話やアマチュア無線機などの通信手段を確保しておくことが必要であると思います。

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プロフィール



初登山は雌阿寒岳。

学生時代に山岳部リーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。

以来、北海道の山を舞台にオールシーズン単独行にこだわり続け30年。

現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのアマチュア登山者。



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