山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

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元山岳部部長の登山講座

懐かしい昭和の登山装備。屋根型ランタン

倉庫に眠る昭和の登山装備たちを紹介します。

今回紹介するのはロウソクを使用する「屋根型ランタン」です。

登山中のテント生活において、夜間の照明は現在ではLED製のヘッドランプやランタンなどが使用されていますが、LEDが登場する以前は電池の寿命が短かかったことから電気製の照明ではなく、ロウソク式や灯油、ガソリン、ガスなど燃料系のランタンを使用したりしていました。

中でも、ロウソク式は燃料系のランタンよりも当然暗いのですが、パッキングでかさばらないことから、登山ではロウソク式のランタンを使用することが多くありました。




トップ製屋根型ランタン

かつて東京トップ(のちにニュートップ)という登山用品の国産メーカーがありました。

紹介するのは、そのトップが作ったロウソク式の家型ランタンです。

このランタンは、筆者の父が昭和30年代に登山用として購入したものですが、その後筆者が高校時代(昭和60年ころ)に登山やキャンプ用として使用していました。

屋根に「CAMPING LIGHT FOLDING LANTERN TOP ALPINE EQUIPMENT」と表示されている。

材質はブリキっぽいですが、アルミ合金のようです。

ランタンは組み立て式で、床に置いたり、吊り下げたりして使用します。

床に置く。

吊り下げる。

中央にはロウソクが1本立てられるようになっています。

ロウソク立てはけっこう太いので、使用するロウソクはそれなりの太さ以上でなければロウソク底部の穴には入りません。(写真のロウソクではサイズが細かったので、無理に差し込みました。)

このロウソクのサイズでは細かった

ロウソク立ての芯はやや太い

ランタンは吊り下げても使用できるのですが、これが要注意で、長時間使用すると溶けた蝋が底部に溜まるのですが、吊るすとランタンが傾いたり(このランタンは何故か吊るすと傾きます)、風で揺れたりしますので、溜まった蝋が底部の隙間から下へ滴り、テント内は大惨事になります。

なので、テント内では吊り下げず、床において使用していました。

底部に蝋が溜まった跡がある。

吊るすとやや傾く。

サイズは26cm×12cm×13cmほどですが、畳むと20cm×12cm×3cmと薄っぺらくなりますのでザックへのパッキングがしやすかったです。

たたむとコンパクト。



組み立て方はとても簡単で、部品を取り外したりすることなく、折りたたんだランタンをパタパタと開くだけです。

①収納状態

②屋根を開く

③壁部分を開く

④同上

⑤底部を開く

⑥屋根の煤受けを開く

⑦完成

窓は3面付いていて、それぞれに耐熱の薄いフィルムがありましたが、2面は破損したので1枚しか付いていません。

このフィルムは「雲母(うんも)」とか「マイカ」といって、鉱石を薄く加工した天然素材です。

雲母は耐熱性にとても優れていて、昔のストーブの燃焼室の窓なんかによく使用されていました。

雲母を通した炎の明かりは独特の輝きで、ロウソクの燃焼する匂いとともに懐かしい山の思い出が蘇ります。

正面の窓にはまだ雲母が残っている

側面

側面

雲母。薄いのであまり乱暴に扱うと破損する。

ボヤーっとした独特の炎の輝き。

 

背面にはロウソクを交換するための扉が付いています。

ランタンの背面。

手が大きい人にはやや小さいロウソク交換用の窓。



いつごろ製造されたものか?

先にも書きましたが、このランタンは昭和30年代に使用されていたものですので、かれこれ60年くらいは経っていることになります。

昭和の時代、登山用品の国産メーカーとして、エバニュー、トップ、ホープの商品がよく出回っていました。

エバニューを除いては現在は廃業してしまいましたが、トップは昭和24年(1949年)共和運動具製造所として誕生し、昭和38年(1963年)東京トップ、昭和53年(1978年)ニュートップと社名を変更しながら、平成2年(1990年)になくなってしまいました。

昭和38年以降、東京トップという社名を使用しているので、このランタンは昭和38年以降の製造かと思われますが、共和運動具製造所の時代から既に「TOP」というブランド名は使用されています。

筆者の父の記憶では昭和30年~昭和40年にかけてこのランタンを使用していたとのことで、ランタンには「TOKYO TOP」や「NEW TOP」の表示はなく、「TOP」とだけ表示されているので共和運動具製造所時代、即ち昭和38年(1963年)以前の商品ではないかと推測します。

初代ウルトラマン1話と26話にそれらしいランタンが登場している

屋根型ランタンと言えば、ウルトラマンに映っているという噂があります。

初代ウルトラマンの第1話「ウルトラ作戦第1号」を確認してみたところ、開始から6分10秒付近で一般のキャンパー役の男性がそれらしいものを手に持っている映像が映っています。

出典:BANDAI CHANNEL

また、26話「怪獣殿下(前篇)」では開始から5分10秒付近でそれらしいランタンが映っています。

出典:ウルトラマンDVD7

ウルトラマンの第1話が放送されたのは昭和41年(1966年)、26話は昭和42年(1967年)ですが、屋根型ランタンがこの年代によく使用されていたということがわかります。

 

屋根型ランタンは使いやすいのか

ところで、このランタンの実用性ですが、ロウソク使用型のランタンとしてはそれなりの長所があります。

まず、使用するロウソクがランタン専用のものでなくて、100均などでも手に入る一般的な仏壇用ロウソクが使用できるということです。

普通のロウソクが使える。

所謂こういうタイプのロウソク式ランタンは専用のロウソクが必要になる。


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また、ロウソクを単独で使用すれば、ロウソクが倒れて火事になるという心配がありますが、ランタンを使用すれば万一ランタンの中でロウソクが倒れても何かに燃え移るということはほぼありませんので、災害時の照明としても利用価値はありそうです。(当然ですが窓の雲母フィルムありきの話です)

ただ、ロウソクの火といえども使用中は屋根部分が相当熱くなりますので火傷に注意することと、先にも紹介したように長時間吊り下げていると蝋が下に滴り落ちるので注意が必要です。


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現在では、LEDライトが明るくて電池寿命も長く、火災や火傷の心配もありませんのでロウソク式ランタンを登山で使用することはもうありませんが、キャンプでのムード演出に使用するなどの使い方はあると思います。

なお、輸入品ですが屋根型ランタン(専用キャンドルを使用)は現在でも販売されています。


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プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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