9Dec
初心者のための冬山入門3
~実戦訓練、そして憧れの冬山へ~
今回は実際の冬山で訓練をしたあと、春山に挑戦。
そして初めての冬山登頂を目指します。
低山での訓練
十分に雪が積もったら、次に紹介するような訓練を行います。
練習する場所は、山麓や、低山などの安全な所を選びます。
つぼ足による登行~キックステップ
つぼ足による登行は、キックステップが基本になります。
キックステップとは、つま先、かかと、靴底のサイドエッジなどを雪面に蹴り込んで、足場を作りながら歩行する技術です。
直登する時は、膝を中心に膝から下を振り子のようにして、思い切ってつま先を雪面に蹴り込みます。(図1参照)
雪が硬くて、つま先が少ししか入らなかったら、ステップが安定する深さになるまで、再度蹴り込んでステップを作ります。
後続の人も同じステップに足を入れますので、歩幅はあまり広すぎないようにします。
下りは、かかとのエッジを雪面に垂直に突き刺すように、ステップを切ります。
腰が引けないようにし、体重を思い切り乗せて、かかとを垂直に突き刺すのがコツです。
トラバース(斜登)の場合は、靴底の山側のサイドエッジを雪面に蹴り込みます。
蹴り方は、直登の時と同じように膝から下を振り子のようにして、靴のサイドエッジを雪面に蹴り込みます。
図のように、谷足を蹴る時は足をクロスします。
キックステップは、かなり硬い雪でもステップさえ切れれば安定して登れる、冬山での基本的な歩行技術ですから、しっかりマスターしておきます。
スノーシュー、わかん、アイゼンの登行
スノーシュー、わかん
スノーシューやわかんを装着した歩行ですが、雪が柔らかい斜面では図2のように、登り、下り、トラバースともに重力に対して垂直に足を置きます。
雪が硬い斜面をスノーシューで歩く時は、垂直ではなく、図3のアイゼン登行と同じ要領で、斜面に対してフラットになるように歩きます。
雪が硬い斜面をわかんで歩く場合、わかんの爪はあまり効かないので、上の画像のように、アイゼンを装着したまま、わかんを裏返して装着する方法もあります。(トラバースの場合、わかんのフレームが斜面に当たって滑り、危険なことがあるので注意が必要。)
アイゼン
アイゼン登行は、図3のように斜面に対してフラットが原則です。
トラバースの時は、谷足を若干ハの字に開くと安定します。
直登で斜度がきつい時は、両足を逆ハの字にすると足首が楽になります。
更に斜度がきつい場所では、つま先の出歯を使いキックステップの要領で直登する方法もあります。
アイゼンの爪は鋭いので、雑に歩くとズボンやスパッツを鍵裂きにしたりしますので注意が必要です。
また、湿った雪の上を歩く時は、アイゼンの裏側に雪がだんごのように付き、アイゼンの爪が雪面に届かなくなることがあります。
こんな時は、ピッケルの柄などでアイゼンを叩いてだんご落としをしながら歩くことになります。
雪のない岩場を歩く時は、岩の割れ目にアイゼンの爪が刺さり込むと、転倒する危険があるので注意が必要です。
山スキーのシール登行
山スキー
山スキーのシール登行ですが、直登は滑走面をフラットに、トラバースは滑走面を真下にします。
直登もトラバースも、滑走面は正面から見て常に水平に保ち、前足のブーツの真下に体重を乗せるように歩くことで、スキーの滑走面全体に体重がほど良くかかります。
正面から見て、スキーが左右に傾いたまま体重を乗せると雪面を押す力が横に逃げてしまいます。
これでは、シールの摩擦力が小さくなりますし、シールがはがれやすくなります。
このほか、急斜面で直登できない場合は、ジグザグに切り返しながら登る、キックターンという技術があります。
雪上歩行用具の脱着のタイミング
つぼ足、わかん、スノーシュー、山スキー、アイゼンの使い分けは、積雪の深さや雪質によって決まります。
山麓から登り始め、山頂に達するまでに、雪質は目まぐるしく変化するものです。
その時々の雪の状況によって、使用する道具を替えながら歩くことになりますが、脱着のタイミングには慣れが必要です。
例えば、つぼ足で登っていたけども、アイゼンが必要な状況になり、アイゼンを着けようとしたが、斜面が急で交換作業がしづらく、もう少し早めに替えておけばよかった、みたいなことや、スノーシューからアイゼンに換えた直後に、深雪になってしまって、アイゼンに替えなければ良かった、みたいなこともあります。
かといって、交換が面倒だから道具を替えずに歩いていて、危険な目に遭ってしまっては意味がありません。
このように、交換のタイミングは雪質の予測と見極めが肝心になります。
滑落停止動作
滑落停止訓練
滑落した場合、ピッケルを使用した停止方法が何種類かありますが、代表的なものを説明します。
図5のように、滑落しながら仰向け姿勢でピッケルを保持します。
ピッケルのブレードを左右どちらかの手で握ります。(長くて尖がった方をピック、短くて平たい方をブレードと言います。)
次にブレードを握った側へ、体を一気に回転させて、うつ伏せ姿勢になると同時に、体重を乗せてピック部分を雪面に突き刺して停止させます。
この時、腕が万歳のように伸びてしまわないよう、しっかりと胸の付近でピックを突き刺します。
頭から滑落してしまった時は、まず頭を上にもどしてから滑落停止動作をします。
頭の戻し方は、ピッケルのピックを雪面に刺せば、落ちながら自然に体が回転し、頭が上になります。
(詳しくは「冬山の滑落停止法とは~素早く止めるのがミソ」を読んでみて下さい。)
滑落停止動作で肝心なのは、滑落したらどんな方法でもいいからスピードがついてしまわないうちに、さっさと停止することです。
スピードが乗ると、何をしても止まりません。
また、クラスト斜面で滑落し、スピードが乗ってしまった時にアイゼンの爪が雪面に当たると、足首がおかしな方向に曲がり、足首を負傷する場合があるので注意が必要です。
滑落停止訓練は、滑落方向に障害物がなくて、万一止まらなかった時にも絶対怪我をしないような場所を選んで行うようにします。
冬山ではとにかく滑落しないことが大切であり、滑落して止まれるのは基本的に運のいい場合だけであり、滑落停止動作を行っても必ず止まれるとは限りません。
(滑落についての体験記事です。「冬山の滑落事故。止まらないアイスバーン」)
まずは春山から~そして憧れの冬山へ
ここまで十分に訓練したら、いよいよ実際の雪山登頂を計画します。
基本的に初めての雪山は、寒さが厳しくない残雪期の春山から始めます。
低山の山肌の一部が見え始めるころが、雪が締まって登りやすい時期だと思います。
雪が解けるまでの間、何度か同じ山を訪れて、雪や地形に十分慣れておきます。
ここでの春山経験が、次の冬山へとつながります。
冬山の初登山は、高くても森林限界程度の山にしておき、大量降雪の直後は避け、必ず視界が良好な時に計画するようにします。
冬山は、少しずつ経験を積むことが大切であり、絶対に無理はせず、少しでも不安を感じたら撤退するよう心掛けます。
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