17Mar
冬山とアイゼン~選び方と使い方
先日、近郊にある低山(910m)に行きましたが、アイゼンが必要ではないコンディションなのに、登山口からアイゼンを装着している登山者を複数見かけました。
アイゼンは基本的に雪面が硬く氷化して、ツボ足でキックステップしてもステップが切れないような場合に装着します。
雪質の状況によっては登山口からアイゼンを装着する場合がなくもないですが、ほとんどの場合、森林限界までは深雪ですし、気温が高めで湿雪だとアイゼンの裏側に雪がダンゴのように張りつき、アイゼンの刃がまったく効かなくなることもあります。
また、全く必要のない場面でアイゼンを装着していると、思わぬところで登山靴や装備品を傷付けたり、ロングスパッツやオーバーズボンをかぎ裂きにしてしまうこともあります。
「雪山登山=アイゼンを履かなければならない」という誤った認識を持った登山者がそこそこいるようですので、今回はアイゼンの選び方や装着のタイミングなどについて説明していきます。
アイゼンの用途
爪の本数による違い
アイゼンは爪の本数によって、用途が変わります。
一般的にアイゼン(ここでは本格アイゼンと呼ぶことにします)と言えば先端に出歯がついている12本爪、10本爪のアイゼンのことを指す場合が多く、これらは冬山の高山や縦走などの本格的な雪山登山に対応します。
一方で、4本や6本爪のアイゼンもありますが、これらは軽アイゼンと呼んでいます。
また、10本爪以上のアイゼンでもトレッキングシューズに装着できるように作れたアイゼンがあり、本格アイゼンに比べ爪が短く、センターバーが柔らかいという特徴があります。これらのアイゼンも軽アイゼンのカテゴリーに入ります。
軽アイゼンは本格アイゼンとは異なり、夏山の雪渓や雪山の低山などで足元が滑る時に補助的なスパイクとして使用するものです。
装着方法による違い
さらに、アイゼンには装着方法によって3種類に分けられ、ベルト式(ハーネス式)、セミワンタッチ式、ワンタッチ式があり、登山靴の形状によって装着できたり、できなかったりします。
アイゼンの種類
・10本爪アイゼンと12本爪アイゼン(本格アイゼン)
12本爪の例:グリベル G12 EVOニュークラシック(ベルト(ハーネス)式)
アマゾン グリベルG12 EVOニュークラシックGV-RAG12NCEF
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10本爪の例:グリベル G10 EVOニュークラシック(ベルト(ハーネス)式)
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アイスクライミング(氷壁登り)など、特殊な場合を除き、縦走などの一般的な冬山登山を目指す場合は、写真上のような、後ろ4本、前6本、出歯2本の12本爪アイゼンが多く使用されています。
12本爪は出歯があるのが特徴で、この出歯は靴底が雪面にフラットに置けないほどの急斜面を登る場合につま先で雪面をキックしますが、この時、出歯が斜面に刺さって足ががりになります。
このほかに、写真下のような10本爪アイゼンもあり、10本爪でも出歯がついていて一般的な冬山縦走に対応していますが、12本爪アイゼンに比べ、グリップ力はやや下がりますので、10本爪アイゼンを買うのなら、はじめから12本爪アイゼンを買った方が良いのではないかと思います。
本格アイゼンは作りが頑丈で、前後をつないでるジョイントバー(センターバー)が硬いものが多く(ジョイントバーが柔らかいタイプの本格アイゼンもあります)、ソールが硬い冬山用登山靴(アルパインブーツ)やオールシーズンブーツに装着します。
ジョイントバーが硬いタイプのアイゼンは、ソールのやわらかい軽登山靴などに装着すると、はずれる危険性があります。
・トレッキングシューズ用10本爪アイゼン(軽アイゼン)
トレッキングシューズ用10本爪(軽アイゼン)の例:エバニューEBY017
アマゾン 軽アイゼン エバニュー(EVERNEW) 10本爪アイゼン
楽天 軽アイゼン エバニュー(EVERNEW) 10本爪アイゼン
このタイプの軽アイゼンはトレッキングシューズ向けのアイゼンで、アイゼンの前後をつなぐジョイントバーは、柔らかい材質、または稼働するように出来ており、ソールの柔らかいトレッキングシューズでもフィットするようになっています。
4本爪や6本爪の軽アイゼンに比べると、やや本格寄りだと思いますが、爪が短く、縦走などの本格的な冬山登山には不向きです。
使用するなら雪山の低山くらいまででしょう。
・4本爪アイゼンと6本爪アイゼン(軽アイゼン)
4本爪の例:エバニュー EBY012
アマゾン エバニュー(EVERNEW) 4本爪アイゼン EBY012
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6本爪の例:エバニューEBY015
アマゾン エバニュー(EVERNEW) 巾調節式6本爪アイゼン EBY015
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4本爪や6本爪のアイゼンは、夏山の硬い雪渓や、雪山の低山などで足元が滑る場所を通過する時に使用します。
アイゼンの選び方
アイゼンの必要性
これまで紹介したように、アイゼンは自分の登る山によってそれぞれの用途のものを用意することになります。
ただ、アイゼンの必要性を考えると、雪が深い場所ではわかんやスノーシュー、雪面が硬い場所ではツボ足でのキックステップ登行が基本であり、雪山の低山ではキックステップができないほど雪面が硬くなる場面にはほとんど出くわしません。
(キックステップについては、「冬山入門3 キックステップ」を読んでみて下さい)
森林限界を超える山に登らない限り、アイゼンは必要ないか、用心のために携行するといった感じになります。
アイゼンの必要性は、登山靴の種類にもよります。
トレッキングシューズなどのソールが柔らかい登山靴でキックステップを行う場合、硬い重登山靴のようにソールのエッジが効きづらいので、硬い斜面ではアイゼンを装着してしまった方が安全とも言えます。
もっとも、冬山には冬山用の登山靴(アルパインブーツ、重登山靴など)を履くのが基本で、トレッキングシューズを履いていくこと自体、基本からはずれているということを十分わかった上で無理のない登山をするということが前提の話になります。
装着方法によるアイゼンの選び方
紹介したように、アイゼンにはベルト(ハーネス)式、セミワンタッチ式、ワンタッチ式の3種類があり、登山靴によって装着できるものとできないものがあります。
また、登山靴の幅や形状によってフィット感の良し悪しがありますので、購入する場合は登山靴を持ちこんで、試着するようにしましょう。
・ベルト式(ハーネス式)アイゼン
ベルト式の例:グリベル G12 EVO ニュークラシック
アマゾン グリベルG12 EVOニュークラシックGV-RAG12NCEF
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ベルト式(ハーネス式)アイゼンはどんな形状の登山靴にも装着することができます。
アッパーが柔らかめの登山靴に装着するときは締めすぎると血行が悪くなりますので注意が必要です。
・セミワンタッチ式アイゼン
セミワンタッチ式の例:グリベルG12 EVO ニューマチック
アマゾン グリベルG12 EVO・ニューマチックGV-RAG12NME
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セミワンタッチ式アイゼンは前はベルトで押さえますが、後ろは金具で止めます。このタイプのアイゼンは登山靴の後ろにコバがなければ装着できません。
上の写真のような3シーズンブーツは後ろにだけコバがあり、ベルト(ハーネス)式、セミワンタッチ式、ともに装着可能です。
・ワンタッチ式アイゼン
ワンタッチ式の例:グリベルG12 EVO オーマチックSP
アマゾン グリベルG12 EVO・オーマチックSP GV-RAG12OMES
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ワンタッチ式アイゼンは前後ともに金具で止めます。
このタイプのアイゼンは登山靴の前後にコバがなければ装着できません。
上の写真のようなアルパインブーツ(冬山用登山靴)には前後にコバがあり、ベルト(ハーネス)式、セミワンタッチ式、ワンタッチ式、すべてが装着可能です。
ジョイントバーのサイズにも注意
アイゼンは、センターにあるジョイントバーの長さを調整することによって、アイゼンが靴にフィットするよう調整できるようになっていますが、調整できる長さは、アイゼンによって違いますので、あらかじめ自分の靴の大きさに合ったものを選ぶ必要があります。
カジタックス製アイゼンは、サイズが2種類(S/M、M/L)あり、ジョイントバーの長さがそれぞれ違いますので、靴の大きさによって選ぶことになります。
グリベル製アイゼンは、サイズが1種類しかありませんが、ジョイントバーを裏返すことによって、小さな靴にも合うような設計になっていて、靴のサイズがかなり大きい場合は、ロングタイプのジョイントバーが別売りされています。
アイゼン装着のタイミングとは
アイゼンが必要な場面になったときには、すでにその場所が急斜面でアイゼンの装着作業が難しい場合があります。
ですので、アイゼンの装着はころ合いを見計らって安全に装着できる場所で行います。
かといって、あんまり早く装着しても湿った雪質の時には、アイゼンに雪のダンゴがついてしまい、数歩歩くごとにピッケルの柄でアイゼンをたたいてダンゴ落としをしなければならないこともあります。
ダンゴ落としは面倒でも、まめに行わないと転倒や滑落の危険がありますので注意が必要です。
※参考情報:この記事では紹介していませんが、2014年10月以降に販売された、ワンタッチアイゼン モンベルカジタックスLXF-12(ノーマルタイプ♯1141144)は前の金具が破損する可能性があるとのことで、メーカーからリコールがかかっています。ご注意下さい。 (ナロータイプ♯1141146は大丈夫とのこと)
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