25Jan
冬山用手袋にテムレスは使えるのか?
「防寒テムレス」はゴム手袋ですが、透湿性があります。
作業用ゴム手袋なので、登山メーカーのオーバーグローブに比べるとかなり安く、完全防水ということで、冬山登山やバックカントリーで使用する人も多いようです。
今回は、防寒テムレスを実際に使用してみて、冬山用グローブとして戦力になるのかどうかを検証してみました。
テムレスとは
テムレスはゴム手袋メーカーのショウワグローブが販売している作業用透湿性ゴム手袋で、通常タイプの「テムレス」、袖口がジャージになっている「ジャージテムレス」、内側にボアが貼ってある「防寒テムレス」の3種類があります。
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アマゾン ショーワグローブ【透湿防水】No283ジャージテムレス
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アマゾン ショーワグローブ【防寒手袋】No282防寒テムレス
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どのタイプも、見た目は普通の作業用ゴム手袋ですが、素材に透湿性ポリウレタンを使用していて、従来のゴム手袋ではあり得ない透湿性を実現しています。
テムレスの透湿性は?ゴアテックスと比べる
さて、テムレスは透湿性ということですが、透湿性素材といえばゴアテックスやドライテック(モンベル)、ベルグテック(ミズノ)など、各メーカーから出ています。
透湿能力を数字で表す、透湿度(g/m2/24h)で比較してみます。
- ゴアッテクス3レイヤー 25000g/㎡/24h(B1法)
- ドライテック(モンベル) 15000g/㎡/24h(B1法)
- ベルグテック(ミズノ) 16000g/㎡/24h(B1法)
- テムレス 1157g/㎡/24h(方法不明)
透湿度とは、1平方mあたり、24時間で何gの水蒸気が透過するのかを表したものです。(透湿度について詳しくは「カッパ(レインウエア)の耐水性・透湿性・強度とは?」を読んでみて下さい)
数字だけで見ると、テムレスの透湿度は他の透湿性素材に比べ、1/10~1/20程度となっており、まあ、こんなものかなという印象です。
しかし、普通のゴムが水蒸気をほぼ通さないことを考えると、1157g/㎡/24hは画期的と言えるのかも知れません。
ちなみに、テムレスの透湿度の試験は「JIS L1099」で行われていますが、これには、A1、A2、B1、B2の4種類の試験方法があり、方法が違えば数値は変わります。
透湿性素材を扱っている各メーカーではB1法を用いる場合が多いようですが、テムレスは試験方法が公表されておらず、正確に比較することはできませんので参考数値となります。
防寒テムレスを冬山で使用してみる
今回使用した、防寒テムレスです。
ホームセンターで、税込1598円、サイズは3Lが欲しかったのですが、なかったのでLLを選びました。
重量は見たより軽く、127gでした。
作業用ゴム手袋なので、家庭用とは比較にならないくらい丈夫にできています。
包装には「-60℃」と大きく書かれていますが、-60℃でも手が冷たくないのではなく、-60℃でも素材がしなやかということです。
また、表面には滑り止め加工があり、滑り止め効果は良好です。
サイズですが、防寒テムレスには、M、L、LL、3Lがあります。
筆者の手のサイズは、中指8.5cm、手の平まわり21cmですが、LLサイズで緩くもきつくもなく、ぴったりです。
なので、インナー手袋をはめると窮屈になり、かえって指が冷たくなるので、素手にはめることにします。
実験は1月の樽前山(1041m)で行いました。
登山口の天気はくもり、気温ー6℃、風は北西1m/s程度でした。
素手に防寒テムレスをはめ、つぼ足で出発です。
出発から手袋の中は温かく、非常に快適です。
防寒ゴム手袋というと、操作性が悪いものが多いのですが、防寒テムレスは素材が軽いせいか、あまりごわごわせず、操作性は見た目より良好です。
ザックの中のものを出し入れ程度なら、手袋を脱がなくても大丈夫でした。
歩きだしから約30分で体が汗ばんでくると、ストックを持つ手袋の中も蒸れを感じてきました。
このくらいの気温の場合、ゴアテックスのオーバーミトンをはめていても、ストックを握っていると手袋の中はやや汗ばんできますが、ゴアテックスに比べると、蒸れるのが早い印象です。
手は蒸れてきましたが、実験なので、もうしばらく防寒テムレスをはめてみます。
出発から1時間半で、大分汗で蒸れ、これ以上蒸れると、帰りが大変なので、防寒テムレスを脱ぎ、ふところの中にしまいます。
こうすることで、体温でいくらか乾くことが期待できます。
更に1時間歩き、標高700m付近で下山することにします。
ふところから、防寒テムレスを出すと、体温でほんの少し乾いたようでした。
防寒ゴム手袋はインナーのボアを湿らせると、なかなか乾かないものですが、防寒テムレスは透湿性があるためか、普通の防寒ゴム手袋より乾きが早いようです。
防寒テムレスをはめて下山です。
さすがに、ボアが湿ってますので、最初のうち手は冷たいのですが、しばらくすると体温で手は温かくなりました。
1時間後に登山口に着きましたが、下山後に手袋の重量を計ると158gでした。
今回の実験では、トータルで約2時間半防寒テムレスをはめて、両手で31g汗を吸ったようです。
-6℃くらいで、風が弱い日の登りでは、防寒テムレスはすぐに汗で蒸れて、中が湿ってしまいますので、今回より寒い条件下での着用が適切です。
冬山での防寒テムレスの使い道
防寒テムレスは、「普通のゴム手袋より蒸れないが、ゴアテックスグローブより蒸れる」ということがわかりました。
また、防寒能力については、ー6℃では運動中、暑くなり蒸れますが、ボアが乾いた状態なら、かなりの低温下でも手の保温が可能だと思われます。
このように、防寒テムレスは冬山用の万能手袋ということではなく、手袋の特徴を理解して冬山登山に活用するということになると思います。
冬山登山のメイングローブとして使用したり、オーバーグローブやインナーグローブが濡れた時の予備グローブとしての使用、ラッセルや雪洞掘りなど水濡れが激しい場面だけの使用など、手袋のレイヤリングの主役でも脇役でも活用できそうです。
なお、防寒テムレスはインナーのボアが外せませんので、寒冷下で中を濡らすと厄介です。
これを解消するためには、防寒テムレスではなく、普通の「テムレス」に別のインナーグローブを合わせるという方法も考えられます。
ただ、普通のテムレスは最大サイズがLLなので、手が大きい人は、LLを購入しても窮屈な場合があると思いますので、サイズ選びには十分注意が必要です。
サイズの問題は防寒テムレスにも言えますが、防寒テムレスだけでは、寒さが防げないような状況下ではインナーグローブをはめたいところですが、筆者(手の平まわり21cm、中指の長さ8.5cm)の場合、LLでぴったりなので、3Lを購入したとしても、インナーグローブをはめるときついのではないかと思います。
テムレスを冬山に活用するには、手が小さい人の方が有利ということになります。
以下にサイズを書き出しましたので参考にして下さい。
- テムレスのサイズ
- S 全長27cm 手の平まわり18.0cm 中指の長さ6.9cm
- M 全長27cm 手の平まわり20.0cm 中指の長さ7.2cm
- L 全長27cm 手の平まわり22.0cm 中指の長さ7.8cm
- LL全長28cm 手の平まわり24.0cm 中指の長さ8.3cm
- 防寒テムレスのサイズ
- M 全長27cm 手の平まわり21.5cm 中指の長さ7.8cm
- L 全長27.5cm 手の平まわり24.5cm 中指の長さ7.8cm
- LL全長28cm 手の平まわり26.5cm 中指の長さ8.3cm
- 3L全長30cm 手の平まわり28.0cm 中指の長さ9.0cm
また、見てのとおり、テムレスや防寒テムレスは裾が絞れませんので、雪が侵入したり、ストラップがないので落としたりすることでしょう。
雪の侵入を防ぐために、腕抜きを併用したり、脱落防止にストラップを取り付けるなど、自分でカスタマイズする必要があると思います。
ダイローブとどっちがいい?
アマゾン ダイヤゴム ダイローブ手袋 #102F Lサイズ(1双袋入)
楽天 ダイヤゴム ダイローブ手袋 #102F Lサイズ(1双袋入)
冬山にも使えるゴム手袋として「ダイローブ102F」があります。
筆者は船員時代、冬の船上作業でダイローブ102Fを使用していたので性能をよく把握しています。
防寒テムレスよりダイローブ102Fが勝っている部分は、抜群の温かさ、サイズの大きさ、インナーが脱着可能といったところです。
逆に劣っている部分は、指のフィット感がなく、細かい作業がまったくできないことと、値段が高いということです。
蒸れに関しては、ダイローブには透湿性はありませんが、作りにゆとりがあるせいか、一般的な作業用ゴム手袋より蒸れにくいと言えます。
当然ながら蒸れにくさでは防寒テムレスの方が勝っています。
取り回しの良さでは防寒テムレス、より厳しい寒冷下ではダイローブといったところだと思います。
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