28Aug
カッパ(レインウエア)の耐水性・透湿性・強度とは?
防水透湿性のカッパの性能を表すものに、耐水性と透湿性と生地の強度があります。
登山に適したカッパの耐水性・透湿性。強度はどれくらいなのでしょうか?
今回は耐水性と透湿性と強度について説明します。
耐水性とは
耐水性とは、生地にしみ込もうとする水の圧力を耐水圧で表したもので、JIS規格で検査されます。
試験方法の詳細は省きますが、わかりやすく言うと、例えば耐水圧10000mmなら、生地1平方センチメートルの上に水柱を立て、その柱の高さが10000mm(10m)でも生地に水がしみ込まないということになります。
耐水圧は高ければ高いほどカッパの性能は良いということになりますが、耐水圧の目安として、実際の雨で言うと、
- 嵐 20000mm
- 大雨 10000mm
- 中雨 2000mm
- 小雨 300mm
程度になります。
また、傘の耐水圧は
200~500mm程度
とされ、体重75kgの人が、濡れた場所に座った時のお尻の圧力は
約2000mm
濡れた場所へ膝まずいている時の膝の圧力は
約11000mm
となっています。
従って、キャンプやゴルフなど、ほとんどの用途ではカッパの耐水圧は10000mm以上あれば十分とされ、登山では暴風雨に耐え、岩や地面に膝やお尻を着くこともあり、ザックのベルトが肩に食い込んだりもしますので、一般的に20000mm以上が必要だとされています。
透湿性とは
透湿性とは、生地1㎡あたり、24時間で何gの水蒸気が透過したかを透湿度で表したもので、こちらもJIS規格で試験されます。
例えば、10000g/㎡/24hであれば、24時間で1平方メートルあたり、10000gの水蒸気の汗を透過する能力があるということです。
人間の1時間あたりの発汗量は、
- 安静時 約50g
- 散歩 約500g
- ランニング 約1000g
が一般的な目安です。
登山はランニングと同じく激しい運動と言えますので、1時間あたり1000gの汗をかくとすれば、24時間では24000gの汗が全身から出ることになります。
仮にこの汗を全部水蒸気として透過させるためには、カッパの透湿度はどのくらい必要かと言えば、カッパの表面積は約2平方メートルですから、24000gの水蒸気を2平方メートルのカッパから24時間で透過させる能力が最低必要になります。
透湿度は1平方メートルあたりの透過量で表しますので、24000gを2で割ると12000gになりますから、登山用のカッパに最低必要な透湿度は12000g/㎡/24hということになります。
登山用品メーカーで出しているカッパは筆者の知る限り、すべてこの数字をクリアしています。
透湿度の比較に注意!透湿度の試験方法が違うと性能が比較できない
透湿度の試験はJIS規格(JIS L1099)で決められており、A1法、A2法、B1法、B2法の4種類が主な方法です。
ゴアテックスをはじめとする多くのメーカーでは、「B1法」の数値を公表していますが、中にはB1法以外の試験方法であったり、
試験方法自体を公表してないメーカーも多くあります。
カッパの性能を数値で比較する際、同じ試験方法でなければ意味がなく、ユーザーにとってはまったく困ったものです。
ゴアテックスの透湿度は、以前、B2法で測定した「13500g/㎡/24h」とされていましたが、現在ではB1法で表示されております(モンベルのゴア製品)。
参考までに、各メーカーの透湿度、試験方法は以下のようになっています。
- ゴアッテクス3レイヤー 25000g/㎡/24h(B1法)
- ゴアッテクス3レイヤーCニット 35000g/㎡/24h(B1法)
- ドライテック(モンベル) 15000g/㎡/24h(B1法)
- ベルグテック(ミズノ) 16000g/㎡/24h(B1法)
- エバーブレス(ファイントラック)10000g/㎡/24h(A1法)
上記をみると、エバーブレスだけがA1法で、数字も他よりも低めです。
これについては、A1法はB1法に比べ、より水蒸気が透過しづらい環境(実際の着用条件に近い環境)で試験しますので、A1法の方が低い数字が出やすいとされています。
耐久性(強度)とは
登山ではカッパを枝に引っ掛けたり、岩に擦ったりと登るコースのバリエーションによっては薄くて軽量なカッパだと、心もとないことがあります。
また、真夏だけではなく、春や初冬の山では防寒ジャケット(ヤッケ)がわりに防水透湿性カッパを着る場合もあります。
このようなハードな着方を想定しているのであれば、カッパの生地は一般的に厚めのものが適しています。
ゴアテックスなどの透湿性のカッパの断面は、2層、2.5層および3層になっていて、薄い防水透湿性フィルム(メンブレンといい厚さは約0.01mm)の表側と裏側にナイロン生地を貼り付けたものが3層、メンブレンの表側にナイロン生地を貼り付け、裏側に特殊素材をコーティングしたものを2.5層、メンブレンの表側にナイロン生地を貼り付け、裏側はメッシュ生地など(メンブレンには貼り付いていない)のものを2層と言います。
一般的には2層や2.5層より、3層(3レイヤー)の方がは強度が高いと言えます。
また、貼り付けている生地の厚さや耐久性によっても、カッパの強度が変わります。
生地の厚さは「D(デニール)」で表示され(デニールとは生地を編んでいる糸の太さのことです)、登山用のカッパには、15デニール程度から厚いものでは70デニール程度のものまであります。
一般的には数値が高いほど生地は厚く丈夫になりますが、薄くても強度の高い生地もありますので、単純にデニールだけでカッパの丈夫さが決まらないこともあります。
防水透湿性カッパを選ぶ場合、単に価格で決めるのではなく、ハードな縦走や残雪期にも使用したいのか、夏の低山だけに使用したいのかなど、目的をきちんと決めて、それに見合った商品を選ぶことになります。
参考例 夏山一般向け 20D ゴアテックスマイクログリットバッカー3層
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参考例 夏山縦走~残雪期向け 70D ゴアテックスCニットバッカー3層
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登山用のカッパに必要なスペックとは
耐水性、透湿性、強度については説明したとおりですが、実際の登山でどの程度の性能が必要なのかという疑問があると思います。
耐水性で言えば、登山では20000mm以上の耐水圧が推奨され、実際に登山メーカーが出しているカッパはその数値をクリアしています。
耐水圧は高いにこしたことはありませんが、色々なカッパを着用してみての個人的な感想を言えば、20000mm以上ならおつりがくるくらいの性能、10000mmでも水が浸水することはほとんど考えられず、かなり過酷な状況でない限り、登山の様々な場面で使用に耐える性能と言えそうです。
浸水を気にするなら、むしろ、ファスナーやポケットの雨返し、ファスナーの止水処理(暴風雨ではこういう所からじわじわ浸水します)、フードの形状とドローコードの絞り具合(顔面からの浸水は上半身を濡らす)など、デザインの細かいところを気にした方が良いと思います。
一流品はそういうところはきちんと処理されている場合が多いのですが、リーズナブルな商品は生地の性能はそこそこでも、こういう所が工夫されていなかったりしますので良く見て買わなければなりません。
透湿性についても、数字が高いものにこしたことはありません。
登山メーカーから出ている商品はおおむね15000g/㎡/24h以上の透湿度をかかげていますので、登山用としてはこのあたりが適当な性能だとも言えます。
一方で、作業用品メーカーが出しているカッパで、ブリザテック(東レ)、エントラント(東レ)などは、10000g/㎡/24hの透湿度をかかげています。
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透湿度は高ければ高いほど良いに決まっていますが、急な登りで盛んに汗をかいている時は最高品質と言われるゴアテックスを着ていても、30分もすれば蒸れて汗だくになってしまうのが現実です。
筆者は2000g/㎡/24hの激安の作業用カッパを着て夏の低山を登ったことがありますが、ゴアテックスより当然蒸れますが、汗が抜けている感じは体感でき、日帰りの低山ならぎりぎりの性能ということがわかりました。
2000g/㎡/24hでぎりぎりなら10000g/㎡/24hの性能があれば、けっこうゴアの使用感に近づくのではないかと思います。
登山用のカッパに最低必要な透湿度は12000g/㎡/24hと前項で書きましたが、上下数千円で買える作業用カッパが10000g/㎡/24h程度の性能であることを考えると、これを選択肢から切り捨ててしまうのは非常にもったいなく感じます。
個人的には透湿度は10000g/㎡/24h以上あれば登山に適さないとまでは言えないのではないかと思います。
ゴアテックスでも暑い時は必ず蒸れますので、透湿度ばかりに気をとらわれず、ベンチレーション(空気抜きのスリット)など蒸れない工夫がしてあるものは蒸れに対して強力なアイテムになりますので、そういったデザインも考慮して総合的に決めることになります。
生地の強度に関しては、薄くて軽いモデル(2.5層など)や厚くてハードに使える丈夫なモデル(3層)がありますが、自分の登山スタイルに見合ったものを選ぶことになります。
縦走、藪こぎなどオールラウンドに登山を楽しみたい人は3層で生地の厚目な丈夫なモデルになるでしょうし、夏の日帰りの低山しか行かない人なら、3層で生地が薄いタイプか、2層や2.5層でも良いと思います。
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