22Jun
夏山遭難と低体温症~疲労凍死を防げ!
初夏と秋の登山では、中高年登山者を中心に、毎年のように低体温症による疲労凍死事故が発生しています。
今回は夏山の低体温症と対策について説明します。
低体温症とは
日本救急医学会によれば、低体温とは体の深部の体温(直腸温度)が35℃以下に下がった状態を指し、体温によって、軽度、中等度、高度の3段階に分かれます。
登山においては、夏山での低体温症による死亡を特に「疲労凍死」と呼んでいます。
それぞれの段階における症状については、以下のとおりです。
・軽度低体温症(35℃~32℃)
体の震え、物忘れ、無気力、無関心(話しかけても反応が鈍くなる)、ろれつが回らない、よろける、眠くなるなど。
・中等度低体温症(32℃~28℃)
体の震えはなくなる、意識混濁(つじつまの合わないことを言う)、呼びかけに応じない、歩行できない、錯乱、幻覚、矛盾脱衣、心拍数低下、呼吸数低下、不整脈、筋肉硬直など。
・高度低体温症(28℃以下)
心拍数低下、痛み刺激反応なし、呼吸停止、心臓停止、瞳孔散大、筋肉硬直、昏睡、仮死など。
各段階における見極めと対処法
メンバーに低体温症が発生した場合、現場で対処できるのは、「軽度低体温症」までです。
中等度以上の症状があれば、ただちに救助を要請し病院に搬送しなければなりません。
軽度低体温症の対処法
軽度の症状が現れたら、適切な処置で、ある程度回復できますが、回復後は登山を中止しましょう。
・風の当たらない場所に移動したり、標高を下げるなど少しでも温かい場所に移動する。
・下着や衣類が濡れていれば着替えをさせ、フリース、アウターなどの防寒着を着せる。山小屋、テント、ツエルトに避難させ、寝袋に入れる。ストーブ(携帯コンロ)があれば点火する。
・飲食が可能なら、アルコールやカフェインを避け(脱水を助長するので)、温かい飲み物や食べ物を与える。(水分と栄養の補給)
・カイロ、即席湯たんぽ(水筒にお湯を入れる)などがあれば、脇やそけい部に当てる、添い寝をするなど体を温める。
中等度以上の場合
重体です。安静を保ち救助を待ちます。
・体の表面を温めたり、手足をマッサージしたり、運動させると冷えた血液が循環して、体温を下げたり、ショック症状を起こすことがある。着替えさせる時は本人にさせず、介護者が行う。
・それ以上体温が下がらないよう保温し、安静を保つ。脇やそけい部をゆっくり温めるのは体の深部を温めるので良いとされているが、急激に温めないよう注意する。
・呼吸停止、または呼吸が極端に少ない場合、人口呼吸(マウスツーマウス)を行う。
・心臓が停止していれば根気よく心臓マッサージを行う。(心臓が動いている時の心臓マッサージは逆効果。不整脈や心拍数の低下と心臓停止を間違わないようよく観察する)
低体温症の予防と対策
低体温症は衣服の濡れ、雨、風、気温低下により体温が下がってしまうことで起こりますが、栄養不足、脱水、不眠などが下地にあることがあります。
栄養不足、脱水、不眠などバテた状態で風雨にさらされ、低体温死に至ることが多いので、夏山では特に「疲労凍死」という表現を使うことがあります。
また、高齢者や持病がある人などは体温調節機能が劣っていて、低体温症になりやすいと言われています。
そのような人たちは、低体温症の典型どおりの症状が現れないことがあり、気づいた時には症状が進行していることがありますので、周囲の人は特に注意してやらなければなりません。
1番の対策は、自分の体力に見合わない山行には出かけないことです。
体力があっても、体調が悪かったり、悪天候が予想される時にはためらわずに登山を中止しましょう。
疲労凍死が発生する場合のほとんどは、夏でも気温がひと桁に下がるほどの高所で、低気圧の通過前後、年齢50代以上という条件が重なっています。
季節的には6月~7月中旬、9月中旬以降に疲労凍死はよく発生します。この季節の高山地帯はまだまだ寒いのですが、晴れた日は暖かいので油断ができるのでしょう。
対策としては、登山の常識なのですが、フリース、アウター(ヤッケ)などの十分な防寒衣類と着替えの下着の携行、日帰り行動でもツエルト(簡易テント)を用意するなどが有効です。
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軽度の低体温症の症状が出る前に、必ずバテや、体調不良があるはずです。
調子が悪いと思ったら、早めに下山を開始することが大切です。
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