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元山岳部部長の登山講座

沢登りシューズ、地下足袋の選び方

沢登りシューズ、地下足袋の選び方

暖かい季節になったらそろそろ沢登りの準備です。

今回は沢登りに使用する靴の選び方について説明します。




沢登りには地下足袋にわらじスタイルが最強だった

昭和のころに沢登りの主流であった、地下足袋にわらじスタイルですが、現在ではほぼ見なくなりました。

平成の前半ころまでは、沢登りシューズ(沢靴)と地下足袋わらじの利用者はまだ混在しており、地下足袋わらじは根強い人気がありましたが、わらじ作りの職人さんが少なくなるのと同時に、わらじの価格も上がり、現在ではわらじを自作する一部の沢登り愛好家を除き、地下足袋わらじスタイルはほぼ絶滅しました。

わらじは、基本的にはフエルト底と似たような特徴(コケやぬめり強く、岩や高巻きではやや不利)がありますが、フエルトよりも全体的にフリクションが高く、沢登りシューズ(沢靴)とは違った安定感がありました。

わらじは消耗品であり、歩いているうちにちぎれてなくなったりします。

日帰りの沢登りでも必ず予備が何足か必要になりますので、価格が高くなった現在では、ランニングコストがかかり、現実的な装備ではなくなってしまいました。

ですので、現在では荷造りロープなどでわらじを自作する場合を除き、利用者はほぼいなくなりました。(荷造りロープを使用した、わらじの自作方法については「本物に近づいた!PPテープ新型自作わらじのレビューと作り方を読んでみて下さい。)

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沢登りに使用する履物の種類と特徴

沢登りに使用する履物には、色々な種類のものがあり、メーカーなどによって呼び方やカテゴリー分けが統一されていませんが、ここでは、靴の形状やソールの形状の違いにより以下のように分類してみます。

まずは、「沢靴(沢登り専用シューズ)」と、伝統的な「地下足袋」に大きく分けてみました。

沢靴(沢登り専用シューズ)には、「渓流シューズ(ウエーディングシューズ)」などの「シューズ系」のものと、「渓流タビ(沢タビ)」などの「タビ系」のものがあり、シューズ系、タビ系、それぞれにラバーソールのものと、フエルトソールのものがあります。

伝統的な地下足袋には、ラバーソールのもの(農業用、とび職用などの地下足袋)、フエルトソールのもの(フエルト地下足袋)、ラバーソールに鉄のスパイクピンが付いたもの(スパイク地下足袋)などがあります。

なお、フエルト地下足袋とスパイク地下足袋は単体でも沢登りに使用できますが、ラバーソールの地下足袋の場合は、ソールのフリクションにもよりますが、通常はわらじなどを併用して使用します。

それぞれの一般的な特徴ですが、渓流シューズは、ソールもアッパーも比較的堅牢に作られており、渓流タビや地下足袋に比べ、足を痛めづらく、疲れにくいという特徴があり、荷が重たい場合は有利とされています。

これに対し、渓流タビや地下足袋は、ソールもアッパーも比較的薄く、柔らかく作られており、足首の稼働がしやすく、足裏やつま先に岩や沢床の感触が伝わりやすいなどのメリットがある一方、岩に足をぶつけて痛めたり、長時間の歩行で足裏が痛くなったりといった特徴があります。

また、ソールの違いによるそれぞれの一般的な特徴ですが、ラバーソールは、岩(特に乾いた岩に強い)を得意とし、泥、草付きにも良く、コケやぬめりには弱いという特徴があります。

フエルトソールは、コケやぬめりに強く、岩はラバーソールには及びませんが、それなりのフリクションがあり、泥や草付きにはやや弱いという特徴があります。

スパイクソールは、泥や草付きに強く、コケやぬめりと岩に対しては、フエルトソールより若干劣りますが、それなりに安定したフリクションがあり、凹凸のないすべすべした岩には弱いという特徴があります。

ちなみに、わらじの場合は、先にも説明したように、フエルトソールの特徴に似ているのですが、フエルトソールよりも全ての場面においてフリクションが高くなります。(わらじには、藁製の市販のわらじ、PPロープ製の自作わらじなどがありますが、藁製の方がややフリクションが高くなります。)

ソールについて一口で言いますと、ラバーソールは高巻きが多かったり、積極的に岩を登るようなルート向け、フエルトソールはコケやぬめりが多いルートや、危険な高巻きなどが少ないルート向け、スパイクソールはラバーソールとフエルトソールの中間的な性能ということになると思います。

また、最近では、フエルトソールでの高巻き時に、チェーンスパイクを併用し、フエルトソールの弱点を克服するといった方法を取る場合もあります。

どのような形状の靴を選ぶのか、また、どのようなソールを選ぶのかについては、前述のとおり、靴によって個性がありますので、ルートの状況や、歩行技術、登山者の好みなどによって決まると思います。

一般的には、沢に慣れていない初心者にはフエルトソールのものが無難とされ、上級者は多様な組み合わせをしたりします。

 

沢靴/渓流シューズ(ウエーディングシューズ)

渓流シューズは、先にも紹介したように、渓流タビや地下足袋に比べ、ソールやアッパーが厚く作られており、トレッキングシューズを沢登り仕様にしたような靴です。

渓流シューズのソールはフエルトのものと、ラバーのものに分かれ、価格は15000円~20000円程度です。

フエルトのものはメーカーによるソール交換が可能な場合が多く、また、フエルト単体でも販売している場合もありますので、DIYで安くソール交換できる場合もあります。

ラバーソールのものは、メーカーではソール交換不可としている場合が多いのですが、メーカーが交換不可としている場合でも、登山靴修理専門業者がソール交換に対応している場合もあります。

キャラバン KR_3XF(フエルト底)


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モンベル サワートレッカー(フエルト底)

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キャラバン KR_3XR(ラバー底)


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モンベル サワークライマー(ラバー底)

モンベル サワークライマー

沢靴/渓流タビ(沢タビ)

渓流タビ(沢タビ)にも、フエルトソールとラバーソールのものがあり、価格は10000円前後です。

アッパーは保温性のあるネオプレーンを使用しており、足裏や指先の感触が伝わりやすいのが特徴です。

キャラバンの渓流タビと、モンベルサワタビは先割れになっていますが、モンベルのサワーシューズは先割れではなく、靴の中で先割れになっています。

キャラバン 渓流タビ(フエルト底)

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モンベル サワーシューズ(フエルト底)

モンベル サワーシューズ

モンベル サワタビ(ラバー底)

モンベル サワタビ

 

地下足袋/ラバー底

農業やとび職などに使用される地下足袋で、いわゆる昔からある一般的な地下足袋です。

価格は3000円程度と、他の地下足袋よりもややお手頃な価格です。

沢靴やフエルト地下足袋など、沢に特化した履物が登場する以前は、沢登りにはこのタイプの地下足袋に、わらじを併用するスタイルが多かったように思います。

フリクションはあまり期待できないので、わらじ(藁製の市販品かPPロープで自作)の併用は必須になります。

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地下足袋/フエルト地下足袋

フエルト地下足袋は、底にフエルトが貼ってある地下足袋で、価格は4500円程度と、渓流タビよりもかなり安く手に入ります。

見た目や特徴は、フエルトソールの渓流タビとほとんど変わりませんが、渓流タビとの違いは、アッパーがネオプレーンではなく、木綿とゴムであり、靴ひもや締め付けベルトなどはなく、留め具はコハゼのみです。

耐久性は見た目よりも良く、フエルトがすり減って使えなくなる前に、アッパーが消耗してしまうようなことはありません。

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地下足袋/スパイク地下足袋

スパイク地下足袋は、厚いゴム底に、鉄のスパイクがたくさん付いた地下足袋で、価格は4000円~5000円程度です。

フエルト地下足袋に比べるとソールが厚く堅牢に出来ているので、足裏やつま先の感触はフエルト地下足袋よりも繊細ではありませんが、その分、足へのダメージは少なくなります。

つま先は先割れのものと、先は割れてなく、足袋の中で先割れになっているものがあります。(先が割れていないものは、カッターなどで、つま先に切れ目を入れることで先割れにカスタムすることができます。)

わらじとの併用も可能で、沢部分はわらじ、尾根はスパイクといった使用法もできます。(手作りPPロープわらじを使用、藁製わらじはスパイクピンの影響で強度が持たない)

アッパーは木綿の上にゴムで補強してあり丈夫です。

スパイクは荷の重さにもよりますが、沢登りなら10回くらい使用すれば、スパイクが摩耗し、沢登りでは使用できなくなりますが、アッパーやソールは耐久性がありますので、スパイクが減ったあとは、通常の登山に使用可能です。

(スパイク地下足袋の使用限界については「沢登り。スパイク地下足袋の使用限界を検証した」を読んでみて下さい)

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フエルトサンダル

上記で紹介した、沢靴や地下足袋のカテゴリーではありませんが、沢登り用の履物にはサンダルタイプのものもあります。

ソールにフエルトが貼ってあるサンダルで、言わばフエルト製のわらじのようなものです。

ソールがゴム製の渓流タビや地下足袋などに装着することによって、フエルト底に早変わりします。

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脚絆(スパッツ)と靴下

沢登りでは、沢靴や足袋の中に砂や小石が入らないようにしたり、脛の防護などの目的で、通常は脚絆(スパッツ)を装着します。

脚絆には、保温性のあるネオプレーン製のものと、昔ながらの木綿製(ゴムが付いていて伸縮する)などがありますが、沢靴や地下足袋とのマッチングで決めると良いでしょう。(履き口がネオプレーン製で足首が締まっているような構造の沢靴や、地下足袋で脛まであるタイプのものなどは、異物が入り込みにくいので、スパッツの装着を省略できる場合もあります。)

靴下は、普段履いているもので構いませんが、ネオプレーン製の靴下は足が冷えづらいという利点があります。

ネオプレーン製の靴下を使用する場合、普通の靴下より厚みがあるので、沢靴や足袋は厚みの分を考慮してサイズを決める必要があります。

渓流タビや地下足袋を履く場合の靴下は、先割れか、指付きのものを選びます。

キャラバン  渓流 スパッツプロ2 (ネオプレーン製)

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丸五 長脚絆( 木綿製)


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キャラバン 渓流ソックス 先割れなし(ネオプレーン製)

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プロモンテ 沢用先割れウエットソックス(ネオプレーン製)

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 ランニングコストは?

ランニングコストについてですが、本体価格とソールの寿命やソール交換の有無によって変わりますが、平均的な寿命をフエルト底(沢登り10回程度)、ラバー底(沢登り30回程度)、スパイク底(沢登り10回程度)とし、渓流シューズ(フエルト底)のみDIYでソール交換(交換用フエルトは3000円程度)を行い、ほかはソール交換を行わない(使い捨て)と仮定して、沢登りを30回行った場合のランニングコストですが、最安が渓流タビ(サワタビ、ラバー底)で、ついでフエルト地下足袋、スパイク地下足袋、渓流シューズ(ラバー底)、渓流シューズ(フエルト底)、渓流タビ(フエルト底)の順になります。

ソール交換を業者に依頼する場合、メーカーや業者にもよりますが、修理代金は概ね1万円程度になります。

フエルト底の場合、ソール交換をメーカーに依頼できる場合が多いですが、ラバー底は交換に対応していない場合があります。(登山靴修理専門業者が対応可能な場合もあります。)

また、ソール交換ができるといっても、そう何回もソール交換ができるというわけではなく、アッパーの傷み具合によっては、新品のシューズを買い直すことになります。

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プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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