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元山岳部部長の登山講座

筋肉痛にバンテリンよりもヒルドイド?消炎鎮痛剤の比較実験!

登山の翌日以降、激しい筋肉痛に悩まされることが多くあると思いますが、効率よく回復させる方法はないものでしょうか。

今回は、「バンテリン」に代表される、塗るタイプの消炎鎮痛剤が、筋肉痛にどの程度効果があるのかについて比較実験をしてみました。




美容用として女性に人気の「ヒルドイド」が筋肉痛によく効く

高い保湿効果のある処方薬「ヒルドイドソフト軟膏」をご存じの方は多いと思いますが、数年前、保湿効果に着目した多くの女性達が美容目的で病院から処方してもらうという行為が社会問題にもなりました。

ヒルドイドソフト軟膏

このヒルドイドですが、現在はスイッチOTC医薬品(処方薬が一定の条件で市販薬となったもの)として、同等の効能がある市販薬がドラッグストアーで複数販売されています。(「ヒルマイルド」「ヒルメナイド」など)

ところで、ヒルドイドの主成分ですが「ヘパリン類似物質」が0.3%含まれており、この成分が保湿のほかに、「打撲、捻挫、筋肉痛、関節痛」などにも効果があるということは一般にあまり知られていません。

筆者は、以前整形外科で「エラダーム(ヘパリン類似物質)」という軟膏を処方されましたが、このエラダームが筋肉痛に画期的な効果があったのを覚えていて、同じヘパリン類似物質であるヒルドイドも筋肉痛に効くのではないかと思い、たまたま家にあったヒルドイドを患部に塗ってみたところ、案の定、筋肉痛によく効きましたので、以後、下山後の辛い筋肉痛や、縦走中の筋肉痛、関節痛などに使用するようになりました。

ヒルドイドの高い消炎鎮痛効果を説明すると、「サロンパス」「アンメルツ」「トクホンチール」などに代表される、いわゆる消炎鎮痛剤の第一世代と言われるサリチル酸系の外用薬は、スースーして気持ちがいいだけで、ひどい筋肉痛にはほとんど効かないという認識を持っている方は少なくないと思います。

これに対しヒルドイドは、塗った直後に痛みが消退し始め、あからさまに効いているのがわかるという点で、消炎鎮痛剤の第二世代(=非ステロイド抗炎症薬・NSAIDs)である、バンテリンなどの外用薬と対等かそれ以上の効果があるのではないかと思うほどです。

そこで、今回は、ヒルドイドと第二世代型消炎鎮痛剤の代表格である、「ボルタレン」「フェイタス」「バンテリン」との比較実験をしてみることにし、それぞれの効果を検証することにしました。



検証!ヒルドイド、ボルタレン、フェイタス、バンテリンの比較実験

実験の準備

比較実験は、以下の4種類で実施することにしました。(カッコ内は主となる消炎鎮痛成分です)

  • ヒルドイドソフト軟膏(ヘパリン類似物質0.3%)
  • ボルタレンEXゲル(ジクロフェナクナトリウム1%)
  • フェイタスゲル(フェルビナク3%)
  • バンテリンコーワクリーミーゲルα(インドメタシン1%)


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これらを選んだ理由ですが、それぞれメインとなる消炎鎮痛成分が違うものを用意することで、どのような成分を含んだものが一番効くのかを明らかにするためです。

実験に使用した消炎鎮痛剤。

実験方法は、筆者(50代)と登山クラブの会員さん(30代)で同じ山(標高差約1200m、往復約11時間)を登り、下山の翌日に強い筋肉痛が発生した部位4か所に、別々の消炎鎮痛剤を塗り、筋肉痛が時間経過とともに、どの程度なくなったのかを比較することにします。

実験開始。

筆者と会員さんが下山の翌日に強い筋肉痛(階段の下りがきついなど、痛みのため挙動がぎこちなくなる程度の筋肉痛)が発生した部位は、筆者が左右ふくらはぎ、左右太もも、会員さんが左右太もも、左右二の腕でした。

従って、消炎鎮痛剤を塗る部位をそれぞれ以下のとおりに決めて、経過を見ていくことにしました。

筆者(50代)
・右ふくらはぎ:ボルタレン
・左ふくらはぎ:ヒルドイド
・右太もも:バンテリン
・左太もも:フェイタス

会員さん(30代)
・右太もも:ボルタレン
・左太もも:ヒルドイド
・右二の腕:バンテリン
・左二の腕:フェイタス

筋肉痛の強さを客観的に現すことはできないので、筋肉痛の強さの数値は各人の主観的な痛みの感覚で表現することにし、それぞれ筋肉痛が一番ひどいと思った時の痛みの数値を10、筋肉痛が全くない状態の数値を0として、消炎鎮痛剤を適宜塗りながら時間経過とともに、どの程度痛みがなくなったのかを、筋肉痛がほぼなくなるまで記録していきます。

実験の経過

下の表とグラフは、下山の翌日に強い筋肉痛が発生した後、3回に渡って消炎鎮痛剤を塗り、痛みがほぼなくなるまでの経過を表しています。

表1 筋肉痛の時間経過:筆者(50代)

グラフ1(表1をグラフ化)

表2 筋肉痛の時間経過:会員さん(30代)

グラフ2(表2をグラフ化)

グラフを解析してみます。

まず、筆者と会員さんで、グラフの形が大きく違う点があり、1回目塗布から2回目塗布の間で、筆者の筋肉痛は右肩上がりに大きくリバウンドしていますが、会員さんの方は順調に降下しています。

この違いについては、年齢による筋肉量の違いだと思われます。一般的に筋肉量が少ない年配者は、若い人に比べて、筋肉痛が遅れてやって来ます。

30代である会員さんの筋肉痛のピークが下山の翌日だったのに対して、50代の筆者は、筋肉痛のピークが下山の翌々日だったので、このようなカーブになったのだと思われます。

次に、両者の共通点について見ていきます。

まず、両者ともにすべての消炎鎮痛剤で、塗った直後に痛みの数値が下がる傾向があり、今回使用した消炎鎮痛剤は、すべてに即効性が確認できました。

効き目の速さについて、1回目塗布の時に、効果が出るまでのスピードを計ってみましたが、筆者と会員さんで以下のように同じ結果が出ました。

ヒルドイド 約1分
フェイタス 約3分
ボルタレン 約3分
バンテリン 約7分

ヒルドイドが一番早く、バンテリンが一番緩やかですが、今回使用した消炎鎮痛剤は、7分程度あれば効果が出るということがわかります。

また、塗った直後に、痛みの数値がどのくらい降下したのか両者の平均値を計算すると、

ヒルドイド 約3.1降下
バンテリン 約2.6降下
フェイタス 約2.3降下
ボルタレン 約2.3降下

ということで、どれを使用しても直後に痛みが2~3割なくなるという結果が出ました。

このように、今回使用したすべての消炎鎮痛剤は即効性に優れていることがわかりましたが、痛みがリバウンドすることも確認できました。

これについては、筆者と会員さんでやや傾向が違うのですが、両者ともにすべての消炎鎮痛剤で塗布してから3時間以上経過すると、痛みがリバウンドする現象が起きており、リバウンドを繰り返しならが、筋肉痛の数値が降下していっている様子が確認できます。

最終的に、どれが一番筋肉痛に効いたのかについてですが、消炎鎮痛剤を塗った翌々日09:00の両者の痛みの数値の平均値は、

ヒルドイド 0.5
フェイタス 0.5

バンテリン 1.25
ボルタレン 1.5

であり、ヒルドイドとフェイタスが一番効果があって、次にバンテリン、ボルタレンの順になっていますが、どれも大きな差はなく、日常生活や運動に支障のないレベルまで筋肉痛がなくなっています。

このように、筋肉痛に対する消炎鎮痛効果は、ヒルドイドと第二世代型消炎鎮痛剤で大きな違いはなく、むしろヒルドイドの方が良好な結果を出しております。

なお、フェイタスについては、今回フェルビナク3%仕様のものを使いましたが、フェイタスにはボルタレンと同じ、ジクロフェナクナトリウム1%仕様のフェイタスZやZαもあります。購入する時はそれぞれの好みに応じて選ぶことになります。


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ランニングコストはどうか

効き目はどれも優秀で、大差がないことがわかりましたが、単価が気になるところです。

今回使用した消炎鎮痛剤のネット価格は次のとおりです。(※ヒルドイドソフト軟膏は処方薬なので、同等成分のスイッチOTC市販薬ヒルマイルドクリームで価格を出しました。)

  • ボルタレンEXゲル50g         1400円程度 1gあたり約28円
  • フェイタスゲル50g           1200円程度 1gあたり約24円
  • バンテリンコーワクリーミーゲルα60g 2200円程度 1gあたり約37円
  • ヒルマイルドクリーム60g        1400円程度 1gあたり約23円

1gあたりの価格ですが、ヒルドイド、ボルタレン、フェイタスがほぼ同じ、バンテリンがやや高いという結果ですが、コストを抑えたければ、以下のような同等成分の商品が各社から販売されています。

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まとめ

実験前の予想では、鎮痛剤で効果が最強とされるボルタレンが一番かと思いましたが、結果は意外なもので、ヒルドイドの優秀さが際立ちました。

しかし、どれを使用するにしても効果にそれほど大きな差はありませんので、好みや価格で決めることになると思います。

今回の実験では、筋肉痛が発生してから消炎鎮痛剤を使用していますが、より実戦的な使用方法としては、下山したらその日のうちに筋肉痛になりそうな部位に塗っておけば、翌日以降は軽い筋肉痛だけですみ、激しい筋肉痛に悩まされることはほとんどありません。

また、縦走中であれば毎日1回、就寝前などに患部に塗っておけば、行動中の筋肉痛や関節痛、腰痛などがひどくならずに済みます。

なお、注意書きでは、ボルタレン、フェイタスゲルは15歳未満、妊婦、喘息経験者使用禁止、バンテリンは喘息経験者使用禁止となっています。


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プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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