山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

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元山岳部部長の登山講座

登山とお酒の不思議な関係

登山とお酒の不思議な関係

山好きな人は陽気でお酒が好きな人が多いようです。

山小屋やテント泊でビールを飲んで疲れ癒している人などもよく見かけます。

社会人山岳会の会合や登山会なんかでは、夜になると必ずお酒が出てきます。

今回は飲酒が登山に与える影響について書いていきます。




飲酒は確実に体力を奪う

さて、飲酒と登山の体力の関係を考えると、当たり前ですが飲みすぎは確実に体力を奪います。

翌日にハードな山行を控えている場合には少量の飲酒でも影響が出てしまいます。

翌日が登山でも、あまり気にせずに飲む人がけっこういると思いますが、それは山好きの人は人並み以上の体力の持ち主が多いからだと思います。

幕営地や山小屋で飲みすぎたりすることは、苦しい山行を強いられるきっかけを作ってしまいますし、山中では他人の迷惑もあるので、常識的な時間帯に適度に味わって遅くても21時ころまでには就寝するのが一般的ではないかと思います。

飲酒については、登山に限らずスポーツ全体に言えますが、大会の前などに安易に飲酒すると大事な場面で踏ん張りが効かなくなります。アマチュアでも競技をやっている人なら、種目を問わず誰でもわかっていることだと思います。

プロ級のハードな登山ではなくて、趣味の範囲で登山を行うとしても、そもそも登山自体が消耗が厳しいスポーツだということを知っておく必要があります。
(登山の平均的な消費カロリーは条件にもよりますが、1日3000kcal~5000kcal以上です。信じられませんが、ボクシングの試合やフルマラソンより消費カロリーは多いと言われています。)



飲酒で体力が回復?

お酒は適度にということがわかりましが、飲酒についてひとつ面白いことがあります。

筆者は、厳しい登山の時にはサプリメントを飲みながら歩いています。

体力が厳しい時のサプリメントの補充は非常に有効です。

(サプリメントの詳しい記事は「バテない登山をめざせ」を読んでみて下さい)

現在のようにサプリメントが充実していなかった時代、縦走などの長大ルートを歩く時によく缶ビール(350ml)をザックに忍ばせていました。

最初は単に、「おいしい」から持って行ったわけですが、登りで、いよいよ息が上がってしまいそうな時に、缶ビール1本を飲むのですが、不思議とそのあとの登りが急に楽になるのです。

ほんの少し、酔いがまわって疲労が一時的に麻痺したのかと思っていましたが、その後の登山でも、登りの厳しいところで缶ビールを飲むと不思議と体が軽くなり、元気が出ました。

何度、試しても必ず元気が出ましたので、少量のアルコールが登山に有効なのではないかという仮説を立ててみました。

※念のためですが、筆者の場合、登りで汗だくになっている時に缶ビール1本を飲んでも、酔いでふらつくようなことはありませんが、アルコールに弱い方は危険なので絶対に試さないで下さい。また、アルコールは脱水症状を起こしますので、熱中症に弱い方も山での飲酒はやめた方が賢明です。

 

登山とアルコールの関係を実験

ある登山の時に、アルコールが登山にどう影響するのか実験してみました。

缶ビールのアルコールが疲労回復と関係しているのなら、焼酎や日本酒でも同じ結果が出るのではと思い、20°の焼酎を少量持参して厳しい登りの時に飲んでみるとこにしました。

缶ビール350ml1本のアルコール量は20°の焼酎で換算すると約90mlになるので、2口ほど焼酎を飲んでみました。

飲んだ結果、若干の酔いと気持ち悪さが現れただけで、少量のアルコールは疲労回復とは無関係どころか、悪影響であるという笑えない結果が出ました。

激しい運動中にアルコールを飲んだらどうなるのかは、スポーツ選手じゃなくてもわかります。

おバカな実験結果となりましたが、では、なぜ缶ビールを飲んだ時に体が楽になったのか?謎が残ります。

 

吸収のいい糖質は登山に有効

登山中にビールを飲んで元気になった理由は、少量のアルコールの影響ではないことがわかりましたが、なぜビールで元気になったのかを推測して見ます。

ビールには多くの糖質が含まれています。

なので、ビール特有の糖質が体内に絶妙に吸収するのではないか?と推測しました。

消去法で行くとそうとしか考えられません。

登山では行動中に糖質の不足を補うために飴玉を舐めたりするのが一般的ですから、液体の糖質であるビールは当然吸収がいいはずです。

糖質の吸収でいうと、「一晩ふたを開けて炭酸を抜いたコーラ」がいいと言う話があります。

炭酸を抜く理由は、激しい運動中にげっぷが出るのを防止するのと、コーラのふたを開けた時に噴出するのを防止するためです。

現在、筆者はサプリメントを飲んで体力を回復させていますし、缶ビールはザックが重くなるのでほとんど持って行かなくなりました。

もし、自分もやってみようと思う方がいましたら、ビールは登りの最中で体が熱くて汗をたくさんかいている時以外は、飲むと逆に体が冷えてしまうので注意が必要です。(気温が高く、熱中症の危険がある場合は、お酒は脱水を起こしますので飲まない方が良いです)

体調がすぐれない時も、飲まない方が良いです。飲むと逆に調子が悪くなることがあります。

それから、いうまでもありませんが、ビールを飲んでから下山までの時間が十分に長くないと、下山後もアルコールは当然残ってしまいますし、アルコールに弱い方は注意力が低下し、危険なので試さない方が良いでしょう。

その点、ノンアルコールビールや、炭酸の抜けたコーラなどは安全で、かつ同じ効果が得られるのではないかと思います。






プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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