13Nov
わらじは現在においても沢登りでは最強の履物と言われます。
近年、わらじ愛好者はほぼ絶滅しましたが、場面を選ばないフリクションの高さは昔から定評があり、フエルト底やラバー底を凌ぐ性能があります。
わらじは消耗品で、沢登りに使用すると、1日で1~2足はダメになります。
なので、安価なわらじがあると良いのですが、現在、わらじは手に入りにくくなり、手に入ったとしても1足1500円前後とコスパが悪く、このことが登山者のわらじ離れを助長させています。
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そこで、ホームセンターに売っている荷造り用のPPロープなどを使用してわらじを自作すれば、非常に安くすむということになるのですが、藁で作った本物のわらじと比較してフリクションや耐久性はどの程度なのでしょうか。
今回は、二種類のロープを使用して自作したわらじを実際の沢登りに使用して、実用に耐えるのかどうかについて検証してみました。
使用した材料
今回の実験に使用したのは、
- 6mmPP(ポリプロピレン)ロープ
- 6mmポリエステルロープ
の2種類です。
PPロープは家庭でよく使われる一般的な荷造りひもです。
ホームセンターで1巻き200mを580円で購入しました。
PPロープを選んだ理由ですが、沢登りでわらじが普通に使用されていた時代から、PPロープ製のわらじを履いている人は既にいましたので、それなりの性能があるのではないかということと、藁よりPPの方が耐久性が高いと思われることです。
また、外径を6mmにした理由ですが、本物のわらじに使用される藁縄の外径は6mm程度ですので、PPロープの外径も6mmにしました。
もう一方のロープですが、外径6mmのポリエステル製ロープを使用してみました。
このロープは、荷造りひもではなく、一般的なロープです。
こちらは、ホームセンターで1巻き50m、1628円で購入しました。
普通のロープを選んだ理由ですが、質感の柔らかいPPロープ製わらじは、藁で作った本物のわらじに比べ、仕上がりが薄くなりますが、硬いロープで作ったわらじは、本物同様の厚みがあり、足の裏の痛みを軽減してくれるのではないかということで使用してみました。
材質については、使い捨てではなく繰り返し何度も使用できるわらじが作れないものかと考え(PPロープは比較的摩擦に弱く耐久性が低い)、耐久性があって摩擦に強い、麻やビニロン(クレモナ)を探しましたが、お店にありませんでしたのでビニロンロープに質感が近かったポリエステル製ロープを選びました。
※わらじの編み方については、後日アップする予定です。→「本物に近づいた!PPテープ新型自作わらじのレビューと作り方」
沢で比較実験!実用性が高いPPわらじ、意外に使い物にならなかったロープわらじ
実験は11月の南日高の神威岳で行いました。
この季節、沢水はもう冷たいのですが、雪が積もってしまうと実験は来春以降になるので、簡単な沢ルートのあるこの山を選びました。
実験ですが、登りはフエルト地下足袋+PPわらじ、下山時はフエルト地下足袋+ロープわらじを履いて性能を比較します。
ベースにフエルト地下足袋を合わせた理由は、万一、わらじが使い物にならなかったときの保険ため、わらじがなくても沢を歩けるフエルト地下足袋にしました。
PPわらじのインプレッション
登りのPPわらじですが、履き心地は良好で、乾いた岩、濡れた岩、ぬめった岩、水中、巻き道、すべてにおいて安定したフリクションを発揮してくれました。
効きの程度についてですが、本物のわらじに比べると全体的にフリクションはやや落ちると言った感じです。
わかりずらいと思うので、フエルト底と比較した場合で言うと、フエルト底が得意とされる、ぬめり、濡れた岩、水中でのフリクションは、新品のフエルト底と同等かそれ以上と言ったところです。
約2時間の沢コースを歩いた後、PPわらじを脱いで破損や摩耗を確認しましたが、全体的な表面の毛羽立ちや、編み方が甘かった箇所に編み目のずれが発生したものの、まだ数回は沢登りに使用しても問題のないレベルで、1回の使用で破損してしまう本物のわらじに比べると耐久性はかなり高いと言えます。
心配された、薄さによる足裏への影響ですが、本物のわらじに比べると、足の裏はやや痛く感じますが、実用上問題のないレベルと言えます。
地下足袋というもの自体が足裏が痛くなるものですから、地下足袋に慣れている人にとってはそんなに気にならないのではないかと思います。
PPわらじは、場面を選ばない高いフリクション、数回使用できる耐久性、安い原材料でコスパも優秀であり、沢登りにおいて、十分に実用性があることが分かりました。
ロープわらじのインプレッション
下山時はロープわらじに履き替えての実験です。
PPわらじと同程度のフリクションを期待しての歩き出しでしたが、いきなり岩の上で滑って転倒です。
その後も、巻き道や河畔林を除いて、沢ではとにかくフリクションが低く、数回転倒しました。
水中や濡れた岩ではフリクションが低くてもそれなりに歩くことが出来たのですが、乾いた岩やぬめりではほぼ効かず危険なレベルでした。
これについては、材質の問題ではなく、「ロープ」という形状に問題があったと思われます。
「荷造りひも」と「ロープ」を比較した場合、荷造りひもは柔らかく、弾力性に富んでいますはが、ロープは荷造りひもに比べてかなり硬いということが言えます。
柔らかい荷造りひもで編んだわらじは、岩の表面の凹凸に食いつき、表面積を稼ぐのに対して、ごつごつしたロープで編んだわらじは、岩に対して点で接地してしまい、その結果、思うようなフリクションが得られず、滑ってしまうということだと思います。
また、期待された厚みによる足裏への影響ですが、十分な厚みがあるのにもかかわらず、岩などの足裏への食い込みは普通にあり、PPわらじとほとんど変わらい感触でした。
耐久性については、さすがに丈夫なロープで作ってあるだけあって、摩耗は僅かで、PPわらじ以上の耐久性があります。
ロープわらじは、耐久性以外はすべて不合格で、実戦ではまったくお話にならないという結果が出ました。
PPわらじは合格点、しかしもっと本物わらじに近づけるかも知れない
PPわらじは本物わらじに近いフリクションと、本物を上回る耐久性を発揮してくれました。
しかし、使用する材質を工夫すれば、もっと本物わらじのフィーリングに近づけるのではないかと思っています。
ホームセンターに売っている庭木の冬囲い用の藁縄やむしろの繊維を利用して、藁のわらじを作ることもできそうですが、藁と同等のフリクションで藁よりも耐久性が高いわらじが出来ないものかと思案中です。
藁とPPロープを比較した場合、ざらざらして摩擦の多い藁と、つるつるしたPPロープとでは性能に差が出てしまうのは仕方のないことです。
現在、PPロープより柔らかくて摩擦が大きい、荷造り用の100mmPPテープを3~4本束ねた物で編んだわらじを試作中ですが、出来上がりの風合いはPPロープで作ったわらじよりも更に本物に近づいています。
冬になってしまいましたので、試作品の実験は来春以降になります。
詳細については、実験終了後記事にアップすることに致します。
追記:PPテープ新型わらじの実験をしました。→「本物に近づいた!PPテープ新型自作わらじのレビューと作り方」
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