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元山岳部部長の登山講座

図解パッキングのコツ~ザックの詰め方

登山とザックの3回目。今回はパッキングについて説明します。

登山の装備をザックに収納する技術(詰め方)をパッキングといいます。

パッキングはその良し悪しによってザックが重く感じたり、疲労が倍増したりします。

また、必要な装備を必要な時にさっと出せるかどうかもポイントです。




パッキングの基本

キスリングから縦長ザックへ進化。

ザックのパッキング方法は、キスリング時代と、その後、主流となった現在の縦長ザックでは、パッキング理論が若干変わりました。

キスリング時代から言われているパッキング理論は、

  • 1「軽いものは下、重いものは上」
  • 2「軽いものは体から遠い位置、重い物は体に近い位置」
  • 3「左右の重さが均等」
  • 4「行動中に使わないものは下、頻繁に使う物ほど上」

の4つの要素になっていましたが、現在の縦長ザックでは、

  • 1「重いものは背中の中心付近」
  • 2「軽いものは体から遠い位置、重い物は体に近い位置」
  • 3「左右の重さが均等」
  • 4「行動中に使わないものは下、頻繁に使う物ほど上」

と、「1」のみが変更となっています。

では、パッキングの理論について、ひとつずつ説明していきます。

1「重いものは背中の中心付近」

ザックが横長のキスリングの時代は、「軽い物は下、重い物は上」でパッキングしていましたが、ザックが縦長になった現在では、重い物を一番上にすると、ザックの重心が肩の高さかそれ以上になります。

この場合、体がザックに振られ、バランスを崩したり、頭を頻繁に上下動しなければならないブッシュ帯の歩行などでは、腰への負担が大きく疲労するため、現在では「重いものはウエストの少し上付近から肩甲骨付近まで」すなわち「背中の真ん中付近」へパッキングします。

2「軽いものは体から遠い位置、重い物は体に近い位置」

重たい物をザックの外側(背中から遠い位置)にパッキングすれば、ザックの重心が体の重心から離れるので、後ろに引っ張られる感じになります。

てこの原理と一緒です。重い物は背中に近い位置にパッキングします。

3「左右の重さが均等」

パッキング時に左右どちらかに重い物を集中してパッキングすると、ザックの重心が偏り、片方のショルダーベルトに多く力がかかるようになり、肩や首、背中が疲労し、体力を消耗します。

この状態を通称「片荷(かたに)」と呼んでいます。

「片荷」にならないようにするには、基本的に同じ面には同じ重さのものをパッキングするか、重たいものを中心にして、両サイドに軽いものをパッキングします。

場合によっては、軽いものを中心にして、両サイドに重たいものをパッキングすることもあります。

「行動中に使わないものは下、頻繁に使う物は上」

 

現在では、キスリングのように、大きなサイドポケットを備えたザックは見なくなりました。

そのかわりに、上部の雨ぶたが収納スペースになっていたり、背中の外側などにポケットがあるザックもあります。

基本的に、行動中によく使うものは上、幕営地に着くまでほとんど使わないものは下にパッキングします。

頻繁に出し入れするものは、雨ぶたの収納スペースなど、すぐに取り出せる場所に入れると、いちいちザックの荷ほどきをしなくて良いので便利です。

また、ザックによっては、中間付近などにファスナーが付いているものもあり、下の方にパッキングした物がすぐに取り出せるよう工夫されているザックもあります。

行動中に急遽、下の方にパッキングしたものが必要になったり、幕営地に到着後、テント設営のために下の方にパッキングしたテントをすぐに取り出す時などには非常に便利です。



4つの要素をクリア~あとは自分の好みで

上手なパッキングとは、上記で説明した4つの要素がすべてクリアされているものをいいます。

パッキングは、具体的にどこに何を詰めるというような細かな決まりはありません。

自分が使いやすく、且つ、4つの要素がすべてクリアされていれば問題ありません。

パッキングは、結構頭を使います。

何度もパッキングしては背負ってみてを繰り返しながら、自分のザックに一番合ったパッキングを研究することになります。

 

そのほかに気をつけるべきこと

4つの要素以外に気を付けなければならないことがあります。

・持って行く装備は軽量化のため、必要最小限にし、多過ぎても少な過ぎてもいけない。何が絶対必要で、何が多過ぎるのか、よくイメージすること。

・パッキング前に畳める装備品はきれいに畳み、コンパクトにしておくこと。コッヘルの中の無駄な空間などには、小物などを詰め、なるべくデッドスペースを作らない。
食品などによくある、いらない包装はパッキング前にすべて捨てることで、ゴミも少なくなり重量軽減にもなる。

・何をどこにパッキングしたのか、きちんと覚えていないと、いざという時に装備が行方不明になることがある。
細かいものなどは、ジップロックや巾着袋に入れるなど、系統別に収納し、わかりやすくしておく。

・ザックの中はいらない隙間を作らないようにし、各装備品の形や組み合わせをよく考えて、かっちりと詰め込む。パッキング後は、ザックのベルト類をしっかりと締め、ザックの中身が踊らないようにする。なお、詰め込む時は、装備品を痛めない程度のぎりぎりの力加減で強く詰め込む。力の入れ過ぎ、詰め込み過ぎ、ベルトの締めすぎで装備やザックが破損しないよう注意する。

・装備品同士がお互いに干渉して破損しないようにする。ヘッドランプなどの電気物は振動でスイッチが入らないよう電池を抜いておくなど工夫する。

・水ぬれすると困るもの(シュラフ、衣類、精密機械類など)はビニール袋やジップロックなどに入れ、しっかり防水してから詰める。

なお、炊事にはガスストーブを使用することが多いと思いますが、冬期で火力がほしい時や、長期山行では灯油などの液体燃料系ストーブ(マナスルなど)を使用することもあります。

最近はジップロックなどの密閉グッズが優秀なので、あまり気にする必要はないと思いますが、灯油やガソリンなどの液体燃料が入っている物は、万が一の燃料漏れのために、食糧より下にパッキングするようにします。



パッキングの参考例

参考までに、筆者が一泊以上の山行に出かける時のパッキングの順序をざっくりと紹介します。

ザックの下から順に、次のようにパッキングすることが多いです。

シュラフ(ゴミ袋で防水)
テント
エアーマット(銀マット)
火器類
食器類、食糧
無線機、ラジオ、予備電池類、応急修理工具
予備の水、昼食
フリース
ウインドブレーカー
雨具
行動食
水筒

パッキングの例

大まかですが、このような感じです。

重量物は背中の中心付近、すぐ使う物は雨ぶたのポケットや上部になっているのがわかると思います。

その他、すぐ使う細かい物はウエストポーチへ、熊よけスプレー、テントのポール、GPS、デジカメ、地形図などはザックの外部に取りつけています。




看板(下)



プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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