2Jun
懐かしい昭和の登山装備。ホエーブス
現在キャンプ用ストーブはガスカートリッジ式が主流ですが、かつてはガソリンや灯油式のゴツくて重たいストーブが主流でした。
今回は懐かしい昭和の登山装備のうち、「ホエーブス625」を紹介します。
ホエーブスって?
ホエーブスはオーストリア製のキャンプ用ストーブです。
当時、登山者から、略して「ブス」と呼ばれることもありました。
燃料はノズルを交換することによって、灯油とガソリンの両方が使用できます。
ホエーブスにはNO.625とNO.725の2種類があり、625は大型ストーブ、725は小型ストーブです。
ホエーブスは大正期から平成4年まで製造されていましたが、現在は製造されていません。
日本の栄製機という会社が一時期、復刻版を製造していました。
倉庫に眠るホエーブスは今も現役
筆者が昭和60年ころ使用していた、ホエーブスを倉庫から出してみました。
円筒形の特徴的な缶に本体が収められています。
当時、キスリング(キャンバス生地の大型ザック)にパッキングする時にほかの装備とぶつかったりしていたので、缶がベコベコにつぶれています。使い込んでいるホエーブスの缶は大概こんな感じになっています。
缶は非常に丈夫で、炊事の時にはよくこの缶の上に腰かけていました。
缶はベコベコですが、本体は意外ときれいです。
風防とバーナー部ヘッドの部品(サイレンサー)を取り外してみます。
本体のタンク上部のくぼみは予熱皿で、ここでメタ(固形アルコール)やアルコールを燃やし、バーナー部ヘッドをプレヒートします。
メタがない時に灯油を直接予熱皿に入れてプレヒートしたせいで、予熱皿の上部がススで真っ黒になっています。
点火する前にタンク内の圧力を上げます。
燃料が入ったタンクの中にポンピングしてエアーを入れタンクの圧力を上げておきます。
圧力が上がったら、予熱皿でアルコールを燃やし、バーナー部ヘッドを加熱します。
加熱後、赤いハンドルを開けるとバーナーのノズルから燃料が噴き出します。
噴き出した燃料(灯油、ガソリン)は、十分にプレヒートされたバーナー部ヘッドに当たった瞬間に気化し、ガスになって青白く燃焼します。
点火はライターやマッチを使いますが、プレヒートが不十分だと燃料は液体のまま出てしまうので、点火の直後、赤い炎が火炎放射器のように燃え上がり、まつ毛や前髪を焼いてしまうことがあります。
ですので、真冬など気温が低い時には特によくプレヒートします。
ホエーブスはマナスルやラジウスにくらべ、バーナー部ヘッドの作りが大きいので、プレヒートに時間がかかります。
ポンプからピストンを外すと、ピストンの先端にはエアーを送り込むための革(ポンプカップ)が付いていて、これが経年使用で摩耗するとエアーが入らなくなってしまいます。
なので、予備のポンプカップは常備しておきます。
下の画像では、革はずいぶんと摩耗しています。
赤いハンドルのシャフトの先っぽは、不慣れな人が扱うと力の入れ過ぎでよくねじ切れて破損します。山で壊れたら、ペンチで直接バルブを開け閉めしなければなりませんでした。
下山後、壊れたハンドルはカナノコで切って直しますので、壊れる度にだんだんシャフトは短くなっていきます。
こちらは、専用スパナと予備パーツです。
ホエーブスはノズル(ニップル)とスス取り(クリーニングニードル)を交換することで、灯油もガソリンも両方使えます。
ニップルに「E」の打刻があるものが灯油用、「G」の打刻があるものがガソリン用です。
灯油用ニップルとガソリン用ニップルの違いは中央の穴の径です。
ガソリン用の方が穴がやや大きくなっています。
先に細い針がついている部品はニップルのスス取り(クリーニングニードル)です。
バルブを開け閉めする度に、このクリーニングニードルが上下してニップルの穴を掃除します。
クリーニングニードルにも、灯油用とガソリン用があり、同じく「E」と「G」の打刻があります。
ガソリン用の方が、針がやや太くなっています。
もう、30年使っていませんが、灯油がそのまま入っていましたので点火してみました。
青白い炎とともに、懐かしい轟音が響きました。
昔、お世話になったホエーブス。
重たいので、登山にはもう持って行きませんが、今でも十分使えますのできれいに磨いてキャンプ用に復活させようと思います。
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