山登り初心者とステップアップしたい経験者の方へ登山講座

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元山岳部部長の登山講座

地形図の実戦的使用法1

今回は、コンパスを活用した、地形図の実戦的な使用法について説明していきます。




真北と磁北

まず最初に、地形図はすべて真上が真北であることを覚えておいて下さい。

即ち、地形図に南北に引いた垂線(経線、子午線などと言う)の真上は北極点の方向であり、真下は南極点の方向になります。

「真北」のことを「まきた、しんぽく、トゥルーノース(T.N)、真方位(しんほうい)0°」などと呼びます。

そして、コンパスの示す北は「磁北」と言い、「じほく、マグネットノース(M.N)、磁針方位0°」などと呼びます。

ここで問題なのは、真北と磁北は一致していないということです。

コンパスの示す北は真北ではありません。

真北と磁北は具体的にどのくらい差があるかと言うと、地球上の位置によってその差は違いますが、日本付近だと、コンパスの示す北は、真北よりも西に約4°~9°ずれています。

この真北と磁北の差のことを「偏角」または「偏差」と呼び、日本国内でも地方によって偏角が異なります。

この偏角の表し方を日本付近では「西偏○度」いう言い方をし、地形図には必ず小さい字で偏角が書かれています。

参考までに、

北海道付近 西偏約9°
東北付近  西偏約8°
日本アルプス付近 西偏約7.5°
関東付近  西偏約7°
中国・四国付近 西偏約7°
九州付近  西偏約6.5°
沖縄付近  西偏約4°

となっています。

ちなみに、磁北は毎年僅かに西に移動しています。

40年ほど前の地形図を見ると、現在より1°くらい違っています。

このほか、偏角には異常磁気というものがあって、特定の場所が周囲の偏角と異なる場合があります。

詳しく知りたい場合は、国土地理院のHPで確認することをおすすめします。



地形図とコンパスの使い方

実際の地形図とコンパスの使い方について説明していきます。

言うまでもありませんが、コンパスを使う時は、コンパスの近くに鉄製品がある場合、針に影響が出てしまいます。

そして、コンパスはなるべく水平に保持して下さい。

最初の作業として、地形図に磁北線を記入します。

図1偏角記入

偏角9度なので、方位環を回して目盛りを351度に合わせ、コンパス円内の南北線を地形図の端(経線)に合わせる。コンパスの定規は磁北(351度)を向くので磁北線が記入できる。

例は北海道付近とします。

北海道付近の偏角は西偏9°です。

図1にあるようなコンパスは、オリエンテーリング用コンパスといって、定規とコンパスが一体物になっていて、コンパスの方位環を手で回すことができます。(SILVAやSUUNTO製などがあります。コンパスの中にオイルで満たされているものの方が針の動きがスムーズ。定規に距離目盛も付いていて使いやすい。上の写真の物はSILVA製で、筆者は30年使用しています。)

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図1のように、方位環を回し、目盛をN(0°)から9°西側(351°)に合わせ、コンパスの円内の南北線を地形図の経線(子午線)と平行に合わせます。(図1では、地形図に経線(子午線)が記入されてないので、地形図の端を利用しています。)

こうすることで、コンパス定規は磁北(西偏9°、真方位351°)を向きますので鉛筆で磁北線を記入します。

図2偏角記入

コンパスの定規を利用して磁北線を適当な間隔で数本記入する。

磁北線を1本引けば、図2のように定規を利用すると平行線が簡単に引けるので何本も磁北線を引きます。

磁北線の間隔は、コンパスの直径くらいにしておけば、地形図上のどの位置でも、後々の作業がしやすくなります。

なお、写真のようなオリエンテーリング用コンパスがない場合は、分度器と定規を駆使しても良いですし、パソコンとプリンターがあれば、地形図ソフト(カシミール3Dなど)に磁北線を表示させて、地形図を印刷しても良いでしょう。

例 視界不良で下山路がわからなくなった時。

視界不良時に、下山方向がわかならくなった場合における、コンパスの利用法について例をあげます。

図3下山方向改

図3のように札内岳山頂から下山しようとしたが、ガスがかかり視界が効かなくなったとしましょう。

この時、明瞭な踏み跡が図3のように、3本あったと仮定します。

遭難事故の中には、うっかり進む方向を間違えて遭難するケース(道迷い)が大変多く、遭難原因の1位になっています。

確信が持てなかったら、地形図とコンパスを使用して下さい。

まず地形図を確認します。

現在地が札内岳山頂だとわかっていれば、正しい道は、だいたい西方向だということがわかります。

この例の場合は、地形図とコンパスを見ただけで略西方向に進めば良いことがわかるので、実際に地形図にコンパスを当てて方位を求めることはないと思いますが、ここでは練習のため正確な方位と進行方向を出してみます。

コンパスの定規を正しい道と平行に重ねる。方位環を回してコンパス円内の南北線と地形図の磁北線を平行に合わせる。定規中央の線の目盛りを読む。正しい道は磁針方位285度であることがわかる。

まず、図4のようにコンパスの定規を正しい道と平行に重ねます。

正しい道と重ねる定規の部分は、定規の端や、定規内にある定規に端と平行な線です。

この例では、定規内にある赤い平行線と正しい道を重ねています。

次にコンパスの方位環を回し、コンパス円内の南北線と、あらかじめ記入しておいた磁北線を平行に合わせます。

そして、定規中央の平行線とコンパスの目盛を読み取ります。正しい道の方向は磁針方位285°であることがわかります。

図5磁北を合わせる改

方位環はそのまま動かさず、コンパスを正面に持ち、針がNを向くまで体を回転させると、定規中央の矢印は正しい道(磁針方位285度)を向く。

次に、方位環はそのまま動かさないで、コンパスを自分の正面持ち、コンパスの針がN(0°)を向くまで体を回転させます。

針がN(0°)を指した時、定規の中央の矢印は正しい道の方向である磁針方位285°を指します。

この時自分の真正面が正しい進行方向であることがわかります。

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道迷い防止にコンパス

筆者は実際に視界の悪い頂上からの下山時に、道を間違えたことが何度もあります。

何かおかしいなと思ったら、そのまま進むのではなく、現在地がわかる場所まで引き返して地形図、コンパスを使用して正しい進行方向を確認することがとても重要です。

このように、視界不良時にコンパスで進行方向を確認することは、コンパスの使用法で一番多いのではないかと思います。

道迷い防止には、とても有効な方法なので、登山を始める方には必ず覚えてほしい登山技術のひとつです。

次回の、地形図の実戦的使用法2では、現在地がわからなくなった場合のコンパスと地形図の使用法について説明します。




看板(下)



プロフィール

フリーランサー。元船員(航海士)
学生時代に山岳部チーフリーダーを経験し、阿寒、知床、大雪を中心に活動。
以来、北海道の山をオールシーズン、単独行にこだわり続け35年。
現在は主に日高山脈をフィールドにしている山オタクのライター。

※他サイトにおいて元山岳部部長を名乗る個人・団体が存在しますが、それらは当サイトとは一切関係ありませんのでご了承ください。



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