通信手段の最後の砦は?
登山中にアクシデントで救助を要請しなければならない時には携帯電話が有効です。
通信エリアの拡大で、今やどこの山でも山頂や高い尾根に登ればほとんど「圏内」になります。
しかし、アクシデントが発生した場所が沢筋や標高の低い場所などで「圏外」だったらどうなるのでしょうか?
パーティーのメンバーに頼んで、先に下山してもらい救助要請するか、あるいは、電波のある高所まで誰かに行ってもらい、携帯で通報するというのが現実的です。
また、令和7年(2025年)に、auでスマホ向けの衛星通信サービス(auスターリンク)が開始され、この機能が使えるスマホを持っていれば、圏外であってもメッセージの送受信が可能となりましたので、今後、通信手段の最後の砦として、利用者が増えていくと思われます。
この他にも、携帯の普及前から登山では利用されていた「アマチュア無線」を使用して、救助を要請する方法もあり、アマチュア無線は何等かの原因で通信サービスが利用できない環境でも、無線機さえあれば、どこにいても使用できます。
本日は、登山中の通信手段について考えていきます。
携帯電話の強みと留意事項
現在の携帯(スマホ)は、通信手段の他にも、ネットで気象情報を収集したり、登山アプリを入れてGPSとして使用したりと、登山には非常に有効なアイテムとなりました。
道迷いをしたり、怪我などをして行動不能になったとしても、場所が携帯圏内であれば、いつでも救助要請は可能ですが、単独行で付近に登山者が誰もいない、携帯が圏外、衛星通信(スターリンク)の契約をしていない、などの状況が重なる可能性は十分に考えられます。
あるいは、不幸にも携帯のバッテリー切れということも考えられます。
まずは、バッテリー切れという基本的なことを防ぐためには、入山したら携帯はなるべく使用しない、機内モードに設定する、必要のないアプリなどは起動させない、必要以外は電源を切る、モバイルバッテリーを持って行くなどが必要になります。
なお、登山アプリを利用している場合で、現在位置を家族などに知らせる機能(ヤマレコのいまココ、YAMAPのみまもり機能など)を使っている場合は、機内モードに設定すると位置情報を送れなくなりますので注意が必要です。
また、auスターリンクについては、今後通信手段の最後の砦として大いに期待したいと思いますが、現在auスターリンクを利用するには、スマホやOSが新しいバージョンのものでなければ利用できません。
利用料はauのユーザーは今のところ(R8年2月現在)無料で、他のユーザーも契約(料金が発生します)すれば利用可能となっています。
アマチュア無線は有効か?
携帯のなかった時代の登山の通信手段は「アマチュア無線機」でした。
アマチュア無線のハンディ機と呼ばれる小型のトランシーバーは結構な出力があります。
別売りの感度が良いアンテナに取り替えると、電波は更によく飛びます。
「呼び出しチャンネル」という、誰もが聞いている周波数がありますので、電波を出して遭難したことを周囲に呼び掛けることができます。
遭難場所にもよりますが、運が良ければ誰かが電波をキャッチしてくれる可能性があります。
応答があればその人に救助要請を依頼します。
携帯、アマチュア無線に限らず電波は標高が高い場所ほど遠くに届きますし、受信感度も上がります。
山頂付近で携帯が圏内になることが多い理由は、山に携帯の基地局があるからではなく、標高が高くて受信感度が上がるからです。
アマチュア無線もなるべく標高が高くて、見通しの良い場所ほど電波は遠くに届きます。
どこの町にいってもアマチュア無線のすごいマニアはいるもので、家の敷地に立派なアンテナを立て、常時無線機をオンにしている人もいます。
あるいはトラックの運転手さんがアマチュア無線機を積んでいる場合も多く、トラックが峠など標高の高い場所を通過中なら、偶然電波を拾うかも知れません。
このように遭難場所が圏外で、スターリンクも使用できない、スマホがバッテリー切れなど、絶望的な状況下では、アマチュア無線は独立した通信手段ですので、最後の砦になる可能性があると思います。
平成21年1月に発生した北海道の積丹岳の遭難事故の判決が先日ありましたが、この事故では遭難者は無線機を使用して山頂付近から下山したメンバーに位置情報を通報しています。(この事故の詳細については「積丹岳スノーボーダー遭難事故」を読んでみて下さい。)
使用した無線機はアマチュア無線だったのかどうかは分かりませんが、携帯が使えなかったから無線機を使った可能性があると思います。
アマチュア無線を使用するためには、免許(国家試験)を取った上で、最寄りの総合通信局に開局申請をしなくてはいけませんが、一番下級の免許(4級アマチュア無線技士)なら、試験は四択式のごく簡単なペーパー試験で、過去問とほぼ同じ問題が出ますので、問題集を買って丸暗記すれば、概ね小学校高学年以上なら誰でも合格することができます。(筆者は、以下のリンクにある、通称「完マル」一冊だけで試験に合格しました。)

アマゾン 4級3級アマチュア無線予想問題集2026年版
楽天 4級3級アマチュア無線予想問題集2026年版
携帯が普及し、アマチュア無線を登山に持って行く人はほとんどいないと思いますが、筆者は単独行が多く、登山者の少ない山に多く行きますので、携帯とは別に小型のアマチュア無線機を持って行くことにしています。
遭難対策について、念には念を入れたい場合、アマチュア無線の取得を検討してみるのも良いと思います。

アマゾン FT-70D 八重洲C4FM/FM 144/430MHzデジタル
楽天 FT-70D 八重洲C4FM/FM 144/430MHzデジタル
ヤマレコ、YAMAP、ココヘリを使用していれば絶対安心か?
最近では、前述したヤマレコの「いまココ」や、YAMAPの「みまもり機能」など、スマホの無料登山アプリ(有料プランあり)を利用して登山者の位置情報を家族などに知らせる方法もあり、アプリの運営会社では必要に応じ、救助機関に位置情報の提供も行っています。
また、有料ですが「ココヘリ」と契約し、ココヘリの発信機を持っていることにより、遭難した場合、発信機の電波を運営会社のヘリやドローンが直接受信して遭難者をピンポイントで捜索することができ(受信範囲は16km)、上位のプランではこれに加え、ヤマレコ、YAMAPのように、GPSの位置情報を定期的に発信する機能も付いています。
これらのシステムは、遭難者捜索ための大変優れたシステムですが、どのシステムもサービスエリアの圏内でなければ、リアルタイムの位置情報を送信することはできず(※ヤマレコとYAMAPはauスターリンクに対応しています)、また、捜索してもらうためには、まずは誰かが救助を要請しなければならず、遭難から救助開始までには一定のタイムラグが生じます。
救助が開始されるためには、異変に気付いた遭難者の家族が通報するパターン、警察などに登山計画を提出していて下山が遅延した場合に警察が自動的に捜索を開始するパターンなどがあると思いますが、一刻を争う場合には遭難現場から直接通報する必要がありますので、やはり登山者自身が携帯電話やアマチュア無線機などの通信手段を確保しておくことは有効な手段だと思います。
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